レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

注)今、アイスランド人は怒っています!

2016-04-10 05:00:00 | 日記
日本では新年度が始まりましたね。入学式や入社式でルンルンの期待感に満ちた人が溢れていることと想像します。あ、そうそう、野球も開幕ですよね。
私はプロ野球の –といっても今は大リーグ一辺倒ですが- の開幕期は大好きです。

まだ横並びなので、皆が希望とやる気に満ちているあの雰囲気が好きなんです。五月になってしまうと、すでに「アキラメター」組が出てきてしまいますが...

そんなウキウキの日本とは大きくかけ離れて、アイスランドでは三月の下旬から始まった騒ぎが、四月に入ったとたん大爆発した感じで大騒ぎでした。っていうか、まだ続いてます。

ヨーロッパ各地、日本でもニュースになっていたようですが、例の「パナマ·ペーパー」の中にアイスランドの現首相、シグムンドゥル·ダヴィ·グンロイグスソン氏の名前が登場したことに国民が激怒してしまったからです。

金融経済に弱い私は、すべてをきちんと理解しているわけではないのですが、要点だけかいつまんでご紹介してみたいと思います。




土曜日の新聞の一面見出しも「何という一週間」


この「パナマ·ペーパー」というのはものすごい量に登る機密情報漏洩で、タックス·ヘブンのパナマにあるMssack Fonsecaという法律事務所からハッカーが盗み出した情報ということです。

この膨大な機密情報はドイツの新聞社を経て国際調査情報ジャーナリスト連合で一年以上に渡って解析されてきたとのことです。だから突然降ってきたわけではないんですね。

で、おそらく「バレるのは時間の問題」と思ったのでしょうが、グンロイグスソン首相夫人のアンナ·ステラさんが自分のFacebookで「私は2007年にWintrisというオフショア会社を設立しました。会社は(やはりタックス·ヘブンの)英領ヴァージン諸島にあります。その会社からアイスランドの主要銀行に五億クローネの投資をしていましたが、2008年の金融恐慌でそれらの投資を失いました」

五億というのは個人の資産としては半端ではない気がするのですが、ステラさんの父親はアイスランドでToyotaの総代理店を所有していた人で、がっぽり儲けた後で2005年に会社を売却。その資産がステラさんに遺産として入ってきたようです。

そのお金がどのようにヴァージン諸島に渡ったか、というあたりから胡散臭くなってくるのですが、タックス·ヘブンの「利点」?のひとつは所得隠しとマネーランドリーだそうで、疑わしいことこのうえなし。

で、アイスランドの銀行の破綻で預金や投資を失った外国人の人たちは当然賠償を求めました。英国などでは銀行が破綻した場合、100%の保障を国の責任ですることが決まっているようですが、アイスランドでは確か当時の法律で70%だったと記憶しています。(ちょっと不確か)

当然その後外国の預金者、投資家たちとアイスランドの間で激しい喧嘩となったわけです。その債権者のひとりがステラさんのわけで、彼女は5億クローネの権利を表明しています。

外国の債権者たちを抑え込むという期待を負って2013年に首相になったシグムンドゥル氏はジレンマのど真ん中、ということになるようです。




2万人余が集まった月曜の抗議集会
Myndin er ur Visir.is/Einir


ところが、そこで終わりではないのです。後日「パナマ·ペーパー」の詳細が伝わってくると、この夫人のオフショア会社は、なんともともと夫人とシグムンドゥル氏の半々の共有資産だったのです。シグムンドゥル氏は、2009年の大晦日に自分の所有する50%を夫人に1ドルで売却しました。

シグムンドゥル氏は2009年の四月の選挙で国会議員となっていますが、実はその直前の三月に、「国会議員は自分の所有する資産や会社を登録すべし」という法律ができています。しかし、彼はこのタックスヘヴンの資産を登録していませんでした。

そして夫人に自分の所有する半分を1ドルで売却した後はこの義務から晴れて解放されています。夫人の資産は登録を義務付けられていないからです。

それではこのオフショア会社の現状はどうなのか?まだ資産が残っているのか?というのは明らかになっていません。

今のところシグムンドゥル氏夫妻が資産の申告漏れ以外に法を破っていた、という事実は確認されていません。どちらかというと道義的な、あるいは政治家としての倫理上の責任が問われています。

金融危機の後、アイスランドは厳しい外貨規制を行い、国内資産が国外に流出してしまうのを防ごうとしました。それぞれの企業家や経営者はその中で苦しいやりくりを続けてきたです。

恐慌の余波はまだまだ残っています。高齢者や障害者の人たちはバッサバッサと手当を削られてきましたし、「どうやって生活すればいいのか?!」と本当に涙を流してデモをしています。

その一方でこのニュース。スキャンダルです。先週は月曜から連日、国会前の広場で抗議集会。初回には二万人以上が集まりました。シグムンドゥル氏は開き直っていましたが、さすがに孤立化したのを察知。火曜に辞任を明らかにし、木曜に正式に辞任、 シーグルズル·インギ·ヨハンスソン氏が新首相に就任しました。

ですが、こんな形ばかりの首の挿げ替えで国民が納得する気配はまったくありません。即、解散総選挙を求める声があちこちから聞こえてきます。

もうしばらくはこの騒々しい日常が続くことになってしまいそうです。は〜るよ来い、は〜やく来い。静かなは〜る!


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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