社会人学生の遅れてきた学習意欲

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エレンディラ

2008年12月27日 | 読書メモ




『エレンディラ』
作者:Gabriel García Márquez(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
訳者:鼓直、木村榮一
出版社:ちくま文庫
出版年:1988/12/01

コロンビアの作家ガルシア=マルケスの"La increíble y triste historia de la cándida Eréndira y de su abuela desalmada"(ナイーブなエレンディラと残酷な祖母の信じがたく悲惨な話)を読みました。

話のはじめの方でエレンディラの失火が原因で祖母と暮らしていた屋敷が全焼してしまい、祖母はその損害額を孫娘のエレンディラに売春させて回収するというなんとも救いようのない話です。

悪辣な祖母の手から離れて生活できるチャンスを何度も手にする(実際に修道院の尼僧に拉致され祖母と引き離される)エレンディラですが、その度に自分に売春を強要する祖母のもとに戻って「私にはおばあちゃんしかいないの」と安堵にも似た感情を抱いている辺りは当事者以外の我々には不可解にしか映りません。

ガルシア=マルケスと言えばすぐに連想されるのが魔術的レアリズムです。この話の中ではそれほど頻繁に使用されているわけではありませんが、突然何の説明事もなくさも当たり前のようにそれがポッと提示されるので、疑問を感じるわけでもなく話の進行とともに自然と入り込んでくるところがさすがだなと思います。

「エレンディラ」はどうやら実際の話をもとにして書かれたようで、なるほど地球の裏側のコロンビアなんて麻薬汚染の殺人大国だからこんな極悪非道(desalmada)なババァがいてもおかしくはないわな、と思うのはちょっと早い。ちょうど日付で言えば一昨日、和歌山の家裁でこんな判決がありました。

中3娘に売春強要の母親に懲役3年6月 「許し難い犯行」と裁判官

「エレンディラ」の場合は祖母と孫の間での売春の強要でしたがこちらは母と娘の間ですから親族関係で言えばもっと近い関係に当たります。さらに「エレンディラ」では売春は火災を起こしたことに対する賠償というそれなりの理由がありましたが、こちらの場合は自分のパチンコ代を稼がせるために売春を強要していたというのだから恐れ入ります。

何より不可解なのが「自分たちの遊興費のために娘の気持ちを踏みにじった許し難い犯行」と裁判官は述べているのに求刑懲役5年が懲役3年6月に30%引きされていることです。

自分の娘を女郎屋に売ったりするのは昔実際によくあったようですが飢饉や生活苦でやむにやまれずというのが実態でしょう。それに比べてパチンコ代を稼がせる目的で嬉々として娘に売春を強要する親…

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