1学年だより「紺野ぶるま」
やる気を出したかったら、まず初めてみる。いやでも始める。ほんとにいやなら……、しょうがないかな。ただし、今のみなさんのイヤは、「食わず嫌い」の可能性が高いのも事実だ。
自分には何が合っていて、何が合っていないのか。
やってみないことには、わからない。ただし、この世の全てをやってみることは不可能だ。
自分が置かれた環境のなかで、たまたま出合ったもの、人から薦められたもの、ちょっと興味をもったものに、とりあえず食いついてみることは、自分の可能性を広げる。
何かをやりはじめてみると、世の中の見え方が変わってくる。
お笑い芸人の紺野ぶるまさんが、本気で「R1とらなきゃ」と思ったのは、29歳の時だ。
ぶるまさんは高校を中退している。「ふつうの」高校生活を送ることに耐えられなかった。
中退して自由になろう、ギャルの格好が思う存分できる、バイトもできる、何より毎日教室の机に向かわなくてすむ……。しかし、学校を辞めて自由を感じたのは、ほんの数日だった。
芸能人を目指すことにし、モデルの卵として事務所に登録する。しかしレッスン代をとられるばかりで仕事は回ってこない。期せずして持病が再発し入院することになる。そして、病院のベッドで見たお笑い番組のくだらなさに心をうたれた。そうだ芸人になろう……。
すぐに養成所に入る。ライブに出させてもらい、ネタを書く毎日に、初めて充実感を覚えた。
~ しかし2016年の時点で29歳。なかなかいい歳である。このころ「どんなお題でもちんこで謎かけする」という特技で少しだけ深夜番組に出させてもらっていたが、どんなに頑張ってもギリギリ食えないくらいの給料で、内容的にゴールデンへの進出が難しい。
ちんこって言っても売れない自分、現場に行けばいままで会ったことのないような猛者ぞろいで到底勝ち上がれる気がしない。
周りの友人はみんな結婚して子供が3人いたりする。就職した友人は主任になっている。いつの間にこんなに時間が経ってしまったんだろう。
「辞めたいとかじゃなくて、辞めないといけないよなあ。才能ないんだもん」
ここから就職できるんだろうか。明日ハローワークに行こう。スーツを買って、それから医療事務の資格を取ろう。資料請求のメールをした深夜のことだった。そろそろ眠ろうかと思ったが、呼吸が浅い。どうやって眠っていたか思い出せなくなっている。
そもそもなんのために睡眠をとるんだっけ? 私はこれから何のためにご飯を食べ、何のために生きていくんだろう。このままだと息ができなくなる気がした。
「私、お笑いがないと消えちゃう」 (紺野ぶるま『「中退女子」の生き方』廣済堂出版) ~
高校中退後、やっとたどりついたお笑いの道。しかし、売れない日々が続く。
芸人を辞める選択肢を本気で考えたとき、それは自分が自分でなくなることだと気がつく。
やる気を出したかったら、まず初めてみる。いやでも始める。ほんとにいやなら……、しょうがないかな。ただし、今のみなさんのイヤは、「食わず嫌い」の可能性が高いのも事実だ。
自分には何が合っていて、何が合っていないのか。
やってみないことには、わからない。ただし、この世の全てをやってみることは不可能だ。
自分が置かれた環境のなかで、たまたま出合ったもの、人から薦められたもの、ちょっと興味をもったものに、とりあえず食いついてみることは、自分の可能性を広げる。
何かをやりはじめてみると、世の中の見え方が変わってくる。
お笑い芸人の紺野ぶるまさんが、本気で「R1とらなきゃ」と思ったのは、29歳の時だ。
ぶるまさんは高校を中退している。「ふつうの」高校生活を送ることに耐えられなかった。
中退して自由になろう、ギャルの格好が思う存分できる、バイトもできる、何より毎日教室の机に向かわなくてすむ……。しかし、学校を辞めて自由を感じたのは、ほんの数日だった。
芸能人を目指すことにし、モデルの卵として事務所に登録する。しかしレッスン代をとられるばかりで仕事は回ってこない。期せずして持病が再発し入院することになる。そして、病院のベッドで見たお笑い番組のくだらなさに心をうたれた。そうだ芸人になろう……。
すぐに養成所に入る。ライブに出させてもらい、ネタを書く毎日に、初めて充実感を覚えた。
~ しかし2016年の時点で29歳。なかなかいい歳である。このころ「どんなお題でもちんこで謎かけする」という特技で少しだけ深夜番組に出させてもらっていたが、どんなに頑張ってもギリギリ食えないくらいの給料で、内容的にゴールデンへの進出が難しい。
ちんこって言っても売れない自分、現場に行けばいままで会ったことのないような猛者ぞろいで到底勝ち上がれる気がしない。
周りの友人はみんな結婚して子供が3人いたりする。就職した友人は主任になっている。いつの間にこんなに時間が経ってしまったんだろう。
「辞めたいとかじゃなくて、辞めないといけないよなあ。才能ないんだもん」
ここから就職できるんだろうか。明日ハローワークに行こう。スーツを買って、それから医療事務の資格を取ろう。資料請求のメールをした深夜のことだった。そろそろ眠ろうかと思ったが、呼吸が浅い。どうやって眠っていたか思い出せなくなっている。
そもそもなんのために睡眠をとるんだっけ? 私はこれから何のためにご飯を食べ、何のために生きていくんだろう。このままだと息ができなくなる気がした。
「私、お笑いがないと消えちゃう」 (紺野ぶるま『「中退女子」の生き方』廣済堂出版) ~
高校中退後、やっとたどりついたお笑いの道。しかし、売れない日々が続く。
芸人を辞める選択肢を本気で考えたとき、それは自分が自分でなくなることだと気がつく。