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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ハケンアニメ

2022年05月25日 | 学年だよりなど
2学年だより「ハケンアニメ」




 エガちゃんが特別CEOを務める代々木アニメーション学院は、全国に11校舎をかまえ、アニメ、エンタメ業界で活躍する卒業生を輩出している。
 中学校時代、声優になりたい、アニメーターになりたいと一度くらい考えたことのある若者は、どれくらいいるだろう。たぶん女子だと相当の比率ではないだろうか。
 ただし、そうは思ってみても、現実にその世界で食べていくことの難しさは、誰もが早い段階で気づく。代アニに入学して学ぼうとするだけでも、大きな決断がいることは間違いない。
 公開中の映画「ハケンアニメ」は、アニメ業界の一端を垣間見ることができて興味深い。
 主人公は新人のアニメ監督、斉藤瞳。吉岡里帆さんが演じている。
 斉藤瞳監督は、経済的に恵まれない家庭に育ち、国立大学卒業後に公務員となるが、アニメを作りたいとの思いが捨てられずに、大手の制作会社「トウケイ動画」に転職する。
 7年間の下積みを経て、はじめて監督としてまかされた作品が、「サウンドバック奏の石」(通称サバク)だった。しかも土曜の夕方17:00という、テレビで最もメジャーなアニメ枠だ。
 斉藤監督には夢があった。
 幼い頃、みんなが持っている魔法のステッキを買ってもらえなかった。
 自分は魔法少女にはなれない、なれるのはお金持ちでかわいい女の子だけだ、現実はアニメのように甘いものではない……と思っていた。そもそも電気代がもったいないからと、テレビを見させてもらえなかった。
 学生時代に初めて触れたアニメの世界に衝撃を受ける。
 ここには、わたしがいる。団地の片隅で友達とも遊べずにいる自分の居場所がある。
 こんな作品を子どものころ見ていたら、自分の人生はきっと違ったものになっていたはずだ……。
 そうだ、こんな作品を作りたい、そして届けたい、自分みたいな子どもに。
 ふくらみ続けていた思いが、今やっと叶おうとしている。
 自分の作品づくりに妥協できないのは言うまでもなかった。
 一方、会社は監督の思いだけを優先するわけにはいかない。
 そもそも予算があり、納期があり、そして視聴率をとり、グッズを売り上げなければならない。 一歩もゆずりたくない新人監督と、スタッフたちが対立する局面も当然生まれる。
 たとえば声優さんのアフレコ(未完成の動画を見ながら、声をいれていく)。
 監督がダメ出しをする。「すいません、ちがいます」「もっと抑えて入ってください」「ちがいます、○○はそんな言い方はしません」……。
 「できません……」泣き出した声優に、「どうして泣くんですか?」と監督は尋ねる。
 「どうして泣いたのか、気持ちを聞かせてください」
 さっきまでの演技指導は、追い詰めたというほど厳しいものではなかったはずだ。
 「あなたは今、泣いてすっきりしたかもしれませんが、泣かれたこちらは不愉快です。そのことをどう思いますか?」
 声優が顔をおおって飛び出していく。

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