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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ジグソーパズル(2)

2018年06月14日 | 学年だよりなど

  学年だより「ジグソーパズル(2)」


 主人公が、絶望的に強い敵と戦っている。
 武器を奪われ、仲間は人質になり、得意技も封じられ、完全に崖っぷちに追い込まれている。
 さすがのヒーローも、今度こそ本当にだめかもしれない … 。
 映画やマンガや小説で、そんな場面が数限りなく描かれてきた。
 絶対絶命のピンチに追い込まれたその瞬間、主人公の脳裏に、ある光景が浮かぶ。
 なんでもない一場面だ。
 一週間前、小さな女の子が手放してしまった風船が空に舞い上がっていく様子。
 幼いころ、おじいちゃんに習った洗濯物の干し方。
 三日前に食べたラーメン屋さんで、おやじさんが言った一言。
 そうだ! その手があった! 主人公の脳内に何かがスパークする … 。
 三日前や一週間前に何でもなかった、とるにたりないことが、今の瞬間の自分の窮地を救ってくれるヒントとなって立ち上がってくる。 
 「まさか、こんな意味があったとは」とみている方は驚いたり、膝を叩いたりする。
 作品のなかでのそれらのピースは、作者が巧妙にばらまいたものだ。
 フィクションではない実人生においても、何でもない日常の一ピースが、あとで重要な意味をもって立ち現れることがある。
 神様がこっそりと事前にばらまいてくれたとしか思えない。


 ~ 僕は40歳まではサラリーマンをしながらトレイルランニングのレースに参加していました。まとまった練習時間は週末しかとれないので、平日は昼休みの30分、終業時間から残業を始めるまでの20分という時間もムダにせず、周辺をダッシュしたり、階段を昇り降りしたりしていたので、短時間で集中するのは慣れています。プロトレイルランナーとなったいまも、全国各地で開催されるイベントやセミナー、取材でふだん忙しくしているので、移動先のちょっとした時間もうまく利用して、小さいピースをどんどん積み上げる。それが一番合理的なやり方だと思っています。
 仕事でも、毎日決まりきったルーティンワークばかりしていると、同じ作業の繰り返しに埋没してしまって、自分が本当に成長できているか実感できないという人も多いはず。
 でも、一つひとつの作業に意味を見出して、集中して取り組んでいれば、たとえメールを一通返信するだけでも、そこから信頼関係を築くことができます。資料作成も、会議も、上司への報告も、一つひとつに意味があって、自分はつねにステップアップしていくんだというイメージを持っていれば、頭を使わずただ「こなす」ことにはなりません。どんなに小さなことでも、毎回誠実に取り組むこと。パズルのピースが一つでも欠けていたら、目指すゴールには到達できないのです。 (鏑木毅『プロトレイルランナーに学ぶ やり遂げる技術』実務教育出版) ~


 自分のちょっとした経験や、誰かの何気ない一言が、「しておいてよかった」「聞いておいてよかった」と後々心から感謝できるものに変わる。
 私たちの日常は、そのような無数のピースを組み合わせて成り立っていく。

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