仙台の秋亜綺羅(あき あきら)氏から、詩集「透明海岸から鳥の島まで」が届いた。
挟まれていた私信によると、なんと、2冊目の詩集だという。発行詩集はもっとあると思っていたが、あとがきを読んで感じることがあった。
”この詩集の中で、どうしても詩になれなかった三つの日付”があるという。祖父が死んだ日、東日本大震災の日、東京に住んでいた頃、恋人がアパートから飛び降りた日。恋人がアパートから飛び降りた37年前から”自分の言葉を見失った”と書く。
「鳥の島」
机の上の銀河に
チョコレートのかけらが浮かんでいる
あなたの歯型が残ったままだ
三十七年になるかな
もう死にたいわけじゃなく
もう忘れたいわけじゃなく
遠泳
透明海岸から鳥の島まで
開封して手にとって、あとがきや作品をちょっとそのままの姿勢で読み込んでいた。秋氏と直接会ったことはない。が、若い頃に某商業詩誌で活字になっていたいわば同期。バリバリ詩も評も書いていた人である。年齢も同じ。違うのは、秋氏の才能。そして考え方、表現力、パフォーマンス、行動力か。そんなことを思っていた。思えば、私もある事がきっかけとなって長い間、人から逃げ詩から逃げ本を読むことから逃げ、そして言語失調になっていたことがある。そこから出ることが出来たのは、ひと言で言えば、人とのつながりであったような気がする。人から助けられたという思いがある。
心を空っぽにし、寝転んで、あるいは腹ばいになり、炭酸を飲んで、時には詩語を口にしてみたり、行間か頁をめくる動作の間に過去形を呼び戻してその詩行に移入してみたり、ギンギンに冷やしたビールをグビリとやってみたり・・・しながら時間をかけて読んでみようと思っている。何か書ければ儲けもんだ、が・・・。(そんな余裕はないか)
発行日:2012.08.31/発行者:小田久郎/定 価:1800円+税