肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『麦の穂をゆらす風』、観ました。

2007-06-16 20:42:45 | 映画(ま行)





監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィー, ポードリック・ディレーニー
※カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品

 『麦の穂をゆらす風』、観ました。
1920年のアイルランド。医師になる将来を捨て、兄とともにイギリス支配からの
独立を求める戦いに身を投じる青年デミアン。戦いは終わり、ついにイギリスは
独立を認める。しかし今度は、アイルランド人同志が敵味方になる内戦が始まり、
デミアンと兄、そして恋人シネードとの絆をも引き裂いていく‥‥。
 いかにもケン・ローチ監督らしい“リアルな描写”と、イングランド地方のどんより
スッキリしない風土が、“戦争の重苦しさ”を観る者の心に印象付ける。観ながら、
時間の経過と共に“その痛み”は増していき、戦争への“強い憤(いきどお)り”が
胸の底から込み上げてきた。言葉に云えぬ深い哀しみと戦争の不条理さ、そして、
人の愚かさも…、様々な想いが複雑に絡み合い、ボクはますます《戦争》という
ものが分からなくなっていく。先に言っておくと、ここにはハリウッド映画にありがちな
感動話も、作られた美談も存在しない。代わりに、アイルランドに生い茂る新緑の
緑に対比して浮かびあがる、おぞましい“戦争の正体”に涙する。間違いなく
ここ数年来に作られた反戦映画では“最高傑作のひとつ”であり、実際ボク自身も
完膚無きまでに打ちのめされた。それゆえに、心に受けたダメージは耐え難く、
もう二度と観たくない…、いや、観れないだろう作品だ。
 勿論、ボクがこれを“近代反戦映画の傑作”と称するのには理由がある。序盤で
植民地支配を巡る二国間、大英帝国とアイルランド共和国による“(単純な)善悪の
対決”としながらも、後半では一旦終結に向かいかけたその戦争が形を変え、
“次なる戦争”となって息を吹き返していく。それは大英帝国の出した不平等な
条件を、とりあえず今は妥協して受け入れ、“これ以上の戦争”を避けるべきだという
義勇軍の“慎重派”と…、いや、“本当の自由”を得るために、今一度奮起して
戦うべきだという“強硬派”との内紛において他ならない。ボクにも両者の言い分は
分かるし、そのどちらかの主張も間違ってるとは思わない。でも、何故彼らが戦い、
殺し合う??、どうして、同じ国を愛する者同士が憎しみ、傷付け合う??(涙)、
今改めて、思い知らされる…、“戦争の正体”は表面に現れたものだけとは限らない。
我らが気が付かないところで地中に根を張り、幾重にも枝分かれして、“人の心の
奥深く”まで入り込んでいく。そして、《戦争》は、麦の穂を揺らす風のように‥‥、
仲間との絆も、友との友情も、兄弟の繋がりも、その人が持つ人間らしさも、家族の
幸せや思い出さえ‥‥、すべて奪い去っていくんだ(涙)。



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