読んでいて、とにかく驚きの連続だった。昔読んだイスラム教に関する啓蒙書は、イスラム教について、「厳しい戒律というイメージがあるが、実際は臨機応変な解釈が可能な穏健な宗教である」ということが強調されていて、てっきりそうだと思い込んでいたのだが、本書に書かれたイスラム教は全くそれとは違うものだった。本書で書かれたイスラム教は、多神教や間違った社会を排するという目的に関しては全く妥協しないものだという。イスラム教国家における過激派による凄惨な事件は、イスラム教同士の内紛だという解釈は全く違うと教えてくれる。間違った社会を正すことが正義であるということであれば、イスラム教国家で事件が多いのは、単にそこにイスラム教徒が多いからということになる。しかも自爆というジハードという行為には、天国の切符が約束されているという。また奴隷制度についても、それを是とするのが本来の教義だという。今までに読んできたイスラム教に関する本と本書はなぜこんなにも違うのか?本書に最初に書かれているように、それは、これまで書かれてきたイスラム教に関する啓蒙書が、社会学者や歴史学者によるものか、宗教学者によるイスラム教礼賛のどちらかが大半だからだとのこと。そう言われてみれば、そこに大きな落とし穴があったことは明白だ。多様な相手を知ることの重要性を改めて感じざるを得ない一冊だった。(「イスラム教の論理」 飯山陽、新潮新書)