上の図は文字を短時間表示する状態を表現したものです。
図Aはスクリーンに「会議」という文字をT1ミリ秒表示して消す状態を示しています。
図Bは「航海」という文字をT1ミリ秒表示し、消してからT2ミリ秒後に「構想」という文字をT1ミリ秒表示して消す状態。
図Cは「健康」という文字をT1ミリ秒表示し、消してからT2ミリ秒後「究極」という文字をT1ミリ秒表示し、消してからT2ミリ秒後「新聞」という文字をT1ミリ秒表示する状態を示しています。
つまり同じ場所に表示時間をT1ミリ秒、表示間隔をT2ミリ秒として文字を短時間表示する状態を示しています。
たとえば文字を10ミリ秒(百分の一秒)とごく短い時間表示した場合でも、「会議」のように二文字であっても読み取ることができます。
ところがBの場合のように、最初の文字を10ミリ秒表示した後、消してから10ミリ秒とごく短時間後に別の文字を表示した場合、あとに表示した文字は読み取れますが、最初の文字は読み取れません。
最初の文字が表示されてその文字が目には見えても、読み取る前に別の文字が表示されて、そちらに注意が向けられてしまうために、最初の文字が分らなくなってしまうのです。
目には一度見えても、脳が読み取り作業をしなければ短時間のうちに視覚記憶が消えてしまうので、どのような文字を見たのか分らなくなるのです。
もし最初の文字が消えてからすぐに次の文字が表示されるのでなく、0.2秒(200ミリ秒)とか、ある程度間をおいてから次の文字を表示すれば、最初の文字も読み取ることができます。
見るのはごく短時間でもよいのですが、見たものを脳で処理する読取作業のほうに時間がかかるので、すぐに次の文字が表示されると最初の文字の読み取り作業は実行されず、あるていど間をおけば最初の文字も読み取れるのです。
それではCの場合のように3回、ごく短時間だけ文字を表示した場合はどうなるでしょうか。
Bの場合の結果から考えれば、三つ目の文字列だけが読み取れ、前の2つの文字列は読み取れないと推測されます。
しかし実際に試してみると、二つ目の文字列だけが読み取れたり、最後の文字列だけが読み取れたりします。
真ん中の文字列だけが読み取れる場合というのは、二つ目の文字列に注意が向けられると、あとから表示される三つ目の文字列は抑圧されて意識されないのです。
文字の表示が3回ぐらいではなく200回とか、多数回連続的に表示された場合はどうなるかというと、この場合は文字が途中何回か、ときどき読み取れます。
読み取っているとき続く文字は目に入っても意識されず、読取が終わってからそのあと表示される文字に注意が向けられて読み取られるのです。
本などを読むときも、目を速く動かしてもすべての文字を読み取れるのではなく、ところどころの文字しか脳では読み取れていないのです。