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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

プレイリスト

2022年12月21日 | 学年だよりなど
2学年だより「プレイリスト」




 アメリカの天文学者カール・セーガンは、NASAの地球外生命体探索計画のリーダーだった。
 探索のために、無人の探査船ボイジャーを打ち上げ、その中には、異星人に向けたメッセージを搭載した。知能をもつ異星人がそれを発見したなら、何らかの形で解読するに違いないと想定し、地球上の様々な音を録音し、レコードにしたのだ。
 波や風の音、鳥や動物たちの鳴き声、地球上の55の言語による挨拶、そして様々な音楽――バッハ、モーツァルト、ベートーベンにはじまり世界各国の民族音楽。ちなみに日本の音としては尺八奏者山口五郎の「鶴の巣籠り」が収められた。
 これらは、宇宙人向けのプレイリストだった。
 福岡伸一先生の青山学院大学の同僚に、日本の伝統音楽を研究するマイケル・クシェル准教授がいる。




~ クシェル先生は、大学では新入生向けに、文化としての音楽の講義もしている。そこでは学生に“プレイリスト”作成の実習を課しているという。パーソナル、ナショナル、グローバルなプレイリストを作らせて、異なるレベルで後世伝えたい曲目を考えさせるのだ。
 その講義で、グローバルなプレイリストの見本として例示するのが、先に記したボイジャーのゴールデン・レコードなんだそう。地球外生命体にもわかる普遍的なプレイリスト。
 そこでクシェル先生はとても面白い米国のジョークを教えてくれた。それは……
 ボイジャーは永遠とも思える孤独な飛行を続けた。とうとうメッセージは異星人のもとに届いた。その証拠に、返信が地球にかえってきたのだ。それは、たった4つのワードからなっていた。“Send more Chuck Berry”(チャック・ベリーをもっと遅れ)
                 (福岡伸一「パンタレイ・パンタグロス」週刊文春連載)~




 最後のとこのジョークはたぶん、みなさんはわからないだろう。
 チャック・ベリーというミュージシャンのことを知らないだろうから。ロックの始祖的存在だ。
 彼がいなかったら、プレスリーもビートルズもいなかったと言われている。
 あいみょん「君はロックをきかない」も誕生しないことになる。
 みなさんなら、宇宙人向けのプレイリストを作りなさいと言われたら、どうするだろう?
 再来年、青学でこの講義を受ける人もいるかもしれない。
 きわめてパーソナルなプレイリストは作れるかも知れないが、それを人前に出せるか。
 仮に作成したとして、それをいざ発表するとなると、なにか気恥ずかしい思いを抱いてしまいそうな気がしないだろうか。
 その原因は、プレイリストの中身が、「ちょっとこれじゃ貧弱すぎてみっともないかな?」と思ってしまうところにありそうだ。
 プレイリストを作るには、そのためのネタがいる。宇宙人向けのプレイリストが、アニメの劇伴ばかりというわけにはいかない。
 知識や経験の蓄積がないと、作成は難しいのだ。

コメント
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