(その4-65)の続き。
(d-3)サイコ判定(サイコフィルター)の内容
以下の(ⅰ)一次判定と(ⅱ)二次判定のフィルターにより、サイコを特定する。一次判定は全警察のすべての通報・相談窓口の部署が行う。サイコから逃げてきた犠牲者でもこの部署で一次判定を行う。二次判定は各県警のサイコ対策室で行う。
(ⅰ)一次判定(一次フィルター):簡易サイコ判定マニュアルによる
サイコの知識が豊富でない警官などにも判定できるようにした簡易サイコ判定マニュアルに基づき判定する。判定結果でサイコが係わっていると判断された場合はサイコ対策室へ案件を移し厳密な二次判定を行う。マニュアルは全国中央サイコ対策室で作成し、充実したものにしていく。判定の元情報は市民などからの通報・相談とし、一次判定段階では原則としてサイコ前兆捜査を行わない。一次判定段階で既に前兆を過ぎてサイコ犯罪が行われていると思われる場合でもサイコ対策室へ案件を移す。簡易サイコ判定マニュアルは警察学校ですべての警察官に教え、使えるようにする。簡易サイコ判定マニュアルは次項のサイコ基本分類に基づき作成され、およその内容を事項以下に示す。
ⅰ)サイコ基本分類:3類型:単独、中間、饅頭
以下3類型の要点をまとめておく。その後で3類型ごとのサイコ前兆を示す。
・単独(内向的)サイコパス:動物、人の身体、整然としたあらゆる物を物的にぐちゃぐちゃにする。「痛さ、恐怖、残虐」に逆転快を得る。心の破壊に執着はないので、ただ殺すだけになる。通り魔的殺人、理由なき殺人になる。虐待しやすいか、殺しやすいかを直感的に把握して犠牲者を選択する。逆転生存欲求、逆転認知欲求が強いサイコパス
・中間サイコパス:犠牲者を監禁に類した逃げられない下で虐待を加えるが、主要な興味は犠牲者をいじめや恐怖で、心を破壊しロボット化(偏桃体機能停止の感情喪失状態)にすることにある。犠牲者を自殺に追い込むことが見られる。仲間を作ることはあるが饅頭構造までは至らず、虐待は主に自ら行う。単独サイコと饅頭サイコの中間になる。逆転愛情・承認欲求が強いサイコパス
・饅頭(外交的)サイコパス:主要な興味は饅頭構造に取り込んだ内部犠牲者をサイコ化することにある。サイコ化した内部犠牲者は外部犠牲者を虐待し、虐殺する。例13北九州監禁事件のサイコパス松永は自分で殺さずに子供たちをサイコ化し母親理恵子を、姉彩10歳らに弟優貴5歳を殺させた。サイコパス角は自分で殺さずに、川村ら子供たちに母親和子を、夫仲島らに妻まり子を殺させた。逆転共同社会感情欲求(逆転共感欲求)が強いサイコパス
単独サイコであった者が成長とともに中間サイコを経て、饅頭サイコに移行するものがいる。その逆はほとんどいないと考えられる。
3類型の要点をまとめると下記表の通りになる。表の〇は「あり」を示し。×は「なし」を示す。△は、サイコパスの興味は相対的に強くなく、興味の主体は〇にあることを示す。
サイコの行動特徴 |
サイコの基本分類:3類型 |
||
単独サイコ |
中間サイコ |
饅頭サイコ |
|
物的破壊 |
〇 |
△ |
△ |
物的破壊+心的破壊(ロボット化) |
× |
〇 |
△ |
物的破壊+心的破壊(サイコ化) |
× |
× |
〇 |
用語解説:ソシオパス(社会病質)は使わない:饅頭サイコに対応したサイコをその外交的社会性(Socio=社会性)からソシオパスと言う心理学者がいるがが、相応しくない。ソシオパスでは健常者をサイコ化することが表現されていず、さらに健常者を取り込み恐怖に満ちた饅頭構造を作る特性が表現されない。また、サイコパスを先天的、ソシオパスを環境から生じた残虐性で後天的とする心理学者がいるが、本シリーズでは単独サイコも饅頭サイコも生まれながらに逆転欲求をもつ先天的なものとしている。後天的なものは健常者がサイコ化した犠牲者である。本シリーズではソシオパスと言う用語は使わない。尚、内向的、外交的と言う区分は以前にも述べたが心理学者ユングが使い始め現在は使う人が少ないが、労働編成の「自然に働きかける」と「人に働きかける」に対応している本質的なもので、理解しやすいので補助的に使用している。
