間隔が空きすぎの感があるが、続編です。
全ては運頼み。
地殻変動や、地震や出水や、核戦争やテロや、その他何か想定できないことまで含めて「ありとあらゆる災害」から、無事に放射線汚染廃棄物を数千年単位で守り続けることを「期待して」地下550メートルにトンネルを掘っている訳です。
フランス東部、ロレーヌ地方ののどかな田園の中に。
30年程前、ノルマンディー地方のコタンタン半島の最先端に位置するラ・アーグ使用済み燃料廃棄物処理工場を訪れたことがあった。
硅素分の多い特殊ガラスで固化する処理を細々と行っていて、世界中でそれができるのはそこだけ、という時代。
ガラスは、水と同じく放射線を通しにくい。
日本も、国内で処理できないので使用済み核燃料廃棄物をそこに送って、処理を依頼していた。
プールの上を歩きながら、足元のグリルの隙間から見える、真っ青な水の底20メートルほどの位置に沈めてある使用済み燃料棒のうちどれが日本から来たものなんだろうと、寒気を覚えながら歩いた。
その頃は、処理(固化)した廃棄物をどうするか諸説あって、なかなか決められないと聞かされた。
ロケットで宇宙空間に持って行くのが、地球上に止めるよりほぼ完全に放射能被害からは隔絶される。
しかし、打ち上げ失敗で地上や大気圏内で爆発したら、地球規模の核戦争と同じほどの汚染が見込まれるので不可。
数千メートルの深海に沈める。
これも、容器が1万年の物差しで腐食したり、壊れたりしないとは誰も保証できない。
それで、地下に置くしかない、と。
当時は、オーストリアのハルシュタット近郊に、青銅器時代よりの岩塩の産地で、掘削したトンネルがあり、それを利用してヒロ進めれば地下700メートル以上で岩塩の結晶層が、物理的にも化学的にも安定度が理想的、などと説明された記憶がある。
しかし、その後の使用済み核燃料廃棄物の国際条約で「他国に」押し付けることが禁止された。
そこで、仏国内で地質学的に、地方自治体の政治的に、候補地を5箇所ほどに絞って始まった最初のサイトが、ここ。
ロレーヌ地方のビュール村周辺。
前編でご紹介した広報用のショウルームの敷地から800メートルほど離れた、実際の貯蔵施設サイトに移動。
実際に現場に降りる前に、簡単にブリーフィングを受けなければなりません。
簡易酸素マスクと、トンネル内GPSで位置を把握するための装置などを、使い方をレクチャーされた後に身につける。
右側の黒いケースを腰につけ、なんらかの事故で倒れたらセンサーが働いて地上の管制センターに知らせる、
どkで倒れているかの、位置も含めて。
二本の縦坑は、右が地下500メートル、左が550メートルまで下ろしてくれる。
そこから、縦横にトンネルが伸びている訳だ。
赤く塗られたエレベーター・シャフト。
上昇中を示すパネル。
こんな格好で、降りてゆく。
ドアが開き、エレベーターに乗り込む際に、隙間から下を見下ろしてみた。
さすがに550メートルでは、地底は見えない。
地底550メートルに降り立ったら、当初要所に説明用パネルがある。
これは、トンネル自体をどのように掘るのか。
試験掘削なので、実験ラボと呼ばれている将来の各種作業用スペースに成る横トンネルが、827。
縦坑が44。
その基本部分からさらに細かな穴が掘り巡らされ、総延長距離11キロメートル。
などなど。
この◯と➕の信号は、火災や事故の際、向いている方向に前進可能の時◯がグリーンに点灯。
その方向に行くと事故現場、という場合は◯が赤で真ん中に横線がです。
➕はその方向に避難壕ありのサイン。
一切に掘削したトンネルの内壁を固めるシールド用のコンクリート製隔壁様ブロック部品が、あちこちに積んである。
トンネルの交差部には、凸面鏡も。
トンネルの隔壁から、『高濃度汚染廃棄物』のカプセルを封じ込める横穴を掘る掘削機。
その横穴に、さらにコンクリートのパイプを押し込んで行く。
そこが貯蔵横穴となる。
完成した部分もあった。
放射線漏れが起こった際の臨時避難カプセル。
工事現場の簡易トイレほどの大きさで一人が数時間、救援が来るまで避難できるらしい。
ここは14人分。
ちゃんとした避難壕も数箇所ある。
入り口。
¥
内部の様子。
上は排気用ダクト。
右の壁の細いパイプは空気を送ってくるパイプ。
どちらの方向から送られる空気か、明示してある。
事故現場と違う方向からのパイプの空気を利用するわけだ。
水も備わっており、半日ほどは耐えられる。
非常用のブレーカーと地上との直通電話も。
避難壕の位置を示すパネルの拡大。
こういう場所に避難することが距離的に困難な場合に、前述の簡易カプセルがあるのだった。
