レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

今月の合言葉 ブレス、ブレス、オーラブル

2016-04-24 05:00:00 | 日記
車の買い替えの話しは、ちょっと中断して、今回は今週のアイスランドのホットな話題です。

パナマ文書に関連して、三月終わりから四月にかけてのアイスランドでの大騒動については、前々回のブログでご紹介しました。
グンロイグルスソン(前)首相、ベネディクトスソン財務大臣、ノルダル内務大臣と三人もの現職閣僚がパナマ漏洩情報の中に登場したのです。

連日のデモ集会もあり首相は辞任し、ヨハンスソン新首相が誕生しました。このヨハンスソン氏はどこかの田舎の出身で、なんというか、あまり存在感のない人なのです。無口で「そこらのおっさん」的な首相の登場で、怒り新党だった人たちもはぐらかされたような感じで、ひと段落した感がありました。

ところが先週の月曜日、新たなビッグ?ニュースが飛び出てきました。現在、五期目を務めるオーラブル·ラグナール·グリムスソン大統領が記者会見を招集したのです。

彼はすでに二十年間大統領を務めており、この六月の大統領選挙には再選出馬はしない、と年頭の演説で表明していました。

突然の記者会見の招集に、皆は「もしかして出馬表明?」と疑ったり(オーラブルにうんざりしている人たち)期待したり(オーラブルを支持している人たち)だったわけですが、蓋を開けてみると案の定「この不安定に包まれている状況が決断を変えた。もう一期やることにした」

アイスランドは1944年に、完全な独立国となりました。これまで約七十二年の独立国としての歴史があるわけですが、実はオーラブル大統領はわずか五代目の大統領に過ぎません。七十二年間で五人しか大統領がいないのです。

その面々は以下の通りです。

初代大統領 スヴェイン·ビョルンスソン(1944-1952 約8年)
二代大統領 アウスゲイル·アウスゲイルスソン(1952-1968 16年)
三代大統領 クリスチャウン·エルダヤウルン(1968-1980 12年)
四代大統領 ヴィグディス·フィンボーガドティール(1980-1996 16年)
五代大統領 オーラブル·ラグナール·グリムスソン(1996-???)




 週末の新聞も歴代大統領を特集


初代大統領を除くと、皆さん相当長く大統領の座に留まっていらしたのでした。四代のヴィグディスさんは世界初の女性大統領で、国民にも圧倒的な人気のある方です。たまたま週末のフリェッタブラージズ紙が歴代大統領の特集を組みましたが、これを見てブログを書いたわけではありませんので、念のため。(^-^;

ちなみに同時期のアメリカ合衆国大統領を務めた人は全部で十三人います。アメリカでは三選がF·ルーズベルト大統領以降禁止されていますので、単純な比較は意味がありませんが、アイスランドではアメリカの半数以下であることは確かです。

なぜアイスランドの大統領が長期を務めるのか?というと、ひとつはっきりしている理由があります。それはここでは大統領は政治的な役割を持たず、文化的、外交的な存在に過ぎないからです。

「過ぎない」というのは語弊があるかもしれませんが、要するに国民の実際的な利害関係にはそれほど直接的には関わっていないのです。直接の利害が絡んでいたらそうは長くは続けられないでしょう。

その証拠に、同じ時期、独立してから今までの七十二年間で、政治の中心である総理大臣を務めた人は、首相代行を除いても十八人もいます。

というわけで、アイスランドの大統領はドイツと同じように、政治的大統領ではないはずなのです。ですが、グリムスソン現大統領は「可能な限り」「いかなるチャンスをも利用して」政治に口を突っ込みたがるのです。




#NOlafur のペティションも始まっています
-Myndin er ur Visir.is-


アイスランドでは国会が議決した法は、大統領が承認して発効します。大統領が法の承認を拒否した場合は国民投票にかけられます。私が理解する限りでは、国民の代表である国会の議決を、大統領が承認しなかったことは一度もなかったと思います。

それをグリムスソン大統領は、経済恐慌の処理を巡るアイスセーブ問題に関して、二回もやったのです。さんざん擦った揉んだした後で、決められた法案だったので、グリムスソン大統領の決断に拍手喝采する派と、「フザケンナー!」派とに分かれました。

つい先にパナマ騒動で、グンロイグス前首相が解散総選挙を願いに行った時も拒否しています。この時のニュースで、アイスランド大学の著名な法学者であるビョルク·ソーラレンセン教授は「どういう法根拠で、大統領が首相の解散要求を拒否できるのかまったくわからない」と語っていました。

今、アイスランドでは新憲法制定の作業が続いていますが、その中の改定事項のひとつが「大統領の職責の制限と明確化」です。

グリムスソン大統領が良い大統領であるか、方向を誤った大統領であるのかはアイスランド国民が論議すべきことでしょうが、私はここに住む一外国人として言わせてもらうなら、あの「私が最後の言葉を持っているのです」的なオーラブルには「もう引っ込めよ! 他に若くて有能な人はまだまだいるんだよ」ですね。

後に続く若い世代を信頼できないとは、まさしく「悪しき老人化」の症状です。ブレス、ブレス、オーラブル。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする