スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(学問ノススメ1)

2018-12-01 19:59:03 | 日記
12月1日(土)
 学問ノススメを読んでいるが読みづらい本でもある。例えば有名な「天は人の上に云々」の初編であるが、本来平等な筈の存在である人に、現実には富貴貴賤の別が生じているのはなぜかと問うて、その原因を学問のあるなしだと断じている。しかしこれは社会科学的に見ればそんな単純な答えは出せない、巨大な問題である。だから学問ノススメは社会科学の本ではなく、福沢の体験記だとして読むしかない。人が己の体験から大きな問題に結論を出すという手の本は、同じ体験をした者でないと理解しがたい所がある。
 福沢は最終章の17編で、人は人望を得ることが大事でその為には、流暢で説得的な話術と、好ましい容貌と、多くの知己を得ることが必要だと書いている。これは現代の我々にとって常識である。一編を割いて教えて貰う類の話ではない。私は社会生活をセールスマンから始めたから、何をいまさらと興ざめした。私の周りを見れば町内会の役員から、カルチャー教室の先生まで、このような人たちばかりである。しかし思ったのだが、福沢の時代には、しかめっ面をした気位の高い人たちばかりで、今の我々のような社交的な人は珍しかったのではないのだろうか。徳川時代の武士に、積極的に知らない人と交わる必要など、なかったろう。労働者階級が存在しない封建時代の商店の奉公人は、仕事以外で他人と交わる私生活の場がなかったのかもしれない。生活の安心感が溢れている現代と比べて、当時の人々の心は荒んでいたのかもしれない。もしそうなら、福沢は先を見た慧眼の士だと言える。

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