ⅱ)単独サイコの前兆例:通り魔的殺人など凶悪犯罪に至る前兆
以下は既に犯罪行為であるが、さらに残虐な犯罪の前兆でもある。
・動物虐待:ハトや猫などの足や首を切断したり、思い切りバットで叩いたり、内臓を取り出したり、脳をつぶしてぐちゃぐちゃにしたり、カミソリで目を切ったり、どうなるか観察するように、また痛みを感じるあらゆることを行う可能性がある。例5神戸連続児童殺傷事件の少年Aは小学生の時からカミソリでナメクジを薄く切る「痛さ」に執着がある(『絶歌』)。
・弱い人虐待:自分の子供や弟や妹や老人や近所の弱い人に対して叩いたり、蹴ったり、手をねじったり、思い切りつねったり、口の中に棒を思い切り入れ込んだり、肛門に棒を入れ込んだり、熱湯を掛けたり、こんなことをしたら大変なことになると思うあらゆることを繰り返し行う。
・放火:近所の家の周りや自転車などに火をつける。自宅でも紙を燃やしたり、小物に火をつけたりする。火の恐怖を感じるあらゆることを行う可能性がある。【「放火魔は火事で人が騒ぐのを見たいので行う」という「ゆかい犯」との見解を述べる心理学者がいるが、これは健常者の範囲でサイコを理解しようとした誤り。人が騒ごうが騒ぐまいがサイコは放火する。火の恐怖そのもので逆転快ドーパミンが放出され、機能不全の偏桃体がわずかに反応する快感に引き付けられている。大火事の野次馬の中に放火したサイコがいることがあるのは、快感を味わっている。放火は残虐行為と同じ逆転快のメカニズムである】
・食物への異物混入:洗剤、農薬、糞尿、ゴキブリ、毒物などを食物に混入して食べさせる。学校給食などに混入する場合もある。異物で人がどうなるかを観察するかのように食べさせる。
・整然としたものの物的破壊:整然としたあらゆるものをぐちゃぐちゃにする。多数の窓ガラスを割ったり、タイヤをパンクさせたり、きれいな車のボディーに傷をつける。破壊するとどうなるかを観察するように破壊を繰り返す。健常者は人を困らせるためにやっていると感じるが、そうではない。単独サイコは困る人の気持ちを感じ取ることはできない。ただ物的破壊衝動に従っただけである。
・医療機関:点滴液に異物混入:人がどうなるか観察するようなあらゆることを行う可能性がある。特に医療機関はサイコパスが入り込まないようにする必要がある。献身的な医者や看護婦などの努力を台無しにしてしまう。
・残虐宝物:残虐行為の結果を「宝物」として残す。例5神戸連続児童殺傷事件の少年Aは殺した猫の舌を「宝物」として瓶に溜めていた。健常者には気持ち悪いだけだが、サイコパスには「宝物」とする者がいるので前兆把握の目安になる。例13北九州監禁殺人事件の松永は犠牲者の頭の皮をはいだものを集めていた。これは前兆の段階を超えているが、頭の皮は松永にとって「宝物」であった。ネットの自殺志願者9人を殺害し2017/12/11逮捕の白石隆浩は、9人の頭部を切断してクーラーボックスに保管していたが、白石にとって頭部は「宝物」であったと思われる。発覚を恐れ遺棄しなかったのではない。白石はサイコ病の可能性が高い。【サイコにとって戦争は残虐興奮を与えてくれる「宝物」、崇拝対象になる。健常者には残虐を求めるサイコの戦争崇拝は理解できない。異常に戦争を求めることはサイコ前兆の目安になる】
・残虐画像・残虐映画の収集:執着し、収集する。残虐画像類は「宝物」になる。この収集自体は犯罪ではないが前兆把握の目安になる。
ⅲ)中間サイコの前兆例:中間構造の自殺教唆など凶悪犯罪に至る前兆
