さて、今日は日本分子生物学会のフォーラムでの私の発表のつづきでしたね。スライドにそって説明をしていきましょう。
これが、タイトルのスライドです。「日本の大学におけるイノベーション力強化について」という、とても高尚なタイトルですね。果たして、タイトルに恥じないお話ができるかどうか。
このスライドの下の方に「本日の内容は発表者が所属する機関の見解ではなく、豊田個人の私的な考えである。」という断り書きを入れました。そもそもこのブログ自体も、また、ツイッターやフェイスブックで書いていることも、機関の公的見解ではなく、あくまで豊田個人の私的な考えを書いたものです。しかし、このようなお断りをしたとしても、気休めだけかもしれませんね。最近、ツイッターのうかつなつぶやきで、大問題になったケースがけっこうありますからね。
私に、このフォーラムでしゃべるように依頼がきたきっかけは、前にもお話しましたが、今年の7月4日に日経新聞に掲載された投稿記事です。「質高い論文、日本シェア低下」「イノベーション力強化急務」「研究に数値目標設定 人員・時間の確保を」という見出しでした。
日本の質の高い学術論文数は低下している。特に医学論文の低下が著しい。中でも主要な論文産生機関である国立大学の論文数が減り、その中でも地方国立大学の論文数減少が顕著である。その要因としては、研究者(補助者も含む)の数のや研究時間の減少といった人的インフラの損傷が考えられる。国として、どの程度質の高い論文数を産生するのか、その数値目標を定め、研究者数と研究時間が減少しないようにする手立てが重要である、というような主旨でした。
今回の講演の主旨も、だいたい、この新聞記事で主張したことと同じなのですが、新しい分析も加えて、さらに根拠を明確にしようとしました。
このスライドはイノベーションの定義を説明したもの。「イノベーション」の定義って、なかなかやっかいなんですよね。少し前までは、世の中をがらっと変えるような技術革新、という狭い意味で使われていましたが、最近では、社会システム等の革新も含めたもっと広い意味で使われることが多くなっているようです。技術革新だけではなく、広く革新を含め、また、非連続・画期的イノベーションだけでなく、連続的・漸進的なイノベーションも重要である、とされています。
では、イノベーション力はどういうことで左右されるのでしょうか?それをまとめたのが次のスライドです。
イノベーションには多くの要素が関係すると思いますが、ここでは「研究・開発者の能力×研究・開発マネジメント×研究・開発の場×研究・開発費×研究・開発者(補助者も含む)の数×研究・開発時間」をあげました。
そして、今回の私の発表では、研究・開発者の数や研究・開発時間という、まさに泥臭いインフラに焦点を当てています。私の前にお話しされた和田先生は、研究・開発者の能力やシステムという、華麗でハイレベルのお話でした。
イノベーション力を推測する指標として、今回使ったのは注目度の高い論文数。注目度は、論文の被引用数で評価します。論文の”質”と言ってもいいでしょう。学術論文の一部はイノベーションに結ぶつくわけですが、注目度の高い論文ほど、経済効果の大きいイノベーションに結びつきやすいと考えられています。もっとも、経済効果の高いイノベーションに結びつくと思われる論文ほど、注目度が高いと考える方が、説明しやすいかもしれませんね。
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論文数分析の方法はトムソン・ロイター社の学術文献データベースとPubMedという公開されているデータベースを用いました。PubMedはネット上で無料で使えるデータベースですが、医学関係に限られていますね。
それと、文科省の科学技術政策研究所(NISTEP)の阪 彩香さんによる論文数分析の報告と、神田由美子さんによる研究者×研究時間に関する調査報告のデータを使わせていただきました。
特に、神田さんのデータについては、12月15日の発表当日にデータを公開したという情報をいただいたので、発表直前にスライドを作って差し替えました。まさに泥縄なんですが、そんなことを可能にした最近のパワポの進歩には感謝をしています。
つづく
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