晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

フランスで、原発依存への見直し議論が活発になって来た。政府と反原発派が激論。

2011-03-14 22:37:48 | 日米関係
フランスでは、原発の危険性に対する議論が、<東日本大地震>に依る『福島第一原発』の事故により、活発に論じられる様になって来た。


3月14日月曜日、パリ発の成田行き『エール・フランス』便が、直行便であるにも関わらず、何と「インチョン(ソウル)」経由で飛んだ。

勿論正確な事は伝えられていない。
しかし、漏れ伝わって来た情報に依ると、「乗務員」が核被爆の危険を恐れて、乗務に難色を示したらしい。

フランスには、多くの<労組>が有るが、労働者各自がどの労組員かによって、勤務状態が変わる事が有る。
有る労組が「スト」を決めると、その労組に加盟しているスタッフのみが、就労しない。


恐らく、乗務員との『労使協約』で、戦争・災害その他、特定の事態が生じているときは、常務を拒否出来る、と言う様な一条が有るのでは無かろうか。

結局街頭フライトは、インチョンで乗務員を交代させ、東京ベース(勤務地が東京で乗務するスタッフ)の乗務員が変わってインチョン成田間の乗務をする様だ。

エア・フラが、乗客に何と説明したか私にまでは伝わって来ていないし、本当の理由が知れる事も無かろう。


しかし、現在進行中の『福島第一原発事故は』、<日本以外>では日本国内以上に深刻に受け止められている。


つい今しがた、同時に流れているNHKのニュースでの「枝野官房長官」の背景説明の後、ある記者が質問して、『それでは今まで事実を隠蔽していた、と理解していいのですね?』と切り込まれ、枝野はしどろもどろになっていた。


ここフランスでは、大手メディアから、地下鉄駅で無料で配られる「ミニコミ紙(フリー・ペーパー、5紙程有る)」に至るまで、トップ記事は「日本の原発事故」である。

元来フランスは、核超大国で、全発電量の実に78%程もが<原子力発電>に頼っている。
核兵器も含めての「全用途核利用」は、アメリカに次いで世界代二位である。


当然、「反核運動」も根強く行われてはいる。

その彼等に取って、今回の日本での事故は、正にうってつけの事態であった訳である。

ヨーロッパ議会に議席を持つ『ヨーロッパ・エコロジー』と『緑の党』の連合組織が、15日火曜日に、フランス全土の主立った街で、『一分間の黙祷』を提案している。

「日本を襲った地震と津波による犠牲者を悼み、原子力依存からの脱却を願って」の黙祷である。


正に、14日月曜日に刻々と「日本からもたらされた」非常事態に、フランス政府は神経を尖らせているのです。

仏エコロジー相コリセウスコ=モリゼは、以下の様に発言した。

「極めて重大な事故が進行中である。そして、その事は<超巨大災害>が決して(人類社会から)遠のいている訳では無い」

『原子力安全管理機構(ASN)』は本日、今回の福島の事故の危険レベルを、現在の4から5への引き上げ、更に6にまで引き上げる必要が有るかもしれない」と発表した。
ちなみに、この<危険レベル>の最大値は『7』である。


実にこの週末を通じて、フランスのあらゆる社会学と核物理学、環境学の専門家が総動員状態で、ラジオやテレビ、新聞紙上など、あちこちで熱い討論を繰り返している。

TVの人気コメンテーターで、『エコロジー・パクト(自然環境保護協約運動)』の起ち挙げ者でもある、『ニコラ・ユロ』は、本日月曜日に「討論会」を呼び掛け、近い将来においての『原子力利用に対する賛否』を問う<国民投票>の是非を活発に討議した。

彼は、来る2012年の『大統領選挙』に出馬する事を、表明している。

曰く。
「人類の運命を、危険な<ロシアン・ルーレット>に賭ける訳にはいかない」



このような、フランス原子力政策への「挑戦的」言動に、政府は非常に苛立っている事は確かである。

仏産業相『エリック・ベッソン』は、ラジオ局『フランス・アンテール』での番組の中で、「次の大統領選には、「原子力政策」が大きな争点になる」と、明言した。

さらに。
「今は、フランス国内で<政争>に走る前に、先ず日本で進行中の災害を、日本の人々と連帯しながら、終息させる事を待つ事が必要である。」


彼の周辺では、フランス59番目となる、中型原子炉『アトメア』の「建設へのリサーチ開始」の昨二月の決定に、何ら変更は無い、と語っている。


大統領に依ると、政権与党UMPの会合上で、幹部達を前に「フランスの原子力技術の信頼性」について積極的賛意を表明して自画自賛した。

昨今の、各国でもたらされた、原発建設入札においての敗北については、「敗因はフランスの入札価格が一番高い事であり、その事はフランスの安全管理技術が、特に第三世代EPR型原子炉に於けるそれが、一番高度に完成しているからである」とまで述べている。

上で話題になった『アトメア』原発も運営する企業『アヴェラ』の「取締役会会長アンヌ・ローヴェルジョン」によれば、「福島の例は、今後原発に対する安全基準がより厳しく求められるになる事は確かだ。フランスはその分野においての技術は、他国よりずっと先んじているので、問題は無い」と言い切った。

テレビ『フランス2』に於いての、彼女の発言。

「ローコスト原発は、これからの話題では無い」



フランスの政界を二分する、もう一方の勢力『社会党』では、論議が「揺れて」居るのが現状である。

現時点では「同じ野党陣営」である「エコロジスト」に対する社会党の批判はと言うと。

社会党議員ながら、ニコラ・サルコジー政権に於いて閣僚に起用されていた『ナジャ・ヴァロー=ベルカサン』は、次の様に反論する。

「政治論にすり替える<無作法>は、たちまち<人災>となる」


『社会急進党』は、更に厳しい表現でエコロジストを批判する。
ヨーロッパ・エコロジーの書記長『セシル・デュフロ』を評して、<デマゴーグ>だと決めつけ、「彼女のスローガンは、選挙用の甘言に過ぎない」とまで酷評する。


現時点での<社会党統一見解>としては、『ブノワ・アモン』がRTLラジオの番組で言った、以下の如くである。

「フランスは、原子力エネルギーに政策に関して、朝令暮改は出来ない」

「2~30年をメドに、より効率の高い、そしてリサイクル可能なエネルギー政策に移行しなければならない。そうなった時の<原子力>の割合は減少しているべきである」



同日、ドイツは国内の現在稼働中の原発の総てに於いて、現時点で見積もられている寿命を延ばす政策は中止する事を、発表した。
(ドイツでは、総ての新規原発建設を破棄する事を決めている)

スイスも、現在稼働中の原発の、今後の再生計画の中止を発表。


それに対しての、フランス・エコロジスト党のヨーロッパ議会議員『ヤニック・ジャドー』が、吐き捨てる様に行った一言が、印象深かった。

「そして、我がフランスは、何をするのか? 何もしない!」


右も左も、フランスは「原子力発電」に、首までどっぷりと浸かっている。

エコロジー党だけを除いて。


日本の技術は、ニコラ・サルコジーが言い切った様な、安全面での「絶対」の自信が有るのか!?



コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする