淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

卯月妙子「人間仮免中」。この漫画は凄い! というか、余りにも凄まじくて言葉が出ない・・・。

2012年12月21日 | Weblog
 卯月妙子。
 1971年、岩手県生まれ。

 20歳で結婚する。しかし一児をもうけるも、夫の会社が倒産。
 多額の借金返済のために、ホステス、ストリップ嬢、AV女優をやって家計を助ける。
 排泄物や嘔吐物、ミミズを食べるなどの過激なAVに出演することでカルト的な人気を得る。
 ある日、夫が投身自殺を図るのだが、その後、植物人間となり、一年半後にこの世を去ってゆく。

 卯月妙子は子どもの頃、統合失調症に罹(かか)り、それが夫の自殺等が起因して悪化、自傷行為や殺人欲求などの症状のため何度も入退院を繰り返すことに。
 そして2004年、新宿のストリップ場の舞台で踊っていた際、突然、喉をかっ切り自殺を図る・・・。
 
 僕は、卯月妙子なる女性をまったく知らなかった。
 漫画家であるということも知らなかったし、彼女の出演したAVも観たことがなかった(たぶん・・・)。

 その名前は、衆議院選挙があった日、何気なく読んでいた「讀賣新聞」の書評欄の中で見つけた。
 その日は小泉今日子(キョンキョン)が書評を担当していて、彼女の漫画評「人間仮免中」が掲載されていたのである。
 漫画のタイトル「人間仮免中」だけ見て、随分ベタなタイトルだなあとは思ったのだが・・・。

 そのまま「書評」を読み進めてゆくと、キョンキョンがその漫画を大絶賛しているではないか。彼女の興奮ぶりが、読んでいてヒシヒシこちら側まで伝わって来て、「これは、読まなきゃ」と、即、アマゾンで購入した。

 その2日後。
 家に届いたアマゾンの紙包を開けて、すぐに取りかかった。

 ・・・

 なんなんだ・・・この漫画・・・。

 凄まじい。
 申し訳ないが、そんな通り一遍の言葉しか浮かばなかった。
 壮絶というか、唖然として上手く表現をすることが出来ないのである。
 絶句した。

 本の帯に久保ミツロウ氏のコメントが載っていて、「読み終わって、10分ぐらい泣き続けた」とあった。
 僕も、読み終わって、ちょっとだけれど泣きそうになった。
 でもそれは、感動しただとか、哀れで心の底から同情したとか、そんなアホみたいな高みからの感情ではない。
 そういう陳腐な表現、卯月妙子氏に対して失礼である。

 とにかく、読んでもらうしかない。
 漫画自体の表現力は、それほど評価出来るようなものではないかもしれない。でもそんな表層的な言い方を、この「人間仮免中」は軽く超えている。宇宙の彼方まで飛んでいる。

 ここに描かれたことはすべて真実だろう。
 余りにも凄まじい人生なので、漫画を読み始めてからちょうど中間地点、少し息苦しくなって暫しの休憩をいれた。
 それほど凄いのだ、この壮絶な実体験漫画!

 卯月妙子は、夫との死別後、統合失調症が悪化し、様々な精神安定剤等を飲みながら芝居の道へとまい進する。
 そしてその頃に出会った60歳を過ぎた、3度の離婚歴があるボビーさん(もちろん、あだ名である)と同棲生活を始めるのである。

 ボビーさんという一風変わった初老の男性が素晴らしい。
 ここまで男って、女性を愛することが出来るのだろうか? 2人は壮絶な喧嘩をしつつ、深く深く愛し合う。

 それでも卯月妙子は、激しい統合失調症の症状に苦しめられる。
 人を殺したくなる欲求に苦しめられ、幻想に苛まれ、妄想が酷くなり、薬を飲んで精神科へと何度も通うのだが、病は一向に回復しない。。

 彼女には刺青がある。
 背中に般若心経と彫っていて、その後、ボビーさんを深く愛しているという記念に、女性自身にもボビーさんの名前を彫る。

 そんなある日、過剰投薬からか、突然、歩道橋から真っ逆さまに飛び降り、口から堅いコンクリートに激突し、顔面粉砕骨折してしまうのだ。
 ここからが、また凄い。

 目と目が何センチもズレ、片目は失明。顔がぐちゃぐちゃになったのである。
 口も開かず、何か月も妄想の中で混濁し、激痛に襲われ続け、生死を彷徨う。

 彼女は、事故の前は美人だったらしい(ネットで卯月妙子の画像を見つけて見てみたのだが、はっきり分かんなかった)。
 それが本人いわく(漫画の中でのセリフだけれど)「妖怪 油すまし」。
 漫画の中に描かれた顔を見ても、本音を言うと、目をそむけたくなってしまう醜く描かれている。

 そんな醜い卯月妙子に、ホビーは優しく口づける。
 なんて凄いんだ、この男! 僕は多分出来ないだろう・・・。

 ここに書いたのは、あくまでも「人間仮免中」の中のエピソードの、単なる一つに過ぎない。
 あとは自分で「人間仮免中」の漫画を買って読んでみてください。
 本当に、人生変わるかもよ・・・。

 これと少しだけ似通った匂いのするものに、映画「監督失格」がある。
 実在したAV女優と、その監督の十数年間に及ぶ壮絶な恋愛を描いたドキュメンタリー映画である。
 その映画もまた凄まじい映画だった。

 「人間仮免中」の本の後ろの帯には、井浦秀夫という漫画家のこんな言葉も載っている。
 『これは、「愛と冒険の物語」だ』と。

 読んでから既に数日が経ったのに、未だに読後の衝撃が治まらない。

 今年度、最大の衝撃作である。
 個人的にですが・・・。






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