joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『グッバイ、レーニン!』

2007年04月15日 | 映画・ドラマ



映画『グッバイ、レーニン!』を見ました。劇場公開時にも見ていたのでこれで二度目。

あらためて見てもとても面白く、かつ身につまされました。

内容は、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツで、主人公である息子がデモ行進に加わっているのを目撃した愛国心の強い母親が昏睡状態に陥り、壁崩壊後の8ヵ月後に目覚めるというもの。彼女は依然危険な状態でわずかなショックにも耐えられず絶対安静が必要な状態です。息子アレクサンダーは西側文化が入り込んでいる今の東ドイツの状態を母が知ることは危険だと思い、今もまだ東ドイツは存続していると思い込ませるために様々な演出をします。しかし…

この映画が伝えるショッキングなエピソードの一つは、かつて東ドイツで尊敬されていた職業に就いていた教師や技術者といった人たちが、体制が転換すると同時にその職から「追放」されていったという事実です。これは映画の中だけでなく実際に起きている(今も進行形の事実だ)ことで、大学教授などもその職を追われ失業者となっています。また福祉の面でも旧東ドイツの人たちはさまざまな冷遇を受けています。

あたかも敗戦国のように多くの人が「公職追放」を受けました。それは東ドイツの人たちに、まさに「あなたたちは敗れたのだ」と思い込ませるに十分なショックです。元々国家の存在とアイデンティティを同一化していた人たちは、肩書きも何も奪われ、社会の中の位置と役割(ドラッカー)をもたない人間と見なされていきます。

外見ではドイツは「立派」な資本主義国のリーダーですが、実際は国民の半分以上が、東ドイツ時代の(秘密警察による弾圧などによる)心の傷や、体制転換に伴う極端な冷遇を味わっているのです。

この映画は、壁崩壊から10年以上経ってもいまだに残る東と西の人々の深刻な葛藤の源泉を、他国の人にもわかりやすく伝えています。

私はこの映画をドイツの映画館で見たのですが、劇場一杯の人たちが一つ一つの場面に同じように大きく反応して、まるで何か国民的行事の中にいるようだったことを覚えています。この映画はエンターテイメントとしても非常によくできた映画ですが、同時にドイツの人たちにとっては自分たちが辿ってきた歴史を思い起こさせ、感情を揺さぶる映画なのです。

日本でも大ヒットしたみたいですが、まだ見ていない方にはぜひ見て欲しい映画です。


写真:ユキヤナギ