NY原油価格が1バレル130ドルを超えました。商品先物取引のサイトでさっき確認したら当限で132ドル台がついていました。ガソリンの暫定税率も復活してレギュラー小売価格が170円ぐらいになってます。恐ろしい話です。
原油高騰の影響は至る所に及んでいて、その辺の事情を語るのは大手メディアに譲るとして、ここでは外大生にとって非常に密接な関係のある航空運賃に対する影響を考えてみたいと思います。
外大生にとって学習言語の話されている国を訪れることは、趣味に分類される旅行と言うよりもむしろ研修に近いのではないかと思います。なので渡航費は贅沢費ではなく学費に分類した方が実態を反映している気がします。
で、その渡航費のほとんどを占める航空運賃が原油高騰のあおりを受けてドカドカ上昇しています。これは「燃油サーチャージ」として価格に反映されているのですが、チケット発券日ベースで約半年前から3ヶ月間の市場価格の平均値を反映してその都度改訂されます。果たしてこの上昇の度合いが果たして適正なのかどうか気になったので調べてみました。
そもそも航空機が飛ぶためには燃料が必要で、これには主に灯油(ケロシン)を精製して作ったジェット燃料を用います。ジェット燃料は灯油から作られ、灯油は原油から作られるので、原油価格が高騰すればジェット燃料も高騰し、燃油サーチャージも引き上げられるわけですな。
燃油サーチャージの価格改定には各航空会社がガイドラインを発表していますのでそちらを参照していただくとして、ほとんどの航空会社が
米国エネルギー省の発表しているシンガポールケロシンの価格をその基準としています。(Kerosene-Type Jet FuelからSingapore参照)
5/20の価格は387.12セントとあります。これは1ガロンあたり387.12セントの価格であることを意味します。1バレル=42ガロンなので、
387.12×42÷100=162.59(ドル/バレル)
5/20時点でシンガポールケロシンの価格は1バレルあたり162.59ドルということが分かります。
1バレルは約159リットルで、1ドル=104円で計算すると
162.59÷159×104=106.35(円/L)
5/20時点でシンガポールケロシンの価格は1リットルあたり106.35円ということが分かります。
これを踏まえた上で8月に搭乗予定のユナイテッド航空のチケットでシミュレーションしてみます。
成田からサンフランシスコへはボーイング747-400が、サンフランシスコからメキシコシティまではエアバスA320が就航しています。それぞれの機体の最大の燃料積載容量と最大航続距離から1キロあたりの消費燃料を求めます。
B747-400
230,000÷13,600=16.91(L/km)
A320
23,860÷5,700=4.19(L/km)
成田-サンフランシスコ間の距離は8,187km、サンフランシスコ-メキシコシティ間は3,014kmなのでそれぞれの消費燃料に航続距離をかけると
B747-400 成田-サンフランシスコ
16.91×8,187=138,456.62(L)
A320 サンフランシスコ-メキシコシティ
4.19×3,014=12616.50(L)
これをそれぞれの最大乗客数で割ります。
B747-400 成田-サンフランシスコ
138,456.62÷570=242.91(L/人)
A320 サンフランシスコ-メキシコシティ
12616.50÷150=84.11(L/人)
242.91+84.11=327.02(L/人)
つまり成田からメキシコシティまで満席の状態で飛べば片道で一人当たり327.02リットルのジェット燃料を消費することになるだろうという理論値です。成田-メキシコシティ間の航続距離11,201kmを327.02Lで割ると34.25km/Lとなり燃費が求まります。燃料の種類が違うので単純には比べられませんがハイブリッド自動車より高い燃費性能ですね。
先に求めた327.02リットルを2倍した物に先ほど求めたシンガポールケロシンの1リットルあたりの価格をかければ、往復1人当たりのシンガポールケロシンの価格が分かります。
106.35×327.02×2=69,555.35(円)
航空運賃の支払内訳についてはeチケットの控えに書いてあるのでそれを参照します。(今どきはeチケットなんて方式に変わって便利ですなぁ)
ROE:適用為替レート YQ:燃油サーチャージ XD:メキシコ国際線出国税 UK:メキシコツーリズム税 XY:米国入国審査料(2回)XA:米国動植物検疫審査料(2回) YC:米国税関審査料 AY:米国航空保安料金(2回) XFSFO:サンフランシスコ国際空港空港使用税
5月に発券すれば日本-アメリカ本土(北米)間の燃油サーチャージは片道17,000円なので往復で34,000円です。上の例では去年の年末に発券したので往復27,600円が適用されています。
去年の年末発券時のシンガポールケロシンの価格を計算してみたところ1リットルあたり71.43円で、成田-メキシコシティ往復一人当たり燃料使用量の654.03リットルをこれにかけると46,715.21円になります。この額の航空運賃に占める割合は
46,715.21÷(125,000+27600)=30.6(%)
となります。
航空会社の一般的なコストモデルでは燃料代の航空運賃に占める割合は30%ほどなのでこれは妥当な額でしょう。しかし現在のシンガポールケロシンの額で計算すると
69,555.35÷(125,000+27600)=45.6(%)
となるのでこれではおそらくペイしてないと思われます。さらに今後も燃料費は高騰する目算が強いので、ますます航空運賃に占める燃料費の割合は上がっていくことになるでしょう。
格安航空券の購入の際に燃油サーチャージを別途とられることを考慮に入れていなかった人が「不当な価格表示だ!」と憤る気持ちも分かるのですが、こうしてつぶさに見ていくと航空会社も旅行社も責める気にはなれませんね。