晴れのち曇り、時々パリ

もう、これ以上、黙っていられない! 人が、社会が、日本全体が、壊れかかっている。

「福島原発事故」は今後何処に向かうのか。フランスのマスコミの情報から考えてみる。

2011-03-30 21:44:49 | 政治と社会
福島第一原発の事故に関して、東電会長の会見が行われた。
この会長の話し方が、あたかも「陛下のお言葉」の如くであったことに、大きな違和感が残った。


1~4号炉の「廃炉」はやむを得ない、という発言であったが、口調の端々に「何とか原発の維持を図りたい」心理が見え隠れしていた。

枝野は「原発のアメリカ輸出は無理」との観測を述べていたが、東電側は未だに何とかなると思っているらしい。
「ここまで対処出来た。この様に乗り切った、との実績を持って望めば、日本の技術に対する信頼も回復出来るのでは無いか」

事ここに至って、未だに「経営の観点」の見方から離れられず、かつ自分達の技術に対する「根拠の無い自信」から、抜け出せないでいるらしい。

現実の持つ「重大な意味」の捉え方が、国民と彼等とでは、座標軸が大きく異なっている事が明らかである。

一般の国民に取って「原発」等無いにこした事は無い代物であるが、経営者達に取っては、莫大な利権と利益とをもたらす「お宝」なのだろう。


陛下が被災者をお見舞いになっている写真で、「いつも通りに」被災者の前にお座りになって「同じ目線」でお声をおかけになっておいでであった。

先日「東電副社長」が避難場所を訪れた際の写真では、「靴のままで」立ったまま、軽い会釈程度の頭の下げ方でしかなかった。

陛下は、ご自身のご提案で「毎日」数時間の間、御所で電気を消していらっしゃるそうだ。

菅直人の選挙区は、『計画停電』地区に入っていないらしい。

計画停電と言えば、被災地での復興に、3時間の停電のせいで、前後5時間程工場の操業が出来ず、ただでさえ滞って居る部品生産が間に合わず、調達先を取り替えられてしまいそうだ、とのレポートがNHKで流れていた。


何もかもが、おかしい。


東電が、『フランス原子力安全委員会』に援助を求めたニュースは、当地でも流れた。
事件発生数日後に、高濃度汚染地域で施行出来る、特殊ロボットとそれらの専門家を含む「援助団」の派遣を提唱して、東電に断られていたと言うのに。


ここフランスでは、一頃程「連日トップニュース」と言う訳でもなくなった物の、福島原発のニュースは、依然として毎日報道されている。

そのフランスに有って、『ル・モンド』という、いわゆる高級紙が有る。

発行部数わずか80万分台の夕刊紙であるが、ヨーロッパの知識階級の「オピニオン・リーダー」の役を担い続けている。

フランスでは、政財界とその周辺の保守層は『ル・フィガロ』紙を読む。

知識人、文化人、革新層が『ル・モンド』である。

非常に硬い文章であるが、明晰明快に事実を報道し、外国人も「ル・モンド」を読める様になると、「フランス語」も折り紙付き、と言われる位である。


その「ル・モンド」電子版に、ここ数日来『日本』の項目が出来ていた。

それまでは、「ニュース」>「世界」>「アジア」>「日本」と区分されていたが、新たに「ニュース」欄のサブタイトルに「リビア」と「日本」が立ち上げられて、それだけ早く記事にたどり着く事が出来る様になったのだ。

その「ル・モンド」の電子版に、読者との一問一答の欄が有る。
ここ数日の、『日本』の欄に置けるこの「一問一答」のやり取りを、幾つか紹介してみよう。


【問】福島第一原発で、何故「爆発」が怒ったのか?
【答】3月11日14時46分の時点で、6基の原子炉のうち3基しか稼働していなかったが、地震発生と同時に、緊急事態マニュアルの通りに停止した。
運転が完全停止しても、炉心は高温の熱を持っているので、冷却しなければならない。
しかし、地震と同時に、冷却用発電装置の電源が、それらの回路が津波に依る冠水で電源が断たれて、冷却装置は作動駅なくなってしまった。
各原子炉の納まる格納庫の中は、施設が痛み、各種機能が停止した状態で熱の放射は続き、放射性物質を含んだ「炉心の冷却水」が蒸発を続け、放射性物質の放出の圧力が高まって行った。
圧力低下の為に「東電」は「蒸気抜き」を行い、その事が大気中放射性物質の濃度を高めつつ、水素の拡散を押し進めた。
原子炉の破壊を防ぐ為に「水素」は気体から結露状態へと姿を変え、その事が逆に空気との接触で濃度が高まり、一連の爆発へと向かった。
炉心の周辺を被う外格建屋の破壊であり、理論的に「原子炉」事態を傷つける物では無い。

【問】どのように「炉心」冷却を図っているのか?
【答】炉心が発散する熱量がだんだん減っているとはいえ、「炉心溶解」を防ぐ為には、今後数ヶ月の冷却が必要である。
有効的に冷却する唯一の方法は、必要な量の水を与え続けることである。
先々週土曜日以来、タンクローリー車に依る海水の運搬に依って、本来必要な「真水」に変わって、海水の「放水」を行っている。
木曜午前、始めて自衛隊ヘリに依る空中散布を実施し、3号原子炉を中心に数トンの「海水」を散布する事が出来た。
しかし、毎回7,5㎥の量では、散逸分も多い為、炉心と燃料プールとを満たすには到底足り無い(それぞれ1000㎥)。
前日水曜日の時点で、仏原子力公社『アレヴァ』の会長アンヌ・ローヴェルジョンは、現場全体で、毎時100㎥の水が必要と概算している。

【問】もし必要な期限内に冷却出来ないときの、最悪のシナリオは?
【答】冷却に失敗した場合、炉心は完全溶解する。
その際放出される熱は、現在の隔壁その他を総て破壊し、大量の放射能を大気中に拡散する事となる。
しかし、これはあくまで理論的想定に過ぎなく、スリーマイルでも炉心の完全溶解は起きなかったし、チェルノブイリでも隔壁の完全破壊は、起きていない。
炉心以外で言えば、「使用済み燃料」冷却プールが新たな問題となっている。現在沸騰状態となっている水が蒸発し、使用済みとは言え高濃度汚染されている燃料棒の冷却を、不可能としている。
もし、完全に水が蒸発してしまい、燃料棒が空気中に曝された状態になると、放射性物質の拡散は多量な物となり、このケースは、冷却プールが干上がって一切の遮蔽が亡くなったチェルノブイリと同じ状況となる。

【問】原発は、原爆と同じ様に爆発する事が有るのか?
【答】原発と原爆とは、ともに原子の核融合に依る協力なエネルギーを利用する、と言う点で同じである。
しかし、使用するウランが数%しか濃縮されていない原発は、原爆の様な意味では爆発はしない。
例えば福島の例の様な事故の場合、圧縮された大量のガスが原子炉格納容器内部に満ちると、爆発を引き起こす。しかし、この爆発は「科学的」爆発であり「核」爆発では無い。従って、爆発エネルギーは比較の上で、極めて弱く、土壌の放射能汚染もない。

【問】今回の福島原発の事故は、チェルノブイリと比較出来るか?
【答】チェルノブイリの場合、制御不能の作用が連鎖した結果、原子炉内での核反応の暴走を引き起こし、温度の上昇が蒸気または水素の爆発を引き起こした。
その結果「核分裂」に依ってもたらされた放射性物質が大気中の3000メートルの高度にまで放出されたが、福島のケースと違って、原子炉を取り囲む「格納容器」も「隔壁建屋」もなかった。
福島の場合、炉心での各連鎖核反応は、地震発生時に自動的に停止されて居り、拡散された放射性物質の量は遥かに微量である。「ル・モンド」解説記者の『エルヴェ・モラン』に依れば、炉心の溶解が「部分的」で済んだ為、放射性物質の大気中への漏出がほとんど無かった「スリーマイル」の場合と、「チェルノブイリ」との中間に位置づけられる事故である。

