学年だより「脳は疲れない」
失恋の痛みを癒やすのは、新しい恋だ。
好きであった度合いが大きければ大きいほど、失った後のせつなさははかりしれない。
「オレにはアイツしかいないんだ!」と泣き叫びたくなる場合もある。
でも、生物学的に考えると、男女一組の関係性がその個体同士でしか成り立たないということは、あり得ない。人はAさんともBさんともCさんとも付き合い得る。
「運命の糸」と呼びたくなる事態は存在するが、その糸はあらゆる方面にのび、結びつくことが可能だ。人は、むだに大脳を発達させてしまった結果、人と人との出会いに過剰な物語をつくってしまう。自分にだけ特別な恋愛ストーリーが発生するかのように思ってしまうものだが、それは錯覚にすぎない。恋に破れた悲しみを癒やしたかったら、とっとと他の相手をさがせばいい。いつまでもふられた相手に執着してはいけない。
同様に、勉強の疲れは、勉強で解消するのが一番だ(ここから本題です)。
基本的に脳は疲れない。
脳が疲れるという事態は、そのまま生命体としての死につながる。
人間の脳は、何もしないでぼおっとしているときも、寝ているときも、休まず働き続けている。
だから、寝る前に解けない問題をインプットしておくと、寝ている間に脳が整理してくれて、翌朝すっきり解けることが多々あるのだ。
数学の勉強をしてて疲れを感じたときは、一回のびをして英語に切り替える。
とくに『ユメタン』のクイックレスポンスの練習などは、脳のリフレッシュに最高だ。
脳は疲れないが、同じ姿勢で座り続けていると血流が悪くなるのはたしかなので、立ち上がって歩き回るといい。
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糸井:なるほど。考えごとをして疲れを感じた時は、あれは脳が疲れているわけではない。だとしたら、「30分休憩して疲れを取って」という考え方をしないほうがいいですね。目の疲れだとか、同じ姿勢を取った疲れを補うことのほうが、実践的なわけだ。
池谷:はい。
糸井:じゃあ、姿勢を変えたり眼球を休ませたりするためには、動きながら考えるのって、すごくいいですか。
池谷:はい。実はぼく、それをよくやってるんですよ。まわりに「うるさい」って言われますが。
糸井:「脳は疲れない」と知るだけで、違う休息の方法が思い浮かぶ。
池谷:ぼくは、パソコンの前にいすぎて疲れたなぁと思う時には、 席を立って歩き回りながらも、同じことを考えつづけます。
糸井「わかります。いったん忘れるっていうのが、いちばんよくないんですよ。企画を考えている時なら、いったん忘れないで、考えたまま違うことをするのがいいと思う。ぼくの場合、トイレに行ったりするのですけど。経験則だけど、「考えつづけると、必ず答えが出る」と信じる と、いつもいい結果になる。 (池谷裕二・糸井重里『海馬/脳は疲れない』新潮文庫) ~
歩きながら、さっき行き詰まった数学の問題にもどってみると、補助線が浮かんでくる。