落ち着いた語り口のようにじっくりと伝わってくる詩には、そうそう出会うことがない。が、藤子氏のこの「荒野譚」の詩編には、不思議と心落ち着かせるものがある。せっかちに読んではいけないような雰囲気を持っている。
「地形」
よく/北へ向かう道の夢をみる/こころのどこかにそれが/潜んでいるからだ/
人にはきっと/それぞれの地形がある (後略)
あとがきにある次の言葉は、藤子氏の詩の根源であろう。
「幸運?にも、自分は生まれ育った土地(の近場)で暮らしている。でもなぜか故郷は遠い。土地や季節、人や時間のうつろいの中、自分の根底にあるのは、荒野感。故郷は帰ろうとすればするほど遠くなってゆく。時間のせいだろうか距離だろうか、あるいは精神だろうか。故郷とはもしかしたら戻ることのできない古びた記憶のことなのだろうか。」
藤子氏は熊本市住。
発行:2013年12月14日
発行所:土曜美術社出版販売
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