単独サイコの人を物体として物的にぐちゃぐちゃにすることに加えて、中間サイコではさらに人の心を破壊することが加わる。家庭内や学校の友人関係や企業内、公的組織内などの閉鎖環境で犠牲者を逃げられないようにし、嫌がれば嫌がるほど、恐怖で悲鳴を上げれば上げるほど興奮して虐待を強める。虐待にはサイコ3手法(強弁による暴力、長時間拘束、眠らさない)のいずれかが使われることがある。仲間を作っての学校でのいじめや企業や公的組織でのパワハラなどが中間サイコの前兆行為であることがある。中間サイコの特徴の一つは犠牲者を自殺にまで追い込むことである。犠牲者の自殺は執拗ないじめなどで心が破壊され、恐怖を感じない真白後期 (ロボット化:偏桃体機能停止し言われるままに行動する状態)にまで追い込まれたのちに行うことが多いと考えられる。ロボット化すると犠牲者はサイコに逆らうことはない。犠牲者の自殺はロボット化が完成した証でもある。犠牲者がロボット化する前にサイコの行為を止めなければならない。ロボット化については本シリーズ(その4-3)「(d)サイコパスは健常者を自分と同じ感情のない状態にしたい衝動(ロボット化衝動)を持つ」及び(その4-4)「10)e)健常者のロボット化とサイコパス化の違い」参照。
単独と中間の食物への異物混入の違い:単独サイコが食物への異物混入を行う場合は、不特定の人であるのに対し、中間サイコは特定の人になる。特定の人がなんでこんなことをするのかとサイコを恨む反応が中間サイコの快感になり、恨み/恨まれる人間関係を作る。また、中間サイコは食物に混入せず直接無理やり食べさせることも見られる。嫌がれば嫌がるほど興奮して食べさせる。例11女子高生コンクリート詰め殺人事件でのサイコパス小倉らは尿やゴキブリを高校3年の吉田順子に、例13北九州監禁事件のサイコパス松永は大便を虎谷久美雄に食べさせている。両例とも饅頭サイコであるが、中間サイコも同様の犠牲者が嫌がることを行う特徴を持つ。相手が嫌がることを盛んに行うのは中間サイコの前兆行為である。
犠牲者の金品を奪い、持ち物を破壊する:金品を奪うのは単独サイコには見られない特徴で、反社会性人格障害の行動と見わけにくい。中間サイコが反社会性人格障害と異なるところは、金銭そのものが目的ではなく、犠牲者が金銭を奪われることを嫌がり、奪われた後に苦しみサイコを恨むことが快感になっていること。犠牲者の持ち物を破壊するのも、同様に破壊することよりも犠牲者が苦しむ姿に引き付けられている。相手と恨み/恨まれる関係を作る金品略奪や物品破壊は中間サイコの前兆行為である。健常者には通常この中間サイコの恨み/恨まれる関係の快感を理解することができない。
ⅳ)饅頭サイコの前兆例:饅頭構造の監禁殺人など凶悪犯罪に至る前兆
・他者に、前項ⅱ)単独サイコの前兆例やⅲ)中間サイコの前兆例、を行わせる。自分で行わずに他者に行わせるところに饅頭サイコの特徴が出る。他者に行わせるときにカラ理由(健常者にはばかばかしい理由。中身のない表面的な理由)が付く。例14のサイコパス角は自分では直接手を出さずにサイコ化した猪俣家の人が猪俣家長男の息子24歳を窓から飛び降り自殺させ、サイコ化したマサらが橋本久芳を沖縄万座毛から飛び降り自殺させた。角はその場にいない。【旧日本軍では幹部に饅頭サイコが多数入り込んで、多くのサイコ化した兵隊を作り出したと考えられる】
・他者に第3者から金品を奪わせることに饅頭サイコの前兆行為の可能性。その際サイコ3手法(強弁による暴力、長時間拘束、眠らさない)のいずれかが係わる。反社会性人格障害の行動と見わけにくいが、自分で行わずに他者に行わせるところに特徴が出る。また、カラ理由が付く。略奪期の金品財産を奪いつくした後に残虐期に入ることが多いので、金品などを奪い始めた段階が前兆行為と言える。
他者に行わせるので、誰がサイコかわかりにくい難しさがあるが、饅頭サイコこそサイコパス中のサイコパスで、最も警戒しなければならない、あらゆる残虐性を内包している。饅頭サイコを前兆段階で捕捉できるようにすることは社会の健全性を確保するために不可欠な社会機能として警察の重点施策にならなければならない。
(ⅱ)二次判定(二次フィルター):厳密な前兆調査によりサイコを判定
