社会人学生の遅れてきた学習意欲

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ボンボン

2008年12月31日 | 読書メモ




『ボンボン』(原題:El perro)
監督:Carlos Sorín
公開年:2004/09/24(日本:2007/04/14)
製作国:アルゼンチン
言語:スペイン語

昨日BS朝日でアルゼンチン映画のボンボンをやっていたので見てみました。普段映画を見ないのでカテゴリは違いますが読書メモに入れておきます。

舞台はアルゼンチン南部パタゴニア。真面目にガソリンスタンドに勤めていたフアンは突然仕事をクビになり、娘夫婦のところに居候するはめに。ある日人助けをしたお礼としてもらった犬をつれて帰ると娘にこっぴどく怒られ、家を出て行かざるを得なくなってしまい…というお話です。

日本で公開された当時のポスターには「ラテン版わらしべ長者」と書かれていますがわらしべ長者の話とは全く違います。犬を貰い受けたフアンにはこの犬を元手にして一発あてるぞなんて意気込む様子はさらさらなく、むしろ「お礼に犬なんかもらってもなぁ…」と終始消極的ですし、ドッグコンテストで入賞を果たしても盛り上がっているのはフアンの周りの人間でした。

この映画ではフアンは必要最低限の生活ができたらそれ以上は求めないタイプの人間として描かれています。荒涼としたパタゴニアでは天の僥倖なぞ期待できないし誰もが必死にならねば生きてゆけない環境にありますが、その中で控えめなフアンが生活していくというそのコントラストが際立っています。

犬は犬舎に書かれていたフランス語(le chien)をそのまま西語読みしたレチェンという名でフアンに呼ばれます。ドッグコンテストで入賞し種付け依頼が来るのですが、レチェンは雌犬に興味を示さず獣医に「性行動に問題有り」との診断をされてしまいます。その後フアンとレチェンは別れるのですが、お互いにやっぱり一緒に居たいと思い再会を果たします。

フアンとレチェンは鏡像的な関係にあって知らず知らずのうちに相手の中に自分を見出していきます。必要最低限の生活しか求めないフアンとレチェン。レチェンはおそらく前の飼い主の死によってそのようになったのだと思われますが、フアンと別れた後で脱走してフアンに会いに行くという過程で新たな生きる目標を見出したんだろうと思います。

そしてそれを見たフアンも鏡像関係にあるレチェンに自分の生きる活力を見出してブリーダーとしての生き方に活路を見たのではないかと思います。その辺の静かな内なる変化が最後のシーンで印象的に描かれていたように感じました。

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