陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

寺田和子詩集『七時雨』

2016-07-30 | 詩関係・その他

       

 寺田和子さんの第4詩集『七時雨』が刊行された。
 高校教師時代から高校生の詩活動に関与され、秋田県高等学校文化連盟文芸部会設立メンバーのお一人でもあった。第一詩集『わたしの顔』の前書きで、中学時代の恩師が寺田さんの詩や性格について触れられている。
 (以下引用)小さなノートに詩らしいものを書いてきて「先生、これ詩です」と、批評を求めてきたのは一年生の半ばすぎだったろうか。ほとんど毎日のように彼女はつくることをはじめた。(略)中学を卒業するまでには、そのノートが五、六冊以上になっていたはずである。(引用終)
 寺田さんが教師として詩人として生徒に深くかかわってきたのは、こうした中学生の時に感じた恩師の姿を見据えていたからかも知れない。


 この度の詩集『七時雨』の中から、第一行目が持つ意図、効果が際立っている「八月のモニュメント」と題する次の作品を紹介したい。

     「八月のモニュメント」

  
  一九四四年 私は生まれた
 
  二〇〇八年夏 ハーメルンの朝
  古い教会で見た大きな二本の角に
  かかげられた十字架
  一九一四~一九一八・一九三九~一九四五
  刻まれた数字に足が止まる

  リーベルスドルフ村の墓地にも
  同じ数字を刻んだ石碑があり
  その両側の墓碑は
  十代から四十代の男性ばかり
  二十歳と十八歳の息子を持つ友の
  声が震えている

  ヒロシマの日
  マールブルクのエリザベス教会に
  バッハのオルガン曲が響く

 

 発行日  2016年7月23日
 出版   書肆えん
 定価   2000円+税


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