二次判定はサイコ対策室のサイコ専門警察官が行う。現状の「サイコパシー・チェックリスト」などは健常者の誰もが持つ民主的冷淡(労働編成冷淡)とサイコの冷淡を混同しているので使えない。実際のサイコ犯罪の調査分析でサイコ病がもつ特徴を蓄積して、「サイコパシー・チェックリスト」は犯罪現場の実践に使えるように大幅に見直さなければならない。現状の「サイコパシー・チェックリスト」などサイコを判定する基準についてはウィキペディア『精神病質』参照。
用語解説:民主的冷淡(労働編成冷淡):例えば、設計、製造、研究などの労働編成それぞれが互いに相手を尊重して、相手が困っていても、インターフェイス(仕事の接点)に係ること以外は口出しいない冷淡のこと。互いの専門性を尊重した冷淡と言える。この冷淡は他の人が多少困っていると見えても、その人の生活や人生に口出ししない、その人の自由を尊重した民主的冷淡となる。この冷淡では相手が不当なことのために明らかに困っているときには助けたいと感じ、助けることがある。民主的冷淡は民主的な社会の基礎になる。この冷淡の起源は現生人類が労働編成を形成した時に遡る。現生人類の民主的冷淡の詳細は後の項「経営とサイコパス」で述べる。サイコパスの冷淡(サイコ冷淡):健常者に寄生し、略奪寄生と残虐寄生を何の躊躇もなく、進んで行う冷淡である。民主的冷淡が『相手のことに口出ししない』のに対し、サイコ冷淡は『相手に積極的に口出しし、寄生する』。
ⅰ)「優れた経営者にはサイコパスが多い」という民主的冷淡を混同した誤り:「優れた経営者にはサイコパスが多い」という誤りは、「サイコパシー・チェックリスト」などのサイコ判定基準が民主的冷淡とサイコ冷淡を混同しているために生じたと考えられる。優れた経営者は明確な民主的冷淡(労働編成冷淡)を持っているのでそれが現れたと考えられる。優れた経営者は経営内部の人のそれぞれの専門能力を尊重して、重要な仕事を任すために、経営がうまくいく。経営者の中には徹底的に冷淡で、人が困っていても共感しないものがいるが民主的冷淡の範囲でサイコのような残虐を求めることはなく、サイコ冷淡を持っているわけではない。困っている人に共感すると資本主義の競争に対応できないことから生じており、サイコ特性があるということではない。この誤りはNHK心と脳の白熱教室第3回「あなたの中のサイコパス」の講師ケヴィン・ダットン(Kevin Dutton)などサイコパスの研究者と言われる人の中に多い。健康な学生に「サイコパシー・チェックリスト」などを使い「君はサイコパス特性がある」などと無責任な対応をして困らせている。このようなサイコパス研究者はサイコパスの研究を歪ます害毒を振り撒いている。経営は労働編成の一部で特別ではなく、経営者の中にも一定の割合のサイコパス特性を持つ者がいることは他の人たちと変わりはない。中野信子著『サイコパス』(2016、文芸春秋)も民主的冷淡とサイコ冷淡を混乱させるダットンと同様の誤りを含んでいる。「大企業のCEOや弁護士、外科医と言った、大胆な決断をしなければならない職種の人々にサイコパスが多いという研究結果がある」(『サイコパス』P6)と言うのは「サイコパスが多い」でなく「明確な民主的冷淡を持っている人が多い」と書き換えなければならない。また、「先進国にサイコパスが多い」というのも誤りで、「先進国は明確な民主的冷淡を持つ人が多い」ということで、サイコパスが多いわけではない。この誤りは「サイコパシー・チェックリスト」などのサイコ判定基準が持つ誤りから生じている。
ⅱ)二次判定の基礎になる最先端脳神経活動解析技術:サイコ病(偏桃体機能不全症候群、残虐依存症)は最先端の医療装置の進歩でますます判定と治療の可能性がはっきりしてきている。下画像は独立行政法人放射線医学総合研究所(以下放医研)分子イメージング研究センターの『感情の中枢である扁桃体におけるドーパミンの役割を解明』と題された論文のものである。画像の上左にある装置がfMRIと言う装置でその手前の台に人が横になって左の円筒状の中へ移動して計測する。画像右の脳断層画像は「fMRIによる恐怖の表情の顔写真を見た時の扁桃体の活動の計測。黄色の部分が扁桃体の活性を示す」「健康男性21名の脳活動をfMRIにて測定し、恐怖や不安の感情により扁桃体の活動が活発になることを確認した」。画像下左は使用した顔写真の例だがこれはあまり効果的でない写真かもしれない。
