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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

紺野ぶるま

2021年06月17日 | 学年だよりなど
1学年だより「紺野ぶるま」


 やる気を出したかったら、まず初めてみる。いやでも始める。ほんとにいやなら……、しょうがないかな。ただし、今のみなさんのイヤは、「食わず嫌い」の可能性が高いのも事実だ。
 自分には何が合っていて、何が合っていないのか。
 やってみないことには、わからない。ただし、この世の全てをやってみることは不可能だ。
 自分が置かれた環境のなかで、たまたま出合ったもの、人から薦められたもの、ちょっと興味をもったものに、とりあえず食いついてみることは、自分の可能性を広げる。
 何かをやりはじめてみると、世の中の見え方が変わってくる。
 お笑い芸人の紺野ぶるまさんが、本気で「R1とらなきゃ」と思ったのは、29歳の時だ。
 ぶるまさんは高校を中退している。「ふつうの」高校生活を送ることに耐えられなかった。
 中退して自由になろう、ギャルの格好が思う存分できる、バイトもできる、何より毎日教室の机に向かわなくてすむ……。しかし、学校を辞めて自由を感じたのは、ほんの数日だった。
 芸能人を目指すことにし、モデルの卵として事務所に登録する。しかしレッスン代をとられるばかりで仕事は回ってこない。期せずして持病が再発し入院することになる。そして、病院のベッドで見たお笑い番組のくだらなさに心をうたれた。そうだ芸人になろう……。
 すぐに養成所に入る。ライブに出させてもらい、ネタを書く毎日に、初めて充実感を覚えた。


~ しかし2016年の時点で29歳。なかなかいい歳である。このころ「どんなお題でもちんこで謎かけする」という特技で少しだけ深夜番組に出させてもらっていたが、どんなに頑張ってもギリギリ食えないくらいの給料で、内容的にゴールデンへの進出が難しい。
 ちんこって言っても売れない自分、現場に行けばいままで会ったことのないような猛者ぞろいで到底勝ち上がれる気がしない。
 周りの友人はみんな結婚して子供が3人いたりする。就職した友人は主任になっている。いつの間にこんなに時間が経ってしまったんだろう。
「辞めたいとかじゃなくて、辞めないといけないよなあ。才能ないんだもん」
 ここから就職できるんだろうか。明日ハローワークに行こう。スーツを買って、それから医療事務の資格を取ろう。資料請求のメールをした深夜のことだった。そろそろ眠ろうかと思ったが、呼吸が浅い。どうやって眠っていたか思い出せなくなっている。
 そもそもなんのために睡眠をとるんだっけ? 私はこれから何のためにご飯を食べ、何のために生きていくんだろう。このままだと息ができなくなる気がした。
「私、お笑いがないと消えちゃう」   (紺野ぶるま『「中退女子」の生き方』廣済堂出版) ~


 高校中退後、やっとたどりついたお笑いの道。しかし、売れない日々が続く。
 芸人を辞める選択肢を本気で考えたとき、それは自分が自分でなくなることだと気がつく。
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「やる気」を出す

2021年06月14日 | 学年だよりなど
1学年だより 「やる気」を出す


 勉強のモチベーションをあげるには、どうすればいいか。
 答えははっきりしている。勉強すればいい。勉強するしかない、といった方がいいかもしれない。
 運動のモチベーションをあげるには、運動すればいい。科学的にゆるがない事実だ。
 モチベーションをあげるために休憩したり、気分転換するのは、逆方向にある。
 気分転換したら、そっちの方が楽しいから遊び続けてしまう。
 残念ながら、人間はそのようにできている。
 やる気は待っていても出ない。待っている人は、一生待っているだけで終わってしまう。


