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骨を彩る 彩瀬まる

書評誌などで、著者の評価や作品ごとの評価が色々分かれているようなので、自分で確かめたくなって、初期の作品を読んでみた。本書を読んで感じたのは、この作品を評価したり、その良さや欠点などを説明するのはとても難しいということだ。本書には5つの短編が収められていて、登場人物が少しだけ重複しているが、話の内容に繋がりはない。5編の共通点は、主人公のそれぞれが、自分が他の人と違う点を意識して、それにどう向き合えば良いのかまだ折り合いをつけないままでいる、ということだ。自分と他者との違いをそのまま受け入れようとする彼らの心の内が静かに読者に迫ってくる。そうした作業を淡々と続ける著者に対して、読者が面白いとか、心を動かされるといった評価をして何かを言うのは、それだけで何だか場違いな気がしてしまうし、ある意味その衝撃度はものすごく大きい。これまでに自分が読んだ著者の作品は全て「東日本大震災」後に書かれたものだったが、本書は震災前に書かれたものだ。その書かれた時期の違いで、明らかに著者の読者への対峙の仕方が変化している。書評の評価のばらつきは、こうした初期の作品に衝撃を受けたかどうかで変わってくるのかもしれないと感じた。(「骨を彩る」 彩瀬まる、幻冬舎文庫)

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