同様の試験は『サイコパス、冷淡な脳』の著者J.ブレア(James Blair)が行い、サイコは恐怖などの写真に偏桃体が反応しないことを突き止めている。J.ブレアが使用している写真は本シリーズ(その1)「1.2 サイコパスは他の人と共感することができない。表情や声や身振りから人の感情を把握できない」参照。また、米ケンタッキー州ジョージタウン大学アビゲイル・マーシュ教授は「サイコパスの偏桃体が標準より小さめで、他人の怯えや不安の表情に対してほとんど反応をしない」としている。本シリーズ(その4-3)「(b)愛情あふれる人の偏桃体は大きい」参照。
放医研分子イメージング研究センターの論文では「脳内で情動の中枢とも呼ばれる扁桃体は、特に不安や恐怖といった感情に深くかかわっており、様々な精神疾患においては扁桃体の機能異常が報告されています。このため扁桃体の活動を調節するような薬物を開発し、このような精神疾患の治療に利用していくためには、扁桃体における分子のはたらきを理解することが不可欠です」と研究の背景を説明している。
下のグラフは同論文にある「扁桃体のD1受容体の密度が高い(受容体結合能が大きい)被験者ほど、恐怖の表情の顔写真を見たときの扁桃体の活動が強いという関係がある」ことをPET(陽電子断層撮像法)により計測した結果を示すもの。DはドーパミンDopamineの頭文字。受容体はドーパミンなど神経伝達物質と結合し反応する神経分子。ドーパミンには5つの受容体が知られており、D1はその代表的な興奮を伝達するもの。21人について調べたためグラフには21プロットがある。サイコについてこのようなグラフを作成すれば、サイコであるかどうかを客観的に判定することができる可能性がある。この論文は米国科学雑誌「The Journal of Neuroscience」2010/2/24に掲載されている。
もう一つの論文、生理学研究所『恐怖による交感神経活動の脳内ネットワークが明らかに− 不安障害や自律神経失調症の予防や治療に期待』(2016年7月14日 プレスリリース)では、「fMRIを用いて32人の健常者に対してホラー映画とコントロール映画を視聴した時の脳活動を調査」し次の3点を明らかにした。「①恐怖によって扁桃体と前帯状皮質、扁桃体と前部島皮質との機能的な結びつきが強くなっている。②恐怖の程度が大きいほど、左扁桃体と前帯状皮質との機能的な結びつきがより強くなっている。③前帯状皮質は、恐怖と交感神経活動をつなぐ重要な役割」。
この研究で筆者が重要と思うことの一つは恐怖に対して左右の偏桃体が異なる反応をしており、左右の偏桃体の機能が異なることを突き止めていることである。本シリーズ(その4)「1.16(2)扁桃体の構造と具体的機能とサイコパス」で偏桃体が少なくても6機能部位から構成されていることを示したが、さらに左右で異なり、6機能部位以上があることを暗示するもの。サイコには首の切断に執着がある者、毒物に執着がある者、犠牲者が衰弱してガリガリに痩せることを求める者など、いろいろのタイプがあることは、偏桃体のどの部位が機能不全かと係わりがある可能性がある。またサイコに単独、中間、饅頭の3類型があることは機能不全の偏桃体と脳辺縁系との関係が係わると考えられる。
下の画像はK.A.キールがサイコでない者とサイコの脳波を観察したもの。当たり障りのない単語は「家」など、情動に訴える単語は「血」など。サイコでない人は単語の変化で脳波も変化するが、サイコは感情の変化がないので単語の変化に対して脳波の変化反応はない。この実験からK.A.キールは、サイコは「目にしている単語がどのような種類のものでも、脳波のパターンが通常の人とは大きく異なっていた」「サイコパスの脳が他の人々とは異なる発火(脳の活動)の仕方をすることを示唆している」と述べている。