内側のシールドをせず、実際の土壌が見えるようにしているところがあった。
この辺りは、粘土層。
地下100メートルほどは表土層で、地下水脈などもあるはずの地層。
その下に300メートルほどの厚みで石灰岩の岩盤。
そして、その下が粘土層。
さらにその下に、また石灰岩の岩盤。
岩盤は物理的に非常に安定しているが、水は浸透する。
粘土層は水を多少含むが、内部までの浸透を防ぐ。
つまり、安定した厚い岩盤の間に、サンドイッチの具のように粘土層があり、安定した器の中の水を防ぐ、理想的なところが、この地下500メートル前後だったわけらしい。
粘土層といっても、いわゆる工作用の粘土のように柔らかいわけではなく、泥岩として石化している。
しかし、意外ともろいので掘りやすい。
その粘土層の泥岩を掘り抜き、壁面をコンクリートを吹き付けて固める。
要所要所に各種パイプ類。
その上に、前述したコンクリートの隔壁ブロックを張り合わせて行く。
この写真の右端が、隔壁ブロック設置済みの位置。
まだ実験機関でもあるので、トンネルの表面のコンクリートの吹き付けのやり方を変えたり、隔壁ブロップの設置のやり方を変えたり、各種の工法を実際に行って、比較実験もやっている。
そして中濃度汚染物(燃料棒の容器その他)はこのトンネルに、さらに前回書いたように横に二列、縦に3段に積むスペース以外は、コンクリートの隔壁ブロックで固められてしまうことになる。
赤く塗った部分が、実際のトンネル。
内側のグレーの部分は、先に挙げた写真の湾曲した隔壁ブロックを張り合わせた最終形態に、廃棄物を収めたカプセルを複数収めたコンテナーの位置ギリギリまでさらにコンクリートの保護ゴブロップで固めた部分。
白の部分が積み重ねたコンテナーとコンクリートとの隙間。
一番上は横に動くクレーン・ロボットが動くスペースだが、下に2段積んだ位置には順次3段目を積んでんクレーンは引き返してゆく。
そろそろ地上に戻ることにした。
エレベーターを呼ぶと、上から降りてくるん胃15分ほどかかってしまう。
幸いシンドラーではなかった。
やっと、お天道様の下に出てきてほっと一息。
この四角い建屋が、エレバーターシャフトを持つ縦坑の一つなのです。
敷地内には、作業員、研究員、技術者たちの住居が立ち並んでいます。
実際に完成すると、地下500メートルのラボ(研究施設)を除いて、550メートルの貯蔵トンネルの位置は無人となり、使用済み燃料廃棄物のカプセルは、全自動で地上から下に下ろして、所定のトンネルまで全てロボットが運んで積み重ねる。
しかし、メンテナンスや事故処理のために、人的介入が必要なので、そのための対処は全て考慮されているというが。。。。
このサイトの直近の集落『ビュール村』に寄り道してみよう。
近づくにつれ、交通標識にいたずらが。
村は、以外と広いメインの道路の周囲に民家が寄り添っており、閑散としていた。
村長さんの自宅。
たまたま通りかかった女性に話しかけたら、避けるように通り過ぎようとした。
考え直して、立ち止まって話を聞いてくれたが、実に偶然なことに現村長の奥様だった。
貯蔵所の受け入れを決めてから、「補助金で潤っただろう」とか「環境破壊して」とか、村の住人伊賀の外部者から散々嫌味を言われ続けて、外部者を避けるようになったとか。
考えさせられるお話だった。。。
やや坂道を登っていくと古い教会があった。
やはり、遠くから一番最初に見えるのは教会の尖塔という、お約束通りの位置関係にあった。
この13世紀に起源を持つらしい、ロマネスクの見事な古刹と、核燃料廃棄物の貯蔵施設とは、相容れぬ違和感を覚えながら。現地を後にした。
六ヶ所村は、どうするつもりだろう。
少しググってみたら、「やっぱり」なブログを見つけてしまった。
『【驚愕】知っていますか?青森県には平均年収1,300万円の村「六ヶ所村」があることを。』
確かに、批判したくなることはよく分かる。
私自身も、施設を受け入れた六ヶ所村の姿勢を批判していた。
しかし。
住民たちを批判する前に、原発自体を否定しなければ、意味はないのではなかろうか。
この種の住民批判は、やっかみと取られてしまう。
原発は、事故を起こしても、起こさなくても、人間社会には相容れない異端者だ。
電力事業者と建設するゼネコンと、政治家だけが美味しい思いをして、数千年単位一万年単位で、母なる大地とそこに生きる我が人類の現在と未来に取り返しのつかない悪影響を残す権利は、今の人類の誰にもないはずなのだから。
重たい気分でパリに向かった。
全ては運頼み。
地殻変動や、地震や出水や、核戦争やテロや、その他何か想定できないことまで含めて「ありとあらゆる災害」から、無事に放射線汚染廃棄物を数千年単位で守り続けることを「期待して」地下550メートルにトンネルを掘っている訳です。
フランス東部、ロレーヌ地方ののどかな田園の中に。
30年程前、ノルマンディー地方のコタンタン半島の最先端に位置するラ・アーグ使用済み燃料廃棄物処理工場を訪れたことがあった。
硅素分の多い特殊ガラスで固化する処理を細々と行っていて、世界中でそれができるのはそこだけ、という時代。
ガラスは、水と同じく放射線を通しにくい。
日本も、国内で処理できないので使用済み核燃料廃棄物をそこに送って、処理を依頼していた。
プールの上を歩きながら、足元のグリルの隙間から見える、真っ青な水の底20メートルほどの位置に沈めてある使用済み燃料棒のうちどれが日本から来たものなんだろうと、寒気を覚えながら歩いた。
その頃は、処理(固化)した廃棄物をどうするか諸説あって、なかなか決められないと聞かされた。
ロケットで宇宙空間に持って行くのが、地球上に止めるよりほぼ完全に放射能被害からは隔絶される。
しかし、打ち上げ失敗で地上や大気圏内で爆発したら、地球規模の核戦争と同じほどの汚染が見込まれるので不可。
数千メートルの深海に沈める。
これも、容器が1万年の物差しで腐食したり、壊れたりしないとは誰も保証できない。
それで、地下に置くしかない、と。
当時は、オーストリアのハルシュタット近郊に、青銅器時代よりの岩塩の産地で、掘削したトンネルがあり、それを利用してヒロ進めれば地下700メートル以上で岩塩の結晶層が、物理的にも化学的にも安定度が理想的、などと説明された記憶がある。
しかし、その後の使用済み核燃料廃棄物の国際条約で「他国に」押し付けることが禁止された。
そこで、仏国内で地質学的に、地方自治体の政治的に、候補地を5箇所ほどに絞って始まった最初のサイトが、ここ。
ロレーヌ地方のビュール村周辺。
前編でご紹介した広報用のショウルームの敷地から800メートルほど離れた、実際の貯蔵施設サイトに移動。
実際に現場に降りる前に、簡単にブリーフィングを受けなければなりません。
簡易酸素マスクと、トンネル内GPSで位置を把握するための装置などを、使い方をレクチャーされた後に身につける。
右側の黒いケースを腰につけ、なんらかの事故で倒れたらセンサーが働いて地上の管制センターに知らせる、
どkで倒れているかの、位置も含めて。
二本の縦坑は、右が地下500メートル、左が550メートルまで下ろしてくれる。
そこから、縦横にトンネルが伸びている訳だ。
赤く塗られたエレベーター・シャフト。
上昇中を示すパネル。
こんな格好で、降りてゆく。
ドアが開き、エレベーターに乗り込む際に、隙間から下を見下ろしてみた。
さすがに550メートルでは、地底は見えない。
地底550メートルに降り立ったら、当初要所に説明用パネルがある。
これは、トンネル自体をどのように掘るのか。
試験掘削なので、実験ラボと呼ばれている将来の各種作業用スペースに成る横トンネルが、827。
縦坑が44。
その基本部分からさらに細かな穴が掘り巡らされ、総延長距離11キロメートル。
などなど。
この◯と➕の信号は、火災や事故の際、向いている方向に前進可能の時◯がグリーンに点灯。
その方向に行くと事故現場、という場合は◯が赤で真ん中に横線がです。
➕はその方向に避難壕ありのサイン。
一切に掘削したトンネルの内壁を固めるシールド用のコンクリート製隔壁様ブロック部品が、あちこちに積んである。
トンネルの交差部には、凸面鏡も。
トンネルの隔壁から、『高濃度汚染廃棄物』のカプセルを封じ込める横穴を掘る掘削機。
その横穴に、さらにコンクリートのパイプを押し込んで行く。
そこが貯蔵横穴となる。
完成した部分もあった。
放射線漏れが起こった際の臨時避難カプセル。
工事現場の簡易トイレほどの大きさで一人が数時間、救援が来るまで避難できるらしい。
ここは14人分。
ちゃんとした避難壕も数箇所ある。
入り口。
¥
内部の様子。
上は排気用ダクト。
右の壁の細いパイプは空気を送ってくるパイプ。
どちらの方向から送られる空気か、明示してある。
事故現場と違う方向からのパイプの空気を利用するわけだ。
水も備わっており、半日ほどは耐えられる。
非常用のブレーカーと地上との直通電話も。
避難壕の位置を示すパネルの拡大。
こういう場所に避難することが距離的に困難な場合に、前述の簡易カプセルがあるのだった。
内側のシールドをせず、実際の土壌が見えるようにしているところがあった。
この辺りは、粘土層。
地下100メートルほどは表土層で、地下水脈などもあるはずの地層。
その下に300メートルほどの厚みで石灰岩の岩盤。
そして、その下が粘土層。
さらにその下に、また石灰岩の岩盤。
岩盤は物理的に非常に安定しているが、水は浸透する。
粘土層は水を多少含むが、内部までの浸透を防ぐ。
つまり、安定した厚い岩盤の間に、サンドイッチの具のように粘土層があり、安定した器の中の水を防ぐ、理想的なところが、この地下500メートル前後だったわけらしい。
粘土層といっても、いわゆる工作用の粘土のように柔らかいわけではなく、泥岩として石化している。
しかし、意外ともろいので掘りやすい。
その粘土層の泥岩を掘り抜き、壁面をコンクリートを吹き付けて固める。
要所要所に各種パイプ類。
その上に、前述したコンクリートの隔壁ブロックを張り合わせて行く。
この写真の右端が、隔壁ブロック設置済みの位置。
まだ実験機関でもあるので、トンネルの表面のコンクリートの吹き付けのやり方を変えたり、隔壁ブロップの設置のやり方を変えたり、各種の工法を実際に行って、比較実験もやっている。
そして中濃度汚染物(燃料棒の容器その他)はこのトンネルに、さらに前回書いたように横に二列、縦に3段に積むスペース以外は、コンクリートの隔壁ブロックで固められてしまうことになる。
赤く塗った部分が、実際のトンネル。
内側のグレーの部分は、先に挙げた写真の湾曲した隔壁ブロックを張り合わせた最終形態に、廃棄物を収めたカプセルを複数収めたコンテナーの位置ギリギリまでさらにコンクリートの保護ゴブロップで固めた部分。
白の部分が積み重ねたコンテナーとコンクリートとの隙間。
一番上は横に動くクレーン・ロボットが動くスペースだが、下に2段積んだ位置には順次3段目を積んでんクレーンは引き返してゆく。
そろそろ地上に戻ることにした。
エレベーターを呼ぶと、上から降りてくるん胃15分ほどかかってしまう。
幸いシンドラーではなかった。
やっと、お天道様の下に出てきてほっと一息。
この四角い建屋が、エレバーターシャフトを持つ縦坑の一つなのです。
敷地内には、作業員、研究員、技術者たちの住居が立ち並んでいます。
実際に完成すると、地下500メートルのラボ(研究施設)を除いて、550メートルの貯蔵トンネルの位置は無人となり、使用済み燃料廃棄物のカプセルは、全自動で地上から下に下ろして、所定のトンネルまで全てロボットが運んで積み重ねる。
しかし、メンテナンスや事故処理のために、人的介入が必要なので、そのための対処は全て考慮されているというが。。。。
このサイトの直近の集落『ビュール村』に寄り道してみよう。
近づくにつれ、交通標識にいたずらが。
村は、以外と広いメインの道路の周囲に民家が寄り添っており、閑散としていた。
村長さんの自宅。
たまたま通りかかった女性に話しかけたら、避けるように通り過ぎようとした。
考え直して、立ち止まって話を聞いてくれたが、実に偶然なことに現村長の奥様だった。
貯蔵所の受け入れを決めてから、「補助金で潤っただろう」とか「環境破壊して」とか、村の住人伊賀の外部者から散々嫌味を言われ続けて、外部者を避けるようになったとか。
考えさせられるお話だった。。。
やや坂道を登っていくと古い教会があった。
やはり、遠くから一番最初に見えるのは教会の尖塔という、お約束通りの位置関係にあった。
この13世紀に起源を持つらしい、ロマネスクの見事な古刹と、核燃料廃棄物の貯蔵施設とは、相容れぬ違和感を覚えながら。現地を後にした。
六ヶ所村は、どうするつもりだろう。
少しググってみたら、「やっぱり」なブログを見つけてしまった。
『【驚愕】知っていますか?青森県には平均年収1,300万円の村「六ヶ所村」があることを。』
確かに、批判したくなることはよく分かる。
私自身も、施設を受け入れた六ヶ所村の姿勢を批判していた。
しかし。
住民たちを批判する前に、原発自体を否定しなければ、意味はないのではなかろうか。
この種の住民批判は、やっかみと取られてしまう。
原発は、事故を起こしても、起こさなくても、人間社会には相容れない異端者だ。
電力事業者と建設するゼネコンと、政治家だけが美味しい思いをして、数千年単位一万年単位で、母なる大地とそこに生きる我が人類の現在と未来に取り返しのつかない悪影響を残す権利は、今の人類の誰にもないはずなのだから。
重たい気分でパリに向かった。
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