書評、その他
Future Watch 書評、その他
美術の力 宮下規久朗
美術評論家のエッセイ集。この著者の本は何冊か読んでいるが、2年前に読んだ「美術の誘惑」という本がとにかく衝撃的で、その年読んだ本のベストワンだと書いた記憶がある。本書は、その前に読んだ本と基本的には同じく、雑多な美術に関する極く短いエッセイが並んでいる読み物風の一冊。日本で開催された展覧会の解説とか感想といった趣の文章が多い。書かれた内容は、事物を組み合わせて人物の顔を描いたアルチンボルト、静物画をひたすら描いたジョルジュ・モランディ、戦国時代の踏み絵、日本独自の画材であるクレパスによる絵画、聖地に飾られるエクス・ヴォート(奉納画)、戦時中に描かれた戦争画、津軽の供養人形、アウトサイダー・アートなど多彩。多彩だが、こうして並べてみると、やはり著者の人生に対する虚無感のようなものが感じられる。なお、こうしたエッセイの多くが、日本で開催された展覧会の感想として描かれたということは、本書は日本における美術シーンが多彩になっていることの証しと言えそうだ。(「美術の力」 宮下規久朗、光文社新書)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 淡雪の記憶 ... | バナナの皮は... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |