水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「間」の感覚 最後の段落

2013年02月01日 | 国語のお勉強

 このように、目に見えない形で内外の区別が成立するためには、鳥居や関守石の意味についての〈 共通の理解 〉を前提とする。その共通の理解を持った集団、ないしは共同体が日本人にとっては「身内」であり「仲間」であって、その外にいる者は「よそ者」ということになる。日本の家がしばしば「うち」と呼ばれるように、家族は「身内」の代表的なものであるが、時と場合によっては、それは地域社会であったり職場の組織であったりする。サラリーマンが「うちの会社」と言うときは、会社全体が「身内」である。つまり「身内」は、ある関係性の中で成立するもので、〈 そのことが、日本人の行動様式を外国人にわかりにくいものにしている 〉と言ってよいであろう。関係性は時によって変わるものだからである。

Q「共通の理解」とあるが、「鳥居」についてはどのような「共通の理解」が存在するのか。20字以内で具体的に記せ。
A 鳥居の内側は聖なる空間であるという理解。

Q「そのことが、日本人の行動様式を外国人にわかりにくいものにしている」とあるが、「わかりにく」さの最も大きな要因を20字以内で説明せよ。
A  「身内」の指す範囲が一定ではないこと。


 空間的な内部を意味する「うち」という言葉が「身内」のように人間どうしの関係性を意味したり、あるいは「朝のうちに仕事をする」という具合に、時間的広がりにも用いられたりすることから明らかなように、日本人にとっては人間社会も空間も時間も〈 関係性 〉という共通した編み目の中に組み入れられている。同じ一つの部屋が、外から人が来れば客間になり、夜になれば寝室となるというのは、住居の空間もまた、人間や時間との関係で意味を変えることを物語っているであろう。

Q 「関係性」とはどういうものか。30字以内で述べよ。
A 時と場合によって変化する、自分と対象との心理的な距離感。


 日本人は、そのような関係性の広がりを「間」という言葉で呼んだ。「間」とは「広間」「客間」のように空間の広がりでもあり、「昼間」「晴れ間」のように時間的広がりでもあり、また「仲間」のように人間関係の広がりでもある。読み方はさまざまだが、〈 「空間」も「人間」も、そして「世間」も、いずれも「間」という文字を含んでいるのは、決して偶然ではない。 〉そのような関係、つまり「間合い」を正しく見定めることが、日本人の行動様式の大きな原理である。その計測を誤ると「間が悪い」ことになり、「間違い」を犯すことになる。現在、我々の生活様式は大きく変わりつつあるとはいえ、この〈 「間」の感覚 〉はなお日本人の間に生き続けており、住居の構造や住まい方をも規定している。それはおそらく、日本人の美意識や倫理とも深く結びついているもので、その本質と構造を解明することが日本の文化を理解する大きな鍵となるであろう。

Q 「「空間」も「人間」も、そして「世間」も、いずれも「間」という文字を含んでいるのは、決して偶然ではない」のはなぜか。その理由にあたる部分を「~から」につながる形の45字以内で抜き出せ。
A 日本人にとっては人間社会も空間も時間も関係性という共通した編み目の中に組み入れられている(から)。

Q 「「間」の感覚」とはどのような感覚か。30字以内で説明せよ。
A たえず自分と対象との関係性を見定めて行動しようとする感覚。
 (別解)その時々の状況に応じて対象との距離感を見定めようとする感覚。


Q 峰岸みなみさんは、誰に対して謝罪したのか。
A AKBメンバー、そのファン、関係者、世間に対して。

Q 一言で彼女のどういう存在といえるか。
A 「身内」

Q 彼女の今回の謝罪が「間が悪い」ものであるとしたら、どういう点か。
A 様々な現場で体罰が問題になっている現在、「身内」以外から見れば体罰としか思えない丸坊主姿を公の場にさらしている点。

Q 「身内」以外の人が見ると、不快にも感じる場合があるのはのはなぜか。
A ある閉鎖的な集団内の規律にすぎないものが公の場で明らかにされることで、それを押しつけられているかのような気持ちになるから。

Q 彼女にとって「世間」とはどういうものか、またその問題点とは何か。
A 自分の気持ちをくみ取ってくれる人の集団が彼女のとっての世間であり、彼女のとった行動を批判的に見る人が存在することは想定されていない。本人というよりも、周囲の大人が、常識的なふるまいを教えさとしてあげるべきだった。ただハラキリやエンコツメまでエスカレートしなかったことはよしとすべきである。

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