魅惑は婀娜なり
女郎花
多々 ありまして
惑溺したのです
いつの間に
多々 ありまして
情人 蟻の如く
なんのその
多々 ありまして
裏には付き物
止まり木が
多々 ありまして
哀れ不憫な 人でした
笑われても
知ってても言わず
笑い隠せた リツ子
あの夜の 涙
シネマは終わる
ラストの余韻
別れの始まり
行き着く結露
うつむく癖
上擦りの喋り
甘えのしぐさ
誰かに似てた顔
つれない二人
似過ぎてた二人
ただ それだけ
現実に疲れた蓑虫は
蝶になれなかった
死を恐れた道化は
生をも恐れた
歪んだ果実は避けた
見られるを避けた
阿婆擦れは知らない
阿婆擦れてるを知らない
一縷の言い訳を探し
堕落に意味を求める
詩人を目指す蓑虫は無邪気だ
今 何をしてるって
そう この文を書いている
夢があるってさ 柄にもなくね
くずれかけた壁に
一枚の聖母子
見詰める微笑
戯れるイエスとヨハネ
母性ただよう 一空間
遠くの鐘の音
黄昏時の憂愁
くすね色のセピア
天使の羽ばたき
バッハの調べ マタイ受難曲
響けオラトリオ 天使の悦び
マリアの捧げる慈愛 とわにあれ
・・・・黄昏て
愁いつのりて
紅葉もゆ・・・・
芭蕉は思う
・・・・旅に誘われるは 余の定め
春 三月
そぞろ神にいざなわれ
道祖神の招きにあい
みちのくへと旅ゆく芭蕉
・・・・荷は軽く 後ろ振り向きゃ浮世のにおい
・・・・前見りゃ 人なき山河かな
・・・・明日を知る我が身の厭わしさ
・・・・知らぬ我が身の楽しさよ
・・・・人知は知らぬが良い
・・・・知るほどに 愁い増す哀れさよ
目は怜悧に輝き
お下げのはっぴは、良く似合う
黄昏のなか、一人立ってるは
その子、多々良姫
万葉の宴から、いでし子か
古風な影を持ち
憧憬の眼差しには、いにしえが移り
過ぎし日を哀れんでか
彼方を見ては涙を流す
・・・・とわの日の
移ろいゆくは
人ごころ・・・・
その子、はたち
可憐なる、白い歌姫