陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

宮本苑生詩集『あかね雲』

2023-08-07 | 詩関係・その他

     

 宮本苑生(みやもと・そのえ)さんから詩集『あかね雲』をご恵投いただいた。
 宮本さんは東京都住。日本現代詩人会、日本詩人クラブ、日本ペンクラブの
各会員。

 いつもは<あとがき>に触れてから読み出すのだが、たまたま、あとがきを目にしないまま読み
進めて
いたところ、なにか全体が”死者”との語り、あるいは関わり合いを描いていることに気付い
た。
あとがきを開いてみて、なるほどと頷く。
 
  『Ⅰの「ひかり」は、東日本大震災のその年のうちに編んだ個人詩誌「ひかり」に、
   作品「水底の骨」を加え、他は、ほとんどそのままの形で掲載しました。あとがきに
   「震災の犠牲となられた方々にこの小さな作品集「ひかり」を捧げます。」と記しまし
        た。』

 とある。大震災の時、詩を書く者には何ができるのかとか、詩を(あるいは詩らしきものを)
こぞって直截的な事象として書くだけ・・そんなものか?と問われていた。詩を書く人がそう思っ
てそのように問う姿が多かったということは、ある意味での限界とか無力さを感じていたからに違
いない。詩はどうあるべきか、などと私はとても言い得る素養を持ち合わせていないが、宮本さん
のこの詩集に収められている作品群を読み進
めて行くと、亡くなられた人の側とこの世の側の人と
の交感が実に
現実的な感じさえして、こういう表現の仕方に感動した。詩は何をすることが出来る
のかという問いへの、より近接した<コタエ>の一つかも知れない。 

 

    見つけたかしら

  この川は あの川と同じですか
  渦巻き 逆巻いた
  あの川と同じですか

  この私は あの時の私と同じですか
  こんなに儚くなったけど
  同じですか

  随分遠くまで探しにきました
  哀しみだけが点る
  ここは いったい どこですか

  わたしの胸は張り裂けて
  もはや記憶も曖昧です

  私はあなたを探しています
  水の匂いたよりに 探しています

  あなたは 私を見つけたかしら

  蛍になった あなた
  蛍になった 私を
  見つけたかしら

 

発 行  2023年5月10日
著 者  宮本苑生
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  2,000円


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