~行動をしてはじめてやる気は出てきます。
 なので、家に帰ってきた中学生高校生がやるべきことはひとつです。
 「休憩したら勉強しよう」という状況を作らないことです。
 いや、切り替えがちゃんとできる人の場合はそれでもいいです。
 切り替えができない人の場合、帰宅したら即座にそのままデスクに向かうことです。
 制服を着たままでも構わないんじゃないですか。本当に勉強する気があるなら。
 そして数学の問題を1問だけ解いてください。1問で構いません。
 古文の問題を1問だけ解いてください。1問やったら休憩してもいいですから。
 1問やって2問目に向かってもいいなと思ったら、2問目にも進んでください。
 2問目が終わって、もう1問解こうかと思ったら、そうしてください。
 べたーーーーーーっと休憩してしまうと、もうあなたは動けません。
 休憩って、どうせ22時とか23時になったらスマホ片手に休憩しちゃうんですからね。
 そしてそのまま朝まで休憩するんでしょ。
 学校から帰ってすぐに休憩する必要なんてないんじゃないでしょうか。
 切り替えが、電灯のスイッチみたいに見事にできるのであれば別ですが。
 「やる気」を出したいと思うなら、行動するよりほかないのです。
 勉強のやる気を出したいなら、勉強をまずは始めるしかないんです。
 筋トレのやる気を出したいなら、筋トレをまずは始めるしかないのです。
          (木村達哉「メルマガKIMUTATSU JOURNAL」第183号)~


 始めてしまえば、人はそれを続けようとする。
 ビジネスで成功した人も、スポーツで記録を達成した人も、人々の心を動かす作品をつくりあげたアーティストも、最初は自分で小さなことを一つ初めたところからスタートしている。
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自分の感受性くらい

2021年06月10日 | 学年だよりなど
1学年だより「自分の感受性くらい」


 たくましい幹を育て、いっぱいに葉を広げ、花を咲かせ、実をならせるには、肥えた土が必要だ。
 勉強や部活にがんばる、学校生活の中で仲間と切磋琢磨する、家族を大事にし、社会における他人との付き合い方を覚えていく……。
 これらは、自分という土を肥えたものにしていくための大事な仕事だ。


~ 自分の感受性くらい      茨城のり子

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて

 気難しくなってきたのを
 友人のせいにはするな
 しなやかさを失ったのはどちらなのか

 苛立つのを
 近親のせいにはするな
 なにもかも下手だったのはわたくし

 初心消えかかるのを
 暮らしのせいにはするな
 そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 駄目なことの一切を
 時代のせいにはするな
 わずかに光る尊厳の放棄

 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ                ~


 自分の心は、自分で「水やり」しないと、乾いてしまう。
 自分の心に、どうやって水をあげればいいか。それは「汗と涙」だ。
 「汗をかく」。
 一生懸命やること。自分の限界に挑戦すること。他人のための何かをすること。
 「涙を流す」。
 他人の心の痛みを思いやること、負けて悔しい思いをすること。
 本を読み、映画を観、いい音楽を聴き、心打たれて涙を流すこと。
 自分を肥えた土壌にするために、たっぷりの「水やり」をしよう。
 花を咲かせ実をつけることを焦る必要はまったくない。
 早熟ではやばやと結果を出して悠々と余生を送るより、もがき苦しんでなかなかうまくいかなくて、でもいつか大輪の花を咲かせる大器晩成の人生は魅力的だ。生きがいがある。
 では、栄養を与え、光を当て続けると、花は咲きまくるのだろうか。
 種類にもよるが、光を当て続けることで、開花しなくなる植物もある。
 菊の花は、光を当て続けると花が咲かないという。
 光が当たらない時間は、当たっている時間と同じくらい大事なのだ。
 光があたらない時期に、どれだけ「水やり」できるかで、未来の自分が変わる。

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アメリカン・ユートピア

2021年06月07日 | 学年だよりなど
1学年だより「アメリカン・ユートピア」


 1980年代、アメリカで人気のロックバンド「トーキング・ヘッズ」のギターとボーカルを担当したデイヴィッド・バーンは、ソロ活動も行い、87年の映画「ラストエンペラー」の音楽で、坂本龍一らとともにグラミー賞やアカデミー賞作曲賞を受賞した。2018年、久しぶりに発表されたソロアルバム「American Utopia」もグラミー賞の候補となる。翌年、このアルバムでのワールドツアーを行った後に舞台化し、ブロードウェイで上演された。大評判になったこの舞台の魅力をあますところなく伝えてくれるのが、スパイク・リー監督の映画「アメリカン・ユートピア」だ。


