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カレー移民の謎 室橋裕和

街でよく見かけるインドネパール料理店(インネパ)の歴史や現状を深掘りした一冊。現在全国に5000軒ほどあるらしく、それに伴って在留ネパール人の数もここ10年で5倍増の15万人になっているとのこと。1980年代に何軒かインドのムガール料理を提供する店が大成功を収めたことを契機にそこで働いていた料理人が独立し、そこからどんどん増えていったそうだ。インドに出稼ぎで高級ムガール(ムグライ)料理店のコックとして働いていたネパール人が日本の有名店に転職、10年くらい修行して資金を貯めて独立、メニューは修行した店のものをそのまま踏襲というのが今日本にあるインネパの典型例。日本における外国人の会社設立規制の緩和も一役買っているとのこと。多額の開業資金が必要で、しかも料理人としての在留許可の延長ができるかどうか不安定な状態での開業となるため、失敗や冒険が許されず、結果的にすでにある店と同じ、大きめの甘いナン、バターチキンカレー、タンドリーチキンなど、どこも同じメニューになってしまう。こうした状況下、開業を手伝うあこぎなブローカー、全く未経験者を来日させコック歴を捏造する犯罪、雇われる料理人の給料搾取、同伴して来日した家族の過酷な環境や教育問題、過当競争による安売りとイメージ悪化の悪循環などなど多くの問題点が現出。そのため、ネパールでも日本ブームからイギリスなどの欧州出稼ぎに流れが変わりつつあり、今後は少しずつ淘汰が進むのではないかとのこと。ニッチなテーマを丁寧に調査した熱意が伝わる内容で、明確なメッセージもあるすごく面白い一冊だった。(「カレー移民の謎」 室橋裕和、集英社新書ノンフィクション)
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