この間の俳句会の兼題が「葛嵐」だったのでちょっと考えてみました。
葛嵐だなんてとても響きのいい季語ですね、秋の季語ですが、葛の葉っぱが風におののいている様が特徴的にとらえられています。
雲走りこころざわつく葛嵐
近頃スランプです、私の句はおいといてメンバーの一人が大変良い句を詠んでいました、人の句だから勝手に載せるわけには行かないので失礼しますが参加したかたがた皆さんに選ばれていました。
これは葛の花です、とても綺麗な花ですね、
『葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり』
民俗学者折口信夫が民族採訪旅行に出かけたときの歌だそうです、
葛は古来から人の生活と深くかかわってきたようです、その茎は繊維として葛布を織り着物とされたし、つるは縄や網の役目をしていた、それからよく知られているところではその根っこをくず粉にして利用してきました。また葛の葉や茎は牛や馬の良い餌にもなっていたそうです、今では見向きもされていませんが、、、。
『恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉』
裏が見える葛の葉と恨み葛の葉をかけたものですね
風が吹くとざわざわゆれて白い葉の裏を見せる葛の葉っぱ、これが恨み葛の葉の正体です。
「葛の葉子別れ」という題で神楽などで演じられていますが大阪の葛の葉稲荷神社の伝説が芸能化され各地に伝わったものだそうです。
若者に助けられた狐がクズノハという若い女性に化け、若者の妻になる。そして一人の子をもうける。ある日、夫が植えた菊の香りにうっとりとして狐の姿を現してしまう。正体を知られたクズノハは子供を残して信太の森(葛がたくさん生い茂り、狐が多いことで知られている)に帰ってゆく。そのとき、障子にこの歌をしたためていくのです。
「花と香りと女のくらし」山本玲子著より引用しました。
葛を見る目も少しは違ったものになるでしょうか?