レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

ジェラード保安官がアイスランド語をしゃべったら

2014-03-24 05:00:00 | 日記
今週の木曜日に、移民の人たちにアイスランド語を教えている先生方が作っている「イースブルー」(氷の橋)という会の集まりで「移民にとってのアイスランド語の学習とインテグレイションの現実」みたいな題で話しをすることになっています。

私は学者でも先生でもないので学術専門家的な角度からの考察はできないのですが、移民牧師としていろいろな人たちの話しを聞いてきましたので、「現実専門家」的な角度からの話しはできます。実際これまでに相当そのような話しをしたり、意見を新聞等に書いてきました。

で、今回久しぶりにそのようなテーマで話すよう依頼されたのですが、同じことを繰り返し話すのでは申し訳ないと思い、昔書いたものを読み直してみたりしました。「あれ、これホントに俺が書いたの?すごいじゃん」とか思ってしまうこともあります。

そういうものを読み直してみると、その文章のもとにある自分自身の体験とかも必然的に思い出されてきます。確かにもうこちらにきてからマル二十二年になろうとしていますが(四月二日が二十二年記念日です)、ワタシの感覚ではそんなに長い期間という意識がないので(三十歳過ぎるとそんなものです)、忘れてる部分があるというのは意外な感じがしました。

こちらに移ってからの始めの数年間はもちろん相当タフな日々でした。子供たちが幼少だったこともあり、言葉の勉強の時間とかをひねり出すのに四苦八苦してました。当然娯楽の時間とかもほとんどなかったのですが、それでもハリソン・フォードの「逃亡者」はレンタルビデオで年中借りてきて見ていました。

今では「昔の映画」なんでしょうが1992年の大ヒット作です。無実の罪のハリソン・フォードが必死に逃げ回りながら真犯人を追いつめていく話しで(実話がもと)、絶対に諦めない、というのが随分と元気メッセージになりました。

その「逃亡者」では、フォード演じるキンブル医師を追いつめていくUSマーシャルの保安官役のトミー・リー・ジョーンズが、アカデミー賞の助演男優賞を取りました。相当なキャラクターでしたね、このジェラード保安官は。本当にタフな男はこういうもんだ、みたいなキャラでした。

「(地域の)犬小屋から鶏小屋までひっくり返して捜せ」とか「(もしキンブルが溺死しているなら)その死体を食った魚を捕らえろ」とか強気の名ゼリフでキメてくるので、格好よさが「言葉」と結びついていました。




ジェラード保安官役のT・L・ジョーンズ


以前にも書いたことがありますが、ワタシは映画やテレビでヒーローを見るとすぐに同化する人間です。ヒーローとはもちろんジェームズ・ボンドやクァイ・ゴン・ジンです。ヨーダや杉下右京はちょっと違う。

ですからジェラード保安官のように強気でしゃべってみたかったのですが、その頃はアイスランド語の「ゴーザン・ダイイン」を習い始めたばかりの頃で、まったく幼稚園の年長さんにも及ばないくらいでした。

どんなに格好つけようとしても、言葉がとちったりしどろもどろになるとすべてコメディ化してしまうというのは恐ろしい現実です。外国人相手に言葉で優位に立つのはいとも容易いことですが、そんなのはまやかしの優越であることを忘れてはなりません。

自分の願いと現実があれほどクロシロ分かれたのも珍しい時期だったと思いました。もっともジェラード保安官がアイスランド語をしゃべらねばならなかったら、ワタシとそんなに大差はなかったと思いますが。いや、彼ならそもそも世界中どこへ行っても英語(米語)で押し通すか?

とにかく「アイスランド語を普通にしゃべりたい」というのがその頃の「夢」だったのははっきりと覚えています。ちゃんとしゃべれるということは決して当たり前のことではありませんね。

二十年経ちましたが夢にはそれほど近づいてはいないですねえ...アイスランド語をぺらぺらになるというのはもうほとんど諦めています。つっかえつっかえでやりくりをするのはもう「受け入れて同伴しなければならないパートナー」と認識するようになりました。

まあ、もし神様が「みっつの願いを言ってみよ。かなえてやるぞ」と情けをかけてくれるなら、そうですねえ...そのうちのひとつは「アイスランド語でタンカを切ること」が入るかもしれません。あとは宝くじと素敵な出会いかな...へへ)

インテグレションからは話しが大きくズレてしまった、というか本題に入る前で終わってしまいましたが、それでも要は「理想、目標を持つということ」はインテグレイションの過程の大切な要因です。そしてその目標を「達成可能なものに修正していく」ということも大切です。高望みの結果が挫折、では元も子もないですから。

それはつまり新しい環境の中で、もう一度本当の自分自身のあり方を見出し、さらにそれを実現していくことに他ならないのです。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is

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