joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

絵本 『じぶんだけのいろ』 レオ・レオニ(文・絵)

2007年04月05日 | 絵本・写真集・画集



1978年に発行されたレオ・レオニの絵本『じぶんだけのいろ いろいろさがしたカメレオンのはなし』を読みました。

夜、本を読まなきゃ(読みたい、ではなく)と思って、布団に入っても活字を読もうとします。そのとき、活字を手放すことが惜しくなります。義務で本を読まなきゃなきゃならないわけではないのですが、「読まなきゃ」と自分で思い込んでいるのです。

そのとき、それでも思い切って本を手放して見ます。そして絵本を手にとってみます。すると、何かしがみついていたものを手放したときのように、宙に浮いたような居心地の悪さがあり、それでも解放感を感じます。

このレオ・レオニの絵本を読んだときも、宙に浮いたようになり、その色彩のきれいさに吸い込まれそうになります。活字を手放し、レオ・レオニの色彩を眺めていると、自分が真空にいるような感覚になります。そのキレイな色を眺めていると、頭を働かせることが無粋なことに思えてきます。そして、ただ色彩を味わうように誘われていきます。

この絵本は、人のアイデンティティというものを、この上もなく上手に説明しています。「そうそう、結局そうなんだよな」と思えてきます。

ストーリーも素晴らしいし、絵も素晴らしいし、色も素晴らしい。

大袈裟な動きはないですが、目の動き一つで、レオ・レオニは登場人物の気持ちを表現していきます。

とても素晴らしい絵本だと思います。



写真:いろいろな色のビオラ

「人の中で、人は育つ 中学教師鹿嶋真弓」

2007年04月05日 | テレビ


経営コンサルタントの神田昌典さんの本の中で私が初めて読み、そして最も感動したのが『成功者の告白』でした。この本は、一人の青年が会社をやめ起業し成功するまでに起こる出来事を、おそらく神田さん自身の経験やまわりの経営者に対する観察を基に描いたものです。

主人公タクは立ち上げた会社が軌道に乗ったにもかかわらず、資金繰りやチーム運営の面で危機に立たされます。彼は起業の先輩である神崎にアドバイスを求めたところ、神崎は一見ビジネスとは関係ないアドバイスをします。

神崎は「チームを育てることは子育てと同じ」と言います。すなわち、子育てには、まず五・六歳までは母親の無条件の愛情が必要で、そこで子供は自分は安全であるという基本的信頼感を身につけること。それがなければ厳しいしつけは単に子供の恐怖心だけを煽るということ。その安心感を子供にもたせた上で初めて、父親から社会的生活をする上での厳しさを教えることが効果的なこと。

神崎によれば、多くの経営者は子育てを知らないから、まず男性的な厳しさを社員に押し付けようとし、それで会社は混乱し、ルールや決まりごとなどの軍隊式マネジメントで社員を余計に縛り上げることになります。しかし心理的に抑圧され恐怖を感じながら行動している社員から構成されている企業では、社員が病気になったり顧客への対応が上手く行かなかったりなどの問題が出てきます。

神崎はそのような状態に陥ったタクに対して、次のような処方箋を提示します。それは「グッド・アンド・ニュー」というボールを使ったゲームです。

このゲームは、まず6人ぐらいのチームを作り、ボールを一個渡します。ボールをもっている人は一分間ほど、「24時間以内に起こったいいこと、もしくは新しいこと」を話す。話し終わったときに周りの人は拍手します。そして次の人にボールを渡し、渡された人が今度は話します。合計で10分ほど。

神崎はタクにこれを毎日するよう言います。彼によれば、これをすることで、人は出来事のプラスの面を見つけやすくなると言います。いいことというのはなんでもよくい、例えば映画を見て感動した、電車で座れたなど。いいことや新しいことは、情熱をもって語られたり、笑いを呼んだりしやすい。お互いをよく知るきっかけにもなり、今まで暗く淀んでいた雰囲気が明るくなる、という神崎のアドバイスです(p.218)。

本の中では、このゲームをする際にボールを使うことが効果的な理由も述べられています。

こうした少しの「こころをひらくこと」(ギデンズ)で、実際にタクの会社は大きく変わり始めます。

この話しを思い出したのは、NHKの番組で中学校の教室からいじめや暴力をなくすことに成功している教師の番組をみたからでした(「人の中で、人は育つ 中学教師鹿嶋真弓」)。

鹿嶋さんが教室を立て直すために用いた方法の一つが「エンカウンター」(構成的グループエンカウンター)という授業でした。それは次のように説明されています。

「例えば、「愛し、愛される権利」「きれいな空気を吸う権利」「遊べる・休養できる時間を持つ権利」など鹿嶋が提示した10の権利のうち、何が一番大事かを生徒達に話し合わせる。6人ほどのグループに分かれ、それまで話をする機会の少なかった生徒同士も意見を交わす。大事にする権利も、その理由もそれぞれ違う。話し合うことで、互いの価値観を知り、関係が深まっていく」

こうした方法により、生徒たちはお互いが考えていることを知り、コミュニケーションがしやすくなるそうです。またそれにより、例えば授業で分からないことがあったときに生徒は「わからない」と先生に言いやすくなり、学習面の向上も見られるそうです。

この鹿嶋さんが取っている方法は、まさに神田さんが紹介している方法と同種なのだと思います。何か大袈裟なチーム運営の変革をするのではないこと。しかし、ほんの小さなことですが、最初はとても勇気がいることです。自分が大事に思っていたり、自分にとってよかったことを話すのは、とても照れくさいから。しかし、その照れくさいことを話し続けることで、人と感情的な結びつきが生まれることを両者は指摘します。

この方法が、中学校と企業というある面で似た組織で効果を上げているという面も興味深いですね。中学生は成績・受験で業績を上げなければならないというストレスを抱え、社員は売り上げを上げなければいけないというプレッシャーを抱えています。ただでさえ男性的な競争にさらされているのに、その上に管理者が厳しいしつけを施そうとすると、余計に生徒・社員の心理的な抑圧が高まります。その影響として、一部の生徒・社員は管理者に反抗します。

もちろんこれだけで組織がよくなることはないでしょうけど、こうして感情を分かちあい、他の人に承認されていることを確認しあうことが、競争が最もダイレクトに行われている企業や学校という場所では必要なのかもしれません。

カリキュラムを増やす減らすよりも、もっと重要なことが触れられている番組のように思いました。




写真:桃花