ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

3月になった

2013年03月01日 | 東日本大震災
3月になった。
まもなく「あの日」を迎える。

先月末に、ある小学校の依頼で放射線の話をした。
先生方全員と、PTA役員の保護者の方々が対象だった。
内容は、放射線の基本的な知識と、
県内の被ばく検査データの結果とその解釈について。
もちろん、甲状腺エコーの話もした。

終わってから、保護者の役員のお母さまが言った。

 今まで、こういう話をきちんと聴いたことがありませんでした。
 不安になる話ばかりで、まだそういう親(不安な)はたくさんいます。
 保護者全員にこの話を聴いて欲しいと思いました。

そのお母さまの言葉は素直にありがたかった。
と同時に、一昨年の秋から市内で開催している放射線の講演会のアナウンスは、
まだまだ行き渡っていなかったのだな、ということが残念でもあった。
そのお母さまは、事故後、不安になるような内容の講演を最初に聴いてしまい、
その後は、講演会のたぐいには近寄らなかったのだそうだ。
このような内容のお話は、他の講演会でも寄せられた。

昨年末の乳幼児健診では、
いまだに、県内産のものは一切口にせず、
子どもも外遊びは県外に出かけている、というお母さまに出会った。
その方の住まいは市内でも線量の低いところにもかかわらず。
歯磨きさえもペットボトルの水を使っているのだそうだ。

2年近くたった今でも、たまにこのような方に出会うことがある。
アナウンスが行き渡っていないというよりも、
すでに「聞く耳」を持たない、と表現した方がいいのかも知れない。

正しい情報を得る前に、誤った情報を「真実」としてインプットしてしまった脳味噌には、
今や何をどう説明しても、伝わらないようである。
得たいの知れない新興宗教と同じだ。
しかもインプットされたそれらの情報は、あちこちはまっとうなこともあるから始末が悪い。
でも、聞く耳を持てなくなってしまった方々を責めることはできない。

一昨年、事故のあとに書いたブログに、
 
 わたしたちは、誰にこぶしを振り下ろせばいいい?

と書いた。
あの頃は、誰かを責めるとか責任取れとか、そんなことよりも、
目の前にいる子ども達とその親御さんへの思いでいっぱいだった。

今、わたしがこぶしを振り下ろしたいのは、東電でも国でも県でもない。
人の不安につけ込んで、誤った情報解釈を未だに平然と正義漢ぶって垂れ流している奴らだ。