グルベローヴァが歌う「ノルマ」を初めて聴いたのは13年前の東京文化会館で、このときは演奏会形式だった。歌が素晴らしかったので満足したけど、今回、舞台装置や照明をともなったオペラとして観ると桁違いの満足感があった。歌手に寄りそうオーケストラ、壁と光を効果的に使った演出、どの要素も存分に楽しめた。
演出について。
群衆を演じる歌手ひとりひとりに動きがある(=演技がつけられている)。コンビチュニー演出のタンホイザー(2007年、ドレスデン国立歌劇場の来日公演)を思い出した。壁の動きや照明でさまざまな場面を表現していて、よく考えられた演出だと思う。銅鑼を3回鳴らすところとか、火刑台に向かう場面とか、どう演出するんだろうと楽しみながら観た。
菅尾友さんという日本人の演出家が手がけたらしい。名前、覚えておこう。
歌手について。
アダルジーザ役の気品ある伸びやかな美声、フラヴィオ役の明るくクリアな声が気に入った。
特にアダルジーザとノルマの二重唱は今まで聴いた組み合わせの中で一番好き。
演奏について。
歌手の息づかいに寄り添う演奏。さすがオペラハウスのオーケストラだなぁ!と感心。
そしてグルベローヴァ。
前と同じ美声。オペラが進むにつれて調子を上げてきた印象。特に後半、高音に鼓膜がビリビリ震えた。何度も。
アリアのたびに涙ぐんだり泣いたりしてた気がするけど、もしかしたら今回が本当に最後になるかもしれないグルベローヴァのオペラ、たっぷり堪能しました。
オペラの筋書きに振り回されなくなった。
以前は「何それ!ありえない!」と反発して歌に入りこめなかったけど、筋書きは「状況のサンプル」に過ぎないのだ、と折合いをつけられるようになった。