左側の図を見ると6本の縦線は垂直線なのですが、少し斜めに見えます。
心理学の本によく紹介されているツェルナーの錯視図というのですが、なぜそのように見えるか説明されることはあまりありません。
上下にある●の左右にある2本の線について見ると、交差している斜めの線に上の部分が手前に見え、下の部分がおくにあるように見えます。
上の●の部分が目に近く見え、下の●部分が遠くに見えると感じるため、上の部分を見るときは無意識のうちに焦点が近距離に合わせられます。
逆に下のほうを見るときは焦点距離が遠めに合わせられます。
その結果上のほうがやや小さく見え、下のほうがやや大きく見えるのですが、焦点の調節は無意識のうちに行われるので気がつかないのです。
ここで上の●と下の●を同時に見ると両方とも焦点距離が同じになるため、上の部分も下の部分も同じ大きさに見えるので、2本の縦線は垂直に見えるようになります。
どうしても縦の線が斜めに見えてしまうというのは、無意識のうちに視線を動かしてしまうためです。
同じように上下の●を同時に見ても右の図の場合は6本の横線は水平に見えず、やや斜めに見えるかもしれません。
この場合は左右で左の黒丸と右の●部分で左が手前に、右が奥に感じられるために左が狭く見えるので、横線が斜めに見えるのです。
そこで上下の●を同時に見るのでなく、左右の●を同時に見て視線を動かさなければ、横線は水平に見えるようになります。
どちらかといえば右の図のほうが難しいのは、左右の●を同時に見るということが、左右に目が付いているため容易にできるため、つい視線を動かしてしまうためです。
左の図の場合は上下の視幅を広げるので、上下の●を同時に見るのに注意が集中され、視線を動かさずにすむため縦線は平行に見えるのです。
文字を読むとき、横書きの文字を読むほうが疲れやすいのは、慣れの問題と思われがちですが、うえのような結果から考えると、目の使い方にも原因があるようです。
横書きの文字を読むときは、横の視幅を広げようとしなくても目が左右についているため、ある程度視幅は広くなっています。
そのため焦点距離を近くしたまま文字を読み続けがちで、伏目のまま固視に近い状態を続けがちです。
そのため楽な見方をしているつもりなのに、毛様体筋は緊張して眼は疲れやすいのです。
横書きの文字を読む場合でも、縦方向にも視幅を広げたほうが眼を疲れさせないばかりでなく、文意を把握する上で有利なのです。