建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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園庭保育園と建築こども園

2010-05-13 20:46:54 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

(山田あすか)

建築学会の福祉施設小委員会・こども施設WGの企画で,
保育施設の見学に行ってきました.
園庭の環境づくりに「ものすごく」力を入れている保育園と,
著名な設計グループが設計した幼保一体型施設です.

前者の園(仮称:園庭保育園)は名物園長の主導のもと,
それはもうものすごい情熱をかけて園庭をつくっています.
安全性を過度に保障することは,結局こどもたちから安全と危険を
学ぶ機会を奪うことだ,という信念が渦巻いています.
保護者の参加も並大抵ではなく,園庭の維持費をまかなうための
バザーや,卒園制作などなど保護者がこどもや保育園と
一緒に楽しんだり,成長したり,コミュニティをつくっていく
たくさんの仕掛けがあります.
こどもたちは本当に楽しそう(そしてとても大変そう・笑),
毎日冒険と挑戦の日々でしょう.

でも,待機児童はいないそうです.

説明会をすると,半分の保護者は「うちは無理です.他に行きます」
っておっしゃるのだそう.
まあ,その気持ちもわかるような・・(いろんなご事情や考えの家庭が
ありますから.こどもの性格(と親が考えているもの)もあるでしょうし).

後者の園(仮称:建築こども園)は室内環境,園庭環境もデザインされて
います,でも園庭保育園ほどつきぬけていない,というか・・
イメージでいうと,こどもが喜ぶ・よくできた公園チックです.
(対する園庭保育園は「ジャングル」)
こちらでは,幼稚園的(短時間)利用のご家庭と,保育所的(長時間)
利用のご家庭をどうつなぐか? 相互理解を促進するか? ということに
かなり心を砕いておいででした.
ふたつの施設の園長先生たちは旧知の間柄とのことで,図らずもお二人の
座談会が実現してしまったのですが,建築こども園の園長先生がおっしゃった
「いろんなご家庭があるので」「選択肢があることはいい,園庭保育園のような
園がひとつあるのとないのとでは大きく違う」という一言は耳に残りました.

園庭保育園は確かにすごい.でも半分のご家庭しか,選ぶことができない.
その理念に共感できる人たちが集まってきて,その環境をどんどん発展させて
いく.もともと,環境への共感力がある人たち.

じゃあ,そうではないご家庭とこどもたちはどこへ行こう?

建築こども園は,そういうご家庭やこどもたちも(もちろん,もともと環境への
共感力が強い方たちも)引き受けている.園庭保育所の仕掛けを100%だとしたら,
70%出力くらいに押さえておくことで,幅広い層を受け入れ,環境(づくり)への
共感力があまり高くなかったご家庭の共感力も高めていく装置となっているのかも
しれない.

このふたつの園を一日で見比べられたのはとても良い経験でした.座談会になって
しまった経緯も含めて,めちゃくちゃ有意義な一日でした.
もともと,建築こども園の方には調査などで入らせていただいたこともあったのです
がやはり再訪して,そのときどきのいろんな視点から見ていくことはすごく大切だと
思った次第です.

それから両園の園長先生がおっしゃっていた,「子育てを通して親自身が生き直したり
成長したりする,園はその親子の育ちをサポートする」ということは,この時代に
ものすごく大切なことだと思いました.

自分も子育てをしながら(させてもらいながら)彼と一緒に成長しようと思った次第です,
簡単ではないですけど.

 

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