日本語の横書きは読みにくいし、眼が疲れやすいという意見があります。
ほとんどの新聞や雑誌がいまだに縦書になっているのは、横書きが読みにくいためで、もし横書きにしたならば新聞などは売れないなどといわれたりします。
単に慣れの問題ではなくて、日本語の場合は横書きにすると、生理的に疲れるというのです。
この意見は経験に基づいているのでしょうが、経験に基づく実感というのは慣れからきている場合が多いので、もしかするとやはり、単なる慣れの問題なのだという可能性があります。
たとえば上の図のように一行の文字数を同じにして縦書と横書きの文を読んでみます。
新聞と同じ1行11文字としてありますが、横書きにしてもさほど読みにくいという感じはしないのではないでしょうか。
横書きでも1行11文字程度だと、視線を横に動かさないでもよみとることができるので、次の行に視線がすぐに移るため、自然と縦方向に視野が広げられます。
普通のA5版の本の場合のように、1行の文字数が36~38文字もあれば、一目で1行を読み取ることができないと、視線は横に動くので上下の視野が狭くなり、焦点距離が固定しがちになります。
その結果眼が疲れたり、読みにくいと感じるのですが、このように1行の文字数が少なくなれば読みにくさは減るのではないでしょうか。
下の図の横書き文は1行25文字なので、まだ一目では1行を読み取ることは難しいかもしれませんが、それでも36字以上の場合と比べれば文の見通しがよく読みやすくなっています。
新書版の本では横書きの場合、1行の文字が27字程度が普通のようですが、もう少し少なくして、22~24字程度にすれば読みやすくなるかもしれません。
一目で読み取れる文字数は横書きの場合のほうがやや多いので、1行の文字数があまり多くなければ、視線を横に動かさずにすみ、次に続く行が目に入りやすくなるので文の理解がしやすくなるという利点もあります。
縦書でも横書きでも1行の文字数が多くなると、一目では把握できないだけでなく、無意識のうちに注意の幅が狭くなってしまいます。
1行の文字数が多いほうが、一目で把握しようとする文字数が多くなりそうな気がしますが、実際はある程度限定されているほうが、把握できる文字数が多くなります。