スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(アメリカはいかにして日本を追い詰めたか)

2023-01-28 09:54:53 | 日記
1月28日(土)
 表題は多分出版社が、話題性を狙ってセンセーショナルな題名を、付けたものであろう。アメリカの新進気鋭の学者がルーズベルトの陰謀を、新資料を使って暴いたものかと、錯覚させられてしまう。実際はアメリカ陸軍大学内にある戦略研究所が出したレポートであり、原題は「1941年の日本の戦争決断についての、今日的教訓」とあるもので、文中で訳者が正しく示してくれている。
 アメリカでも、なんで日本は無謀な(自殺的な、負けると分っている)戦争を始めたのか、疑問になっているらしい。ルーズベルト史観を信奉する物事をあまり考えない学者たちは、それが主流派らしいが、日本人が馬鹿だから感情に任せて戦争をしたという事で片づけているようである。しかしアメリカにも人種偏見に捕らわれないまともな学者が、多く居る。そういう人たちが出した大体の結論は、ルーズベルトが日本を、アメリカのポチになるか戦争するかという所まで追い込んだ、その結果日本は戦争に訴える道を選んだ、という事のようである。
 そしてこの戦略研究所のレポートの結論は、経済制裁とか圧力は適宜に行う必要があるとの、分かったような分からない結論となっている。この辺がアメリカの戦史研究の限界らしい。つまりアメリカにはルーズベルトは正しいという「正統派」研究者と、否ルーズベルトが戦争を起こしたのだという「修正派」研究者の対立があって、陸軍大学のような実務的研究をするところはどちらの陣営からも距離を置いた、研究結果にせざるを得ない様なのである。ありていに言えば、ルーズベルトの犯罪性(戦争に持って行った)は確かなのだが、公的機関としてははっきり指摘できないという所なのである。
 この辺から考えるにルーズベルトが戦争したがっていたというのは、アメリカでも公知の事柄となっているらしい。ただルーズベルトを庇う論調が優勢なためにそれが障害となって、その先に進んでいない。その先とは、では何でルーズベルトは戦争したかったのかと、いう事である。或いはなぜルーズベルトは日本をあれほど(戦争を選ぶところ迄)追い込んだのかという、疑問である。この辺の解明は日本の学者に期待したい。
 私は勿論学者ではなく素人の勘に過ぎないが、ルーズベルトが戦争をしたがっていた一番の理由は、イギリスから覇権を奪うためであったと思う。イギリスは単独ではドイツに負けそうである。そこでアメリカ人の血を差し出すが、その代わり、イギリスは覇権を譲り渡せとルーズベルトは要求したのである。つまり戦後の世界はイギリス流のブロック経済は止めて、アメリカ流の機会均等・自由な交易主義の世界とする。イギリス流の植民地政策は止めて(各国が植民地を持つからブロック経済になってしまう)、民族独立をさせる。イギリス流の勢力均衡政策は止めて、ドイツは二度と立ち上がれないように、無条件降伏をさせる。勢力均衡ではなくアメリカが世界の警察官になる事によって、世界の平和を維持する、これであったと思う。その約束をしたのが大西洋憲章で、シンガポールを失うのが見え見えのチャーチルは泣く泣くルーズベルトの要求を呑んだのである。
 ルーズベルトの要求は過去の「門戸開放・機会均等」政策に基づいたものである。アメリカにはこのアメリカの理想を掲げて、他国に干渉してゆくべきだとの勢力と、モンロー主義に代表される孤立主義の二つの勢力があったように思う。二大勢力が交互に政権を取った。「門戸開放・機会均等」はアメリカの、一つの国是と言って良い。そのアメリカの国是と真正面からぶつかったのが。日露戦争以後の日本の大陸政策である。「門戸開放・機会均等」は本来イギリス・フランスなどの植民地政策と、ぶつかる筈のものであったが、歴史的な経緯から日本と衝突したのである。ルーズベルトが日本にあれほど厳しく当たった理由はそこにある。