前回「移民にとってのアイスランド語の学習とインテグレイションの現実」について書き始めたのですが、あまり進展しなかったのでもう一度です。今回はもうちょっと「アイスランド語で暮らす生活」の個人的実態をご紹介してみたいと思います。
まず当たり前のことですが、言葉の習得の難易さや修得度というものは個々人によって相当な差があります。能力にも差があるでしょうし、言葉を学習する環境にも影響されます。日中働いている人と大学への留学生では、当然ある期間内でのアイスランド語の修得度には違いが出るでしょう。
ですから特定の誰かの個人体験をもとにしてそれをそのまま一般化することには無理があります。というわけで以下にお伝えしますことはワタシ限定の生活事情です。他の人にも共通する点もあるかもしれませんし、全く違う点も多いことでしょう。
さて前に書いたことの繰り返しになってしまいますが、たとえ二十年以上住んでいても私はアイスランド語ペラペラではありません。読み書きはまあまあですが、会話に関しては進歩がないですねえ。特にしゃべる、というのはもう限界です。
また、聞いて理解する、というのはしゃべるのと違い「分かった振りをする」ということができる分だけどれだけ自分に能力があるのか曖昧になります。自分の「振り」に自分で気づかないことだってありますから。
私の場合、例えばあるテーマ(人権とか)についてのレクチャーを聞いて理解することはそれほど苦にはなりません。テーマが分かっているので、分からない部分を脈絡で判断することができるからです。
難しいのは例えばコーヒーブレイクでの雑談などです。話題がコロコロ変わり得るので追いついていくのが大変なのです。しかもあるトピックについて前提となる知識を持っている人いない人のバラツキがありますので、そもそも話しのとっつきから理解できない、ということさえあります。
そうなってくると、もうアイスランド語の会話はBGMの一部みたいなもので、聞いてはいても頭には入ってきません。それでも不思議なもので自分に関係のある話しになると途端にハッキリと聞こえてきます。
アイスランド語での生活環境の中で、人間の能力とは大したものだと思わされることがあります。多分これは私だけではないでしょう。それは大切なことが話されている状況と、どちらでもいいことが話されている状況とを区別する本能が磨かれてくることです。
私は一生懸命理解しようとして聞かないと分からないことが多いので、アイスランド語を聞くということがかなり疲れる作業になります。ですから、この「仕分け本能」がないと午前中でダウンしてしまうことでしょう。どうでもいいとこは流して重要なとこに集中する、というプログラムが無意識のうちに作動しています。
「しゃべる」ことに戻りますが、もうかなり前からアイスランド語で冗談を言おうというのはギブアップしています。面白い合いの手が下って来ても、どう言えばいいか考えているうちにタイミングを逸してしまいます。というわけでワタシはアイスランド人との付き合いの中では「笑いのない男」化してしまいました。
「可哀想に」と思うでしょ?そうなんです。可哀想なんです。それでも天は救いを授けてくれます。トークに弱いワタシにとっての救世主はネットの発達でした。
電話という会話主体の媒体のみ主流から、メイルという読み書き主体の媒体の併用は本当にありがたい変化でした。電話では聞き逃してしまえばそれっきりですが、メイルは何度でも読み返せるし、いざとなれば他人の助力も当てにできます。
さらにFacebookなどのネット媒体。普段言いそびれているジョークもFacebookでならきちんと考えたうえで発信できます。書いている最中に文法が不確かならチェックできますし、しゃべるのと違ってゆとりがあります。
賛否いろいろあるでしょうが、Facebookは私にとっては相当重要な自己実現の場になっていると感じます。もともと「書く」ことは得意な方なので要領良く四五行にメッセージをまとめる、ということも苦にはなりません。
もっともひとつだけ副作用があります。書くことに限ってなら結構上手にアイスランド語を使いますので、Facebookなどを見た人が私のことをアイスランド語ペラペラ人間なのだろう、と思い込んで接触してくることがあることです。
これは困りますね。なんかせっかくの期待を裏切っているような気がして...そうじゃないんだよ。言葉っていろいろな側面があるから、書けてもしゃべれないことだってあるし、ある分野は強くても、苦手の分野があったりするんだってば。魚の名前を知らなくても人生談義はできちゃったりするんだから...
というようなケイオスの中で生きているのがワタシのアイスランド語生活でした。でもきっと邦人の方々皆がワタシのようではないと期待します。...日本人の名誉のために。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
まず当たり前のことですが、言葉の習得の難易さや修得度というものは個々人によって相当な差があります。能力にも差があるでしょうし、言葉を学習する環境にも影響されます。日中働いている人と大学への留学生では、当然ある期間内でのアイスランド語の修得度には違いが出るでしょう。
ですから特定の誰かの個人体験をもとにしてそれをそのまま一般化することには無理があります。というわけで以下にお伝えしますことはワタシ限定の生活事情です。他の人にも共通する点もあるかもしれませんし、全く違う点も多いことでしょう。
さて前に書いたことの繰り返しになってしまいますが、たとえ二十年以上住んでいても私はアイスランド語ペラペラではありません。読み書きはまあまあですが、会話に関しては進歩がないですねえ。特にしゃべる、というのはもう限界です。
また、聞いて理解する、というのはしゃべるのと違い「分かった振りをする」ということができる分だけどれだけ自分に能力があるのか曖昧になります。自分の「振り」に自分で気づかないことだってありますから。
私の場合、例えばあるテーマ(人権とか)についてのレクチャーを聞いて理解することはそれほど苦にはなりません。テーマが分かっているので、分からない部分を脈絡で判断することができるからです。
難しいのは例えばコーヒーブレイクでの雑談などです。話題がコロコロ変わり得るので追いついていくのが大変なのです。しかもあるトピックについて前提となる知識を持っている人いない人のバラツキがありますので、そもそも話しのとっつきから理解できない、ということさえあります。
そうなってくると、もうアイスランド語の会話はBGMの一部みたいなもので、聞いてはいても頭には入ってきません。それでも不思議なもので自分に関係のある話しになると途端にハッキリと聞こえてきます。
アイスランド語での生活環境の中で、人間の能力とは大したものだと思わされることがあります。多分これは私だけではないでしょう。それは大切なことが話されている状況と、どちらでもいいことが話されている状況とを区別する本能が磨かれてくることです。
私は一生懸命理解しようとして聞かないと分からないことが多いので、アイスランド語を聞くということがかなり疲れる作業になります。ですから、この「仕分け本能」がないと午前中でダウンしてしまうことでしょう。どうでもいいとこは流して重要なとこに集中する、というプログラムが無意識のうちに作動しています。
「しゃべる」ことに戻りますが、もうかなり前からアイスランド語で冗談を言おうというのはギブアップしています。面白い合いの手が下って来ても、どう言えばいいか考えているうちにタイミングを逸してしまいます。というわけでワタシはアイスランド人との付き合いの中では「笑いのない男」化してしまいました。
「可哀想に」と思うでしょ?そうなんです。可哀想なんです。それでも天は救いを授けてくれます。トークに弱いワタシにとっての救世主はネットの発達でした。
電話という会話主体の媒体のみ主流から、メイルという読み書き主体の媒体の併用は本当にありがたい変化でした。電話では聞き逃してしまえばそれっきりですが、メイルは何度でも読み返せるし、いざとなれば他人の助力も当てにできます。
さらにFacebookなどのネット媒体。普段言いそびれているジョークもFacebookでならきちんと考えたうえで発信できます。書いている最中に文法が不確かならチェックできますし、しゃべるのと違ってゆとりがあります。
賛否いろいろあるでしょうが、Facebookは私にとっては相当重要な自己実現の場になっていると感じます。もともと「書く」ことは得意な方なので要領良く四五行にメッセージをまとめる、ということも苦にはなりません。
もっともひとつだけ副作用があります。書くことに限ってなら結構上手にアイスランド語を使いますので、Facebookなどを見た人が私のことをアイスランド語ペラペラ人間なのだろう、と思い込んで接触してくることがあることです。
これは困りますね。なんかせっかくの期待を裏切っているような気がして...そうじゃないんだよ。言葉っていろいろな側面があるから、書けてもしゃべれないことだってあるし、ある分野は強くても、苦手の分野があったりするんだってば。魚の名前を知らなくても人生談義はできちゃったりするんだから...
というようなケイオスの中で生きているのがワタシのアイスランド語生活でした。でもきっと邦人の方々皆がワタシのようではないと期待します。...日本人の名誉のために。
応援します、若い力。Meet Iceland
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