テレビなどに文字が流れるテロップは、実際には上の図のように一つづつ文字がずらされて表示されるものです。
目には文字が動いているように見えるため、文字の動きに目を合わせようとするため静止している文字を読むより読み取り速度が遅くなります。
アナウンサーがニュース原稿を読むときの速度は、一分間に400文字程度だということですが、テロップの表示速度はそれ以下です。
日本人の大人が本を黙読するときの速度は、およそ600文字程度とされているので、テロップはそれに比べるとかなりゆっくりしています。
それにもかかわらず、ゆっくり感じるどころか逆に速く感じるのですから、文字が動くほうが読み取りにくいのです。
かりに一分間に300文字の表示であれば、一秒間には5文字ということになり、文字が静止した状態であればかなりゆっくりとした読取速度です。
文字を読み取るとき一目で読み取れる範囲を読視野といいますが、文字が動いてしまうと読視野ガ狭まってしまうため、一目で読み取れる文字数が少なくなり、読取速度が遅くなるのです。
まん中の図は文字を7文字ずつ仕切ってあります。
目を動かさないでハッキリ読み取れる文字数は7文字程度というので、文字をハッキリ見て読み取っていくには、7文字ずつに区切って順に見て行けばよいと考えられます。
しかし実際に7文字ずつに区切ってから、一桝ずつ読んでいこうとすれば、文字はハッキリ見えても、読み取り速度は桝で区切られている場合よりもかなりおくれてきます。
心理学の実験では7文字の窓枠を作り、枠に入る7つの文字以外には見えなくするのですが、その場合は文字速度が遅くないと読みきれず、枠がない場合に比べると速度ばかりか理解力が非常に落ちるとされています。
見える枠が機械的に決められてしまっているため、語句のつながりが不自然に切られてしまっているためですが、ハッキリ見えなくても枠の外の文字が見えないことが影響しているのです。
まん中の例は単に7文字ごとに囲みを入れているだけで、囲みの外側は見えるのですが、文は読み取りにくくなり、読取速度も落ちます。
囲みの外側が見えるのに、囲みがあると自然に意識が囲みの中に集中されてしまいます。
そのため、いつの間にか読視野が狭められ、読み取り速度が落ちてしまい、読解力も落ちてしまうのです。
読視野(つまり中心視野)だけが文字を読むのに必要なのではなく、解像度の低い周辺視野も文字をスムーズに読むために必要なのがわかります。