画像出典:別冊日経サイエンス『心の迷宮、脳の神秘を探る』(2013、p10、「脳波の違い」)
以上で分かるように、fMRIやPETなどの脳神経活動解析装置の技術の進歩と脳機能や神経伝達物質などの解明は、サイコ病の判定と治療を可能にする展望を示している。現状の装置はまだ分解能(細かさ)や時間能(反応の検出時間遅れ)や被験者姿勢など課題がある。fMRIでは磁気発生のための大きな音も課題である。また、サイコ㌟の懐柔期、満足期、停滞期の違いで偏桃体の反応がどう変わるか、疑似サイコ化した犠牲者の偏桃体の反応はどう変化するかなど解明しなければならないことが多数ある。精神科医の中にはサイコは治療できないと主張する人がいるが、癌が以前は治療不可能の病気と言われえていたが、現在では治療可能な病気として展望が広がっている。サイコ病も癌同様にいずれ治療の展望が開かれると確信している。治療の展望は社会の明るい展望につながる。
(ⅲ)前兆犯罪サイコ判定(前兆犯罪フィルター):犯罪行為で逮捕された容疑者のサイコ判定である。
逮捕した部署が簡易サイコ判定マニュアルにより一次判定を行い、サイコ病の可能性があればサイコ対策室へ事件を移す。次の例は「前兆犯罪」でサイコ病を判定していればその後の凶悪サイコ犯罪を防ぐことができた可能性が大きいものである。
・2001年附属池田小事件(小学生8人殺害、15人重軽傷):犯人宅間守は小学生の時に猫等の動物を新聞紙に包んで火をつけて殺害する動物虐待をし、中学では弱いものをいじめ、女子生徒の弁当に精液を掛けるなどサイコ病の特徴を示している。自衛隊に強い興味を持ち、1981年航空自衛隊に入隊したが1年強で除隊。十数社転々とし暴行障害事件を繰り返し、家族にも暴力をふるい、高速道路の逆走を行った。1984年に強姦事件で精神科に入院。入院中に5階から飛び降り重症。統合失調症の診断。1985年に強姦事件で3年の実刑。出所後に父親から勘当された。市バス運転手の時には乗客女性に言いがかりをつけ懲戒処分。1999年4月に小学校の用務員の時に教諭らが飲むお茶に薬剤を混入し免職。その後付属池田小事件2001年6月までに職を転々としその都度暴行事件などを繰り返していた。強姦や傷害事件の段階を「前兆犯罪」としてサイコ病であることを特定できた可能性が高い。以上の情報元ウィキペディア『付属池田小事件』、および本シリーズ(その4-2)「1)サイコパスの逆転生存欲求・2001付属池田小事件」参照。
・1971大久保清連続女性誘拐殺人事件:犯人大久保清は1971/3/31~5/10の約1.5カ月に8人の女性を殺害したが、最初の殺害の29日前1971/3/2まで府中刑務所に入っていた。小学6年の時に幼女の性器に石を詰め込む事件を起こし、その後も強姦や恐喝で実刑を受けている。また嘘で大学生や全学連活動家などに成りすまし女性に接近するなどサイコ病特性を示しており、殺人に至る前の犯罪を「前兆犯罪」としてサイコ病であることを特定できた可能性が高い。(情報元ウィキペディア「大久保清」2017/12/27閲覧)
・2016年相模原障害者大量殺傷事件:障害者19人殺害、26人重軽傷の犯人植松聖(さとし)は、事件前に津久井署が「他人に害を及ぼす恐れがある」として警察官職務執行法に基づき、北里病院措置入院(行政による強制入院)の処置が取られていた。植松は上半身全体に般若の入れ墨があり、障害者入所者の手首に黒で時計のいたずら書きをしているが、この行為はサイコ病の特徴の可能性がある。隔離病室ではドアを蹴り、大声を出すなど精神錯乱が見られ「ヒットラーの思想が降りてきた」と言う。退院時に友人に「医者をだまして退院してきた」と話す。サイコは簡単に医者をだます。植松は大麻をやっており、UFOが見えると幻覚があるようでで、統合失調症などとサイコ病との合併症状態ではないかと筆者は推測する。津久井署が事件前に把握した植松は「前兆犯罪」の状態と言える。この状態で手を打てるようにすることが必要。被害者が出てからでは遅い。以上の情報元:「植松聖(うえまつさとし)生い立ちから事件まで【相模原障害者殺傷事件】」https://www.orangehoppe.com/uematsusatoshi-oitachi-sagamihara-shogaisha-sasshojiken/(閲覧2017/12/22))