【問】どの位の放射性濃度から、人体に危険を与えるか?
【答】通常の場合に置ける、人体が受ける放射能量は、年間1ミリ・シーベルである。
被曝量が累計で100ミリ・シーベルを越えると、人体に何らかの影響が表れる可能性が有る、直ちにでは無いが。
さらに、特に「甲状腺癌」を含み、ある種の「癌」の発達を促進する危険性も知られている。特に子供が反応しやすい。
そして、1Sv毎に5,5%の割合で、癌のリスクは上昇する。
さらに、1Svの被曝で、「吐き気」「発熱」「出血」「最近感染」が示す「激しい原子力被害」の様相を呈する。
そして、適切な治療が無い場合、6Svの被曝で100%死に至る。
福島での最大観測値は、IAEA によると1時間あたり400mSvであった。
迅速な「ヨード剤」の摂取が、特に「肥大した甲状腺癌」の腫瘍の発生抑制には効果がある。

【問】現地作業員が来ている『防護服』は、どの程度までの放射線に効果が有るのか?
【答】ガスマスクもしくは酸素ボンベ付きの『防護服』は、「放射性物質」が吸引、経口、皮膚を通しての、体内被曝を防ぐ。
但し、「放射」能は防ぐ事は出来ない。
したがって、過度の被曝を防ぐ為には、放射線量の多い場所に長時間居る事は出来ない。
先週火曜日と水曜日に、400mSvが計測されて、緊急避難が為されたが、このように作業員に適切な情報が与えられない場合は、健康被害は疑い様は無い。

【問】どのような環境被害が起きるか?
【答】半径30キロ以上に渡って、風邪に依って運ばれた放射性物質は、特に雨により地上に落ちて
土地が汚染される。
そのような土地では農作物及び酪農製品汚染され、特に半減期の長いセシウム137により、消費に適さなくなる。
そのような食品を摂取する人は、高濃度の放射能汚染に見舞われる。
原子炉冷却に用いられた海水も、直ちに海に戻してはならない。温度が高まっている水が、海に戻されると蒸発し、放射性物質を空気中に拡散する。

【問】何故「チュエルノブイリ」の様に『石棺』方式をとらないのか? 地元の住民は何時になったら「安全に」自分の家に帰れるのか?
【答】石棺の設置は、現段階では賢明とは思え無い。
周辺部の放射線量が高過ぎて、その種の作業が行える環境に無い。
さらに、この方法は「炉心の冷却」には向かず、各隔壁や遮蔽壁を破壊してしまう恐れの方が大きい。
問題は、日本が「いつ」燃料棒の冷却に成功するか、に掛かっている。
いずれにせよ、現地の敷地の土地は「何世代」にも渡って、何世紀にも及び汚染される事になる。
それは、主にセシウム137の放出が証明している。


まだまだ記載したい事は多いが、当地では、深刻な事もそうでない事も、冷静に語られている、と言う事が、一番重要な事では有るまいか。

最初の一週間は、こちらのマスコミも、かなり「扇情的」に悲報を繰り返していた。
二週目に入り、情報が分析され始めるに及んで、人々の関心は「客観的に」事態を捉え、もたらす結果を考える、と言う方向に向いている様だ。


東電と海江田は、「原発擁護」の口調がありありと、見て取れる。
経団連の発言も、これを後押ししている。

枝野の発言では、「原発政策見直し」に言及しているが、これとて時間が経てば、どうなる事やら。

震災復興の為の増税に言及し、経済復興のお題目の元「消費税引き下げ」論の棚上げを牽制する財界と、現政権の姿勢を視ていると、とても「羹に懲りてなますを吹く」とは言えなさそうである。

「人の噂も七十五日」で、原発不可欠論が息を吹き返すのは、目に見えている様な気がするのは、私だけだろうか。

その割には、科学的な裏付けの有る、平易で説得力の有る説明も、解説も、為されていない。
ただ、被害状況を曖昧に繰り返し、国民に根拠の無い安心を訴える政府発表と、被災者の窮状を訴えるだけの、お涙ちょうだいの報道の姿勢では、国民が自らの頭で考える力は生まれにくい。

まさに、それが狙いの「お上」なのだろうけれど。


(2晩3日、体調不全で倒れて居り、ブログ更新が出来ませんでした)

コメント (25)
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