淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

アメリカ都会派文学の旗手、ジョン・チーヴァーの短編小説集「巨大なラジオ/泳ぐ人」を村上春樹の翻訳で読む。「泳ぐ人」は傑作だ!    

2019年02月28日 | Weblog
 今日で2月も終わる。
 明日からは3月だ。
 今年の春は去年と比べて暖かくなる日が多いみたいで、エルニーニョ現象の影響からか、世界的にも気温の上昇傾向がこの先続くらしい。

 4月からは新学期が始まるので、あと1か月間で、前期授業で講義する内容等を整理してパワーポイントに纏め上げなければならないという、ハードな作業が待っている。
 6月の「オープンカレッジ」での講師も頼まれているし、文献も読まなきゃならないし、「ゼミ」への対応もあるし・・・。
 来期は週5コマの授業を任された。
 けっこう、焦る。

 何度もここで書いてきたけれど、今年いっぱい酒を飲むことを止め、音楽CDも一切買わず、講義に使う文献以外の書籍や雑誌類の購入を一切止めるという誓いは、現在のところきちんと守っている。
 昨日あった、異業種の同年代仲間たちとの「飲み会」でも一切アルコールは飲まず、ノンアルコールだけで済ませ、8時には帰宅した。
 なので、最近は「飲み会」の会場まで車で行っている。これってほんとに楽だ。タクシー代も掛からないし。

 禁酒して良かった点は、家に帰ってから、とてもすっきりした頭で、読書や映画鑑賞や、パソコンに文字を打ち込めることだ。
 そういうことからか、最近、本を読む時間や音楽を聴く時間が、前と比べて飛躍的に増えている。本なんて、5、6冊まとめて、同時並行で読んでいる。
 
 その中の一冊が、ジョン・チーヴァー「巨大なラジオ/泳ぐ人」だ。
 ジョン・チーヴァーは1950年代のアメリカ文学界を代表する短編小説の名手で、ピュリッツァー賞も受賞している。
 ジョン・チーヴァーの小説「泳ぐ人」は、バート・ランカスターが主演して映画化もされていて、当時の60年代を代表するニューシネマの傑作たる一本とも言われている。
 もちろん観ました、映画「泳ぐ人」は。

 今回の短編小説集は、村上春樹が、ジョン・チーヴァーの全作品から20篇を厳選して翻訳し、それぞれの小説の冒頭で簡単な解説も書いていて、巻末には、村上春樹と柴田元幸による、「チーヴァーとその時代」という解説対談まで収録されているけれど、これは雑誌「MONKEY」からの転載だ。

 本のタイトルにもなっている、「巨大なラジオ」をまずは読んでから、昔、映画化されて既に映画自体は観ている、ジョン・チーヴァーの最高傑作とされる「泳ぐ人」を読んでゆくことに。

 「巨大なラジオ」はどこかカフカの小説を連想されるような、少し不条理で不気味な感覚を持つ短編小説だ。寓話的と言ってもいい。
 ただ、それよりも、とにかく「泳ぐ人」が圧倒的な素晴らしさだ!
 これまで読んできた中でも(読んできたなんて、そんな誇れるほど読んでなんかいませんが・・・)、ベストテンに入るほどの傑作である。

 アメリカ東部の高級住宅地。
 華やかで賑やかなホーム・パーティーが行われている、太陽が照り付けるある夏の昼下がり。
 パーティーに招かれ、その豪華な家のプールで独り寡黙に泳いでいる男の眼には、周りで酒を飲みながらはしゃぐ男女の姿に対してふとした違和感を覚え、突然、この場所から8マイルほど離れた自宅まで、それぞれ隣接する家のプールを次々に泳ぎながら渡り繋いで行こうと決める・・・。

 簡潔で研ぎ澄まされた言葉の群れ。圧倒的な疎外感と都会の孤独感。静謐で冷たく流れる独特の小説空間。目まぐるしく変化する天候についての鮮やかな描写・・・。
 「泳ぐ人」は傑作である!

 ジョン・チーヴァーは、雑誌「ニューヨーカー」を中心に多くの短編小説を残し、幾つかの長編作品も高い評価を得たということらしいけれど、その家庭生活は不幸続きで、夫婦関係も最悪を極め、凄まじい酒量に溺れていたという。
 しかし酒を断ち、心機一転書き上げた長編小説はベストセラーとなり、ピュリッツァー賞を獲得するまでに至ったのだ。

 巻末の村上春樹と柴田元幸「チーヴァーとその時代」で、村上春樹が最後に語った言葉が、また印象的だった。
 『モラリティをもってしないと描ききれない非モラルな状況がある。アイロニーをもってしか語れない幸福や安寧があり、ユーモアと優しさをもってしか語れない絶望や暗転がある。そう思っていつも小説を書いている』と。

 さすがである。











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