植松聖(さとし)のカラ理由「ヒットラーの思想が降りてきた」:サイコパスがカラ理由(健常者にはばかばかしい、中身のない表面的な理由)を必要としている例になる。例14尼崎監禁殺人事件のサイコパス角は「お前の出来が悪い」と言う理由で谷本明などを虐待する、どう出来が悪いかの説明はない。例13北九州監禁事件のサイコパス松永は娘沙織に父虎谷の問題点を無理やりメモに書かせ、その問題点メモをカラ理由として虎谷の前で読み上げて通電虐待する。松永はいろいろな犠牲者を通電虐待するときに必ずカラ理由を必要としていた。サイコパス植松聖も殺す相手は誰でもいいが、カラ理由を必要としていた。カラ理由を見つけ「ヒットラーの思想が降りてきた」と表現した。植松がたまたま就職したのが障害者施設であったためにこのカラ理由になった。もし幼稚園の用務員に就職すれば幼児を殺すカラ理由を見つけ出し、例えば「泣き声がうるさい」と言う理由でも植松は幼児を殺したに違いない。ヒットラーが障害者を多数殺したことを知りカラ理由にしただけで、それ以上の理由はない。植松のカラ理由は至ってまじめで衆議院議長公邸を訪れ障害者抹殺を求めた便せん3枚の手紙を渡した。手紙には「安倍晋三様にご相談いただけることを切に願っております」とある。ヒットラーはドイツ国家の中枢を握り残虐の限りを尽くしたが、サイコ病の特徴が随所に出ており、障害者大量虐殺やユダヤ人大量虐殺もカラ理由以上の理由を見つけるのは困難である。ヒットラーについては後の項「戦時下のサイコパス」でも触れる。植松はカラ理由を裁判でも主張する可能性がある。
精神科医松本俊彦は「彼(植松聖)の思想は、生産性、効率性、社会的負担を判断基準とした、いわば『憂国の士による障害者無用論』と感じました」「障害者に対する『憎悪(ヘイト)』というよりも、優生思想であるといえる」(「相模原障害者殺傷事件の植松聖被告が宮崎勤死刑囚について言及した手紙」https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20170814-00074533/ (閲覧2017/12/22))としたが、植松のカラ理由はそのような立派な『思想』ではなない。サイコのカラ理由を真に受ける精神科医がいることに注意する必要がある。カラ理由については本シリーズ(その4-4)「9)サイコパス自身は自分をどう感じているか(d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」参照。
(ⅳ)サイコ対策室のサイコ前兆捜査官は最前線のサイコ病診断医:サイコ前兆捜査では裁判制度の「推定無罪の原則」(裁判で有罪判決が出ない限り容疑者は無罪として対応する)は適用しない。すなわちサイコであるかどうかは裁判制度によるのでなくサイコ対策室のサイコ前兆捜査官が中央サイコ治療院との連携で診断する。サイコ前兆捜査官は警察官であると同時にサイコ病の最前線の診断医でもある。現状の裁判制度ではサイコ病を診断する体制がなく、サイコ病で生じた犯罪を的確に処理できないので、本シリーズで述べるサイコ対策と治療体制が必要になる
(ⅴ)サイコ犯罪防止を警察官の業績評価に直結させる:現状は犯罪防止が評価されない
現状は犯罪を防止しても業務成績評価にならない。現状は立件事案、起こった犯罪の解決、が業績評価の主体で、犯罪防止に対しては新しい業務評価が必要になる。すなわち、犯罪防止を主要な任務とするサイコ前兆捜査官などの前兆捜査業務を評価するシステムが必要。
