レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

本好きアイスランド人の魂

2013-04-08 05:00:00 | 日記
立教大学の非常勤講師、本川裕さんの38ヶ国対象の国際共同調査で、アイスランドが家庭蔵書数336冊で世界一になったことを前回お伝えしました。

平均336冊の蔵書があるからにはそれよりもずっと多く持っていたり、反対にあまり本に関心がなかったりする人もいるはずですよね。実はおおよその蔵書数についてもFacebook等でミニリサーチをしてみました。ミニリサーチは結果を出すことはできませんが、出ている結果を検証する役には立ちます。

26人の人から答えをいただきました。
1 蔵書数  
2.000冊以上  4人
1.000~1.999 7人
 500~ 999  9人
 500未満   6人 
2 ジャンル 小説、教養、文学、詩、実用等々
3 アイスランド語の本 
80%以上 8人
51~79%  6人
50%以下 9人 

こうしてみると確かに本はたくさん持っている方が多いようです。もっともこういうアンケートに答えてくれる方は「蔵書数が多いから」ということもあるかとは思います。

さて、ちょっと視点を変えて蔵書の中身に注目してみましょう。蔵書が多いとして、どんな本がアイスランドの家庭の書棚に並んでいるのでしょうか?それもミニリサーチしてみました。ジャンル的には上記のように月並みなものなので、もう少し具体的に見てみましょう。

1位,2位は「ヨウン・アルトナー編のアイスランドの民話と冒険」
これは初めて出版されたのは1860年頃ですが、収録されているのはもっと古くからある伝承的物語りです。巨人や小人、幽霊の話しなども入っています。

もうひとつは「アイスランド人のサガ」これは有名なサガ(歴史や伝記)の大全のようなものです。サガの年代は12、13世紀に遡ります。古アイスランド語で書かれたこれらを読めるか読めないか、では人によってかなり意見が分かれます。家の娘は高校最終年ですが、今では使わない言葉が少しあるけど、文法などでは全然困らず読める、と言っています。各家庭にあるということは、チンプンカンプンではないのだろうと思います。

第3位は「パッシウサウルマア」という賛美歌の歌詞の詩です。1658年頃にハットルグリームル・ピエトルロソンによって編まれた50編の賛美歌詩で、キリストの受難の物語りをテーマにしています。
これは国家的財産で、多数の言葉に訳されていますし、アイスランドではイースター前の時期にはラジオで毎日朗読され、教会でも必ず歌われます。

逆に言うと、この頃のアイスランド語は確かに現代に繋がっているということになると思います。(同じ言葉をラジオで聞き、歌っているのですから) これまでに80版が出版されていると言うことですが、これは版を重ねたというよりは、新しい壮丁で80版を重ねている、という意味だと思います。(要確認)

4番目は少し新しく1800年代前半の詩人、自然学者ヨナス・ハットルグリムスソンの詩の全集。この人はことばに関しての国民的英雄です。彼の誕生日11月16日は「アイスランド語の日」と定められています。

5番目はハルドール・ラクスネスの著作。(全集または何巻か) 彼はずっと最近の人ですが1955年にアイスランド人として唯一のノーベル文学賞を受賞しています。

この5冊(というか作品群というか)はぶれがなく、相当多くの人の蔵書に含まれていると考えられます。
ちなみに所蔵されている日本の作家で挙げられるのが多いのは村上春樹、三島由紀夫両氏でした。

人気の蔵書本を見てみるとひとつのことに気づかされます。それは蔵書はアイスランド国民の歴史と言語、すなわちアイデンティティに関わるものが中心になっているということです。私自身はそこにこそアイスランド人の本好きの核心が所在すると考えています。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする