なにかの拍子に時間が空くと、そういえばリビングの網戸張替えしてなかったなとか、ふすまの破れたところを補修しよう、天気が良ければ外壁の塗装も直せるな、などと思いつくことがある。
前宅はもうこの世にはないのだから、それらは不可能なわけだが、やっとかなきゃ、という思いだけは取り残されてしまった。
床を歩くときの足裏の感触とか、畳のしなり具合とか、そういう身体的な感覚は、まだ体に蓄積されている。
転居のとき、自分の性格を考え、とても神経を使ったことがある。
転居後に妙な「里心」がついて、もとの家に帰りたい、などと思い出すのではないかと。
馬鹿げたセンチメンタリズムだとは思うが、時には自分でもどうしようもなくなるときがある。
自分だってわかっているのに、そう思えてしまうのだ。
全く、感情というのは厄介ごとばかりしか生まない。。
もちろん、そうならないような工夫は自分なりにしてきたつもりだ。
退去のとき、空き家になった姿を目に焼き付け、その後更地になった状態も心に留め置くように努めた。
転居後はそもそも生活も変わってきたが、それなりに快適に暮らせる条件を整えて、旧宅時代を忘れられるように努めた。
ただ、やり残しのことは、頭になかったな。。