マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" Success is counted sweetest "( 成功は、この上なく甘美なもの )

2014-07-14 01:29:14 | アパラチアン山脈

 

(3)

 

  

 エミリー・ディキンソンの詩を、グレッグは思い出していた。
 
   "  Success is counted sweetest
        By those who ne'er succeed.
        To comprehend a nectar
        Requires sorest need.  "
   
  ( 成功したことがない者には、「成功」は、この上ない甘美なものだ。
    のどが渇き切った者に、甘い飲み物の味がわかるように )

 食事をしながら、目の前にいる女性がまぶしく見えた。
 いつの日にか、この女性と生活をともにしながら、庭で遊ぶ男の子を二人で見守る姿が、ちらっと頭をよぎったが、すぐに自らのそのような不遜な思いを後悔しながら、取り消した。
 今の自分はのどが渇ききった者なのか、妻と子供と3人で庭で遊ぶ姿が、成功なのかという思いが浮かんできた。


 彼女に初めて会った時は、薄暗い図書館の中で、彼女は、地味な服を着ていたし、眼鏡をかけていて、そんなに印象的ではなかった。
 しかし事務室で彼女とまじかに接した時、グレッグに応えるときの、いかにも優雅な態度、話し方、知的な振る舞いに、何かしら魅かれるものを感じていた。
 グレッグは、南部の生まれで、初めてニューヨークに出てきたとき、人々が早口で話す言葉についていけなかった。
 彼には、ニューヨーカーたちのしゃべり方が、なんとも奇異に思えて、馴染めなかったのである。今では、もうニューヨークの人たちの早口の話しぶりにも慣れていたが、レベッカの話し方は、ニューイングランド風で、ニューヨーク弁とは違っていたが、少し土地訛りと言うか、ニューヨークでは聞きなれない話し方が、心地よく響いてきたのである。

 
 この機を逃しては、一生彼女とは縁が切れてしまうような気がして、勇気を鼓してホテルから彼女に電話をしてしまった。

   "  Are you making a date just after you have arrived ?  " (着いたばかりなのに、もうデートなの? )宿の主人に冷やかされながら、ホテルを出てきた。

 彼女と食事をとりながら、それとなく彼女の顔を見つめていた。
 今まで会ったどの女性より女性的で、目の色は、あくまで透き通るようなブルーで、まるでエリザベス・テイラーの目をのぞき込んでいる
気持ちだった。
 彼女が話す言葉が、音楽のように心地よく響いてきた。

  "  Where do you wanna go after you stay overnight here ?  " (今夜ここに泊まって、それからどこにいくの? )
  "  I'm not sure.  I have no exact planning.  " ( 決めてないんです。はっきり計画を立ててきたわけでないので )
  "  I would like to go over Canada when I left New York, but I'm not sure about that now.  "  ( ニューヨークを出るときは、カナダのほうに行きたいと思っていたのですが、今はもうわかりません )

  " Tomorrow I may stop by at the library, may I ?  " ( 明日図書館によってもいいですか? )
  "  Sure !  " ( もちろんです )