~ ステージが原っぱみたいだ。
 このステージには伴奏者然とした人がいない。皆がそれぞれのできることをできることの限界を超えてでもやっている。伴奏ではなく、それぞれが主奏者に感じられる。自分のために奏でることがみんなのためになる、そのように感じられる。開放感と結束感の両方がある。統率がとれているとか一体感があるとか団結力による絆が感じられるとか、そういうことではない。
 このステージの主人公は音楽そのものだ。作者がデイヴィッド・バーンだ、というだけだ。命令系統がしっかりしているとか指示が的確とか、プロダクションがタイトとか、そんなことをどうでもいいと思わせる。
 爽快だ。頭でっかちと思っていたデイヴィッド・バーンが、心をゆるして、しかも自分のやりたいことを期待と予想を超えて現実のものにしてくれる人たちと出会えた、そう思う。(湯浅学「アメリカン・ユートピア」パンフレットより) ~


 当日、会場を訪れた人は、何もおいてないステージにまず驚くのではないだろうか。
 ドラムセットもピアノもアンプもおいてない。ダークグレイのスーツに身を包んだ、裸足のデイヴィット・バーンが、脳の模型を手にして登場する。そして語り始める。
「赤ん坊の神経細胞のつながりは、大人のそれよりも多く、成長することで減るというデータがある。人間はどんどん愚かになっていくのだろうか? 大人はどんなつながりを持つのだろう……」
 伴奏が始まる。ダンサーが登場する。楽器をかかえたメンバーが入ってくる。デイヴィッド・バーンが歌う――。気づくと12人のメンバー全員が歌い、全員が踊っている。
 歌う、奏でる、踊ることの境がこれほどないステージは初めて見た。
 さすが本場の観客も、楽しみ方を心得ている。曲が終わると躊躇なくスタンディングオベーションをする。ノリノリの曲が続くと、そのまま立って体を揺する。バラードが始まるとすっと座って聞き入り、曲のエンディングの余韻を聴いてから拍手喝采する。ライブとはステージと客席とが一体となって作っていく物なのだ。
 そんな本場のショーが、さいたま新都心に行くと高校生1000円!で体験できるとは。
 (ちなみに、ものすごい英語の勉強になると思う。)
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言葉化

2021年06月03日 | 学年だよりなど
1学年だより「言葉化」


 二つやろうとすると、「どっちつかず」「あぶはち取らず」になってしまうことはある。
 AをしているときにBを考え、Bの最中にAを意識して、どっちも中途半端になるパターンだ。
 授業中に内職しても効果がないのと構造的には同じだろう。
 A・B二つは大変だからとAにしぼった場合、しぼった後に思ったほど伸びない例も多い。
 そもそもAにもBにも、かける労力が足りていないパターンだ。
 この場合、しぼる以前に、ものごとに取り組む姿勢を変える必要がある。
 A・B二つやっている人が、Aをやるときに100パーセントのパフォーマンスを行った場合、Aだけの人がだらだらとやっているのよりも良い結果が出ることに何の不思議もない。
 切り替え力、そして集中力だ。
 もう一つ、福岡選手が大事にしていたのは、「言葉にする力」だという。