・犯罪が起こらなければ動かない現状:犯罪防止を評価しないばかりか、犯罪防止で動こうともしない現状。特に饅頭サイコが行う友人間や親族間など健常者同士で虐待させる行為は署員には動機が不明で何が何だかわからないため現状では立件さえできない。従来の「物取り、怨恨」のような動機がはっきりした場合しか対応できない。例14尼崎監禁殺人事件の明のような血だらけになって警察署に飛び込んできても「事故か、事件か」と問い詰め、「娘に虐待された」という話に、何が何だかわからず「被害届が先だ」と追い返した。猪俣家甥は何回も警察へ行ったが相手にされず、やむを得ず、角らを誘って倉庫からバナナなどを盗む窃盗事件を起こして、自ら出頭して警察を動かした。これらは犯罪が起こらなければ動かない警察の実態を示している。特にサイコ犯罪が起こる前に対処する警察官のモチベーションのために人事業績評価システムを見直さなければならない。
・国家公安委員会警察刷新会議第8回会議2000/6/16でD氏は栃木事件、桶川事件に関わり、次のように述べた『被害者の親が何度言っても動かないというのは、これをやっても得にならないとか、かえって損をするとか、逆インセンティブがあるのではないか。犯罪を未然に防止することが得点にならないことが問題である』『事件を未然に防ぐ力がない。国民から見れば警察は殺人が起きるまで待っている組織というイメージではないか。』(情報元:公安委員会H.P.)D氏の発言に対し現状は改善された様子はないようである。
サイコ犯罪防止を警察官の業績評価に入れる例:下記表は筆者が考えるサイコ前兆捜査に対する業績評価方法の例である。N値が高いほど業績評価が高い。
|
業績評価点数N |
||
加点要素 |
負点要素 |
評価点算出式 |
|
窓口部門 |
一次判定を行った件数:n1 サイコ対策室の二次判定へ送った件数:n2 二次判定でサイコと特定された件数:n3 |
一次判定を怠たり他部門(含他県警)で一次判定が行われた件数*1:n4 二次判定へ送ることを怠たり他部門(含他県警)で二次判定へ送った件数*1:n5 |
N*2=n1+5n2+10n3-5n4-10n5 |
サイコ対策室 |
二次判定を行った件数:m1 二次判定で特定し承認得た件数:m2 |
冤罪監視救済機関から疑義を受けた件数:m3 二次判定が誤りだった件数:m4 |
N*3=m1+10m2ー5m3-10m4 |
注*1:通報者や犠牲者は、警察署員が訴えを理解できず、期待した対応をしない時に、理解できる警察署を探してあちこち行く。このことを防ぐために、負点にしている。本シリーズ(その4-53)「(g)犠牲者はいろいろな署へ行く」参照
*2:加点重み付け:n2は二次判定の証拠をそろえる必要があるのでn1の5倍。二次判定でサイコと特定された場合には、サイコを見つけ出し犯罪を未然に防いだことを評価しn1の10倍の評価としている。負点重み付け:通報者や犠牲者が他の部門に相談に行くのは、その窓口部門の対応に問題があるので5倍の負点5n4。他の部門が二次判定へ送ったとなれば、その窓口はサイコ前兆に対処する能力がない証明になり、10倍の負点10n5とした。
*3:加点重み付け:二次判定の上部組織(中央サイコ対策室と中央治療院)の承認を得た場合は、サイコ犯罪を未然に防いだことを評価し10倍の10m2とした。負点重み付け:冤罪監視救済機関から疑義を受けることは、証拠が不十分であることが考えられ、サイコ判定の人権が絡む重要性を鑑み5倍の5m3とした。二次判定が誤りであることは本来許されないことで10倍の10m4としている。このような本来許されない負点の重み付けの問題があったとしても、サイコの深刻な現状に対処することを優先しなければならない。
実際の運用経験を積み、効果的な人事業績評価へと改善していく参考になれば筆者は幸いである。
以下(その4-67)へ続く。