~「小学校の頃から、試合が終わった後は、父と必ずその映像を見返して、“このプレーをなぜやったのか?”というのを問われていました。怒られるでもなく冷静に。どう考えてなぜ選択したのかを、ちゃんと言葉にする。ラグビーに関しては、独学というか、自らプレーをしながら学んでいった感覚があります。その代わり、どんなプレーでも、その判断を振り返り、反省し、次に生かすようにというのをやってきました」
―― プレーを説明する。徹底して。やってみるとわかるが、大人でもなかなか難しい。第一、ラグビーという競技は、全速力で走ってステップを切り、あるいはパスやキックを選択して、ぶつかり合うようなスポーツだ。ボールを持ってから理屈をこねていては、たちどころに倒されてしまう気もする。果たして。説明、できるものでしょうか?
「難しいことだとは思います。感覚だけでプレーをしていると、なかなか言葉にはなりませんから。もちろん、そのプレーの瞬間に、そこまで考えているかというと、そうではないかもしれない。けれど、あとからでも“なぜこの判断をしたのか”を自分の言葉で説明できるようにする。そうすれば、ひとつのプレーを次に生かすことができます。すごく意識していましたね」
―― スポーツに言葉は必要ですね。
「はい。言葉にするのはとても大事だと思います。ひとつひとつのプレーを成長に繋げていくためには。僕の場合は、そのべースがあったというのが大きいと思います」 ~


 言葉にすることで初めて人は物事を認識できる。言葉にしないでおくと、たとえ試合で良いプレーができたとしても、一回こっきりになってしまう。これはスポーツに限らず、ほかの習い事でも、もちろん勉強にもあてはまる。というか、現象を言葉で抽象化する作業が学問だ。
 トップアスリートが物事に取り組む姿勢は、大切なことを教えてくれる。
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文武両道

2021年06月01日 | 学年だよりなど
1学年だより「文武両道」


3年間部活動を続け見事な成果をあげつつ、同時に目標としていた難関大学に合格していった多くの先輩達がいる。彼らは、入学の時点ですでに優秀な選手だった、優秀な成績だったというわけではない。ときに両立に苦労しながらも、地道に三年間取り組んだ結果として、その持っている能力を開花させることができたのだ。
 ラグビー日本代表として活躍し、トップリーグの今シーズンMVPにも選ばれた福岡堅樹選手は、この2月に順天堂大学の医学部に合格した。とんでもないレベルの「文武両道」だ。
 福岡選手は「勉強が好きですか?」と問われ、こう答えている(「Tarzan6月10日号」)。


~ 「いや。べつにそんな好きじゃないですよ(笑)。受験勉強は目標を達成するための手段になるものですね。これから医学を学んでいくうえでは、楽しかったり、将来に生かせたり、好きな部分も増えてくるとは思うんですけど。受験はあくまで、そのためのステップというか。だから割り切ってやってましたね」
―― 具体的にはどのように勉強を?
「コロナの自粛期間がちょうどいいタイミングになったと思います。去年の夏くらいからは、(拠点の群馬から)東京の予備校にも通うことにして。チームのトレーニングもあったので、月曜は東京の予備校、火曜は群馬でトレーニング、水曜はまた東京で予備校で、木曜はトレーニングというのを繰り返していましたね。かなりハードだったと思います」
―― よく続けられました。
「トレーニングを切り替えのタイミングとして生かせたのが大きいかもしれません。ずっと勉強だけをしていると、どこかで集中力が切れてしまう。僕の場合はそれを戻すのが、なかなか難しいので。そういう意味では、練習でいったん別の方向に集中を切り替える。そして、改めて新しい気持ちで勉強に集中する。集中力を使い回すというか、リスタートを繰り返すというか。運動と勉強というのが、交互にあったから、どちらもうまくいくのだと思います」 ~


~ ラグビーを始めたのは5歳のときだった。ラガーマンだった父親に連れられて地元のチームに入った。他に、水泳やピアノにも通い、多いときは五つの習い事にいっていたという。 ~


~ 「ひとつのことをやっているとき、ほかのことを考えたりはしないです。例えばピアノを弾いてるときに勉強のことを考えたりとか、そういうのは全然。基本的にしません。同時にいろんなことは、僕にはできないですね。ひとつずつ、その時ごとに集中する。逆に言えば、いろいろあったから集中できたとも言えるかもしれない。ラグビーを見るのも好きですが、ずっと見続けるのは得意じゃないし、苦手な科目は特にないけど、ずっと勉強したりもできないので。ふと集中が切れたときに、別のことに目を向けていく。その切り替えは意識してきました」 ~


 他に目を向けるべきものがあるからこそ、切り替えが求められ、一瞬一瞬に集中できるのだ。
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