肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『サイドカーに犬』、観ました。

2008-01-23 21:09:52 | 映画(さ行)





監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子、古田新太、松本花奈、ミムラ、鈴木砂羽、トミーズ雅、温水洋一、樹木希林、椎名桔平

 『サイドカーに犬』、観ました。
不動産会社に勤める薫は、ある朝ふいに一週間の有給休暇をとった。馴染みの釣堀で
釣り糸をたらしながら、ふと、父が会社を辞め、母が家を出て行った数日後のことを
思い出した。ヨーコという女性が家に来るようになった。たばこをスパスパ吸い、
自転車を乗り回し、夕食には「エサ」と言って麦チョコを食べさせる、破天荒な人だった。
しかし、子供と対等に向き合って話をしてくれるヨーコを薫は好きになっていく…。
 一度聞いたら忘れそうにないタイトルの語呂の良さ…、その前半部分(サイドカー)から
“自由な風”をイメージしたのは、きっとオイラだけじゃあるまい。また、一方で、
前作『雪に願うこと』で、あれ程までに重厚な人間ドラマを展開した根岸吉太郎監督が、
単に“喉ごしの良さ”をだけを優先したライトな大衆映画など撮るはずないだろうとも。
しかし、観ていくにつれ、オイラの懸念はいとも容易く解消され、その後半部分にある
“犬”という言葉に、ある重要な意味が込められていることに気付かされた。観ながら、
こんなに何度もタイトル名がアタマの中をぐるぐる回った映画も珍しい。その内容も
さることながら、すべてがホントによく考えられた作品だなぁ。
 さて、物語は、内向的な少女が、自分にはない“自由な生き方”をする大人の女性と
出会い、それへの強い憧れから自分の人生を見つめ直していく。この映画の特長は、
“少女の葛藤”をあまり直接的に描かずに、時にコミカルやミステリアスな表現を
もって、常に観る側に“考える余白”を残しながらサラッとした感じで描いている点だ。
生意気な言い方だが、この映画でその行間に込められた本当の意味に気付かないと、
ひどくアッサリした映画に映ってしまうかもしれない。かつてヨーコが言った「自転車に
乗れれば、世界が変わって見える」の意味…。いつかの夜、少女とヨーコを迎えに
来た父のサイドカーで、少女だけが“右側”に乗せられたことの意味……。つまり、
要約するとこうだ――。サイドカーは(向かって)左側で運転し、それに直結した右側に
乗る者は、相手に行く先を委ねたまま座ってる。ある夏の日、少女がサイドカーに乗った
犬に“不思議な親近感”を抱いたのは、運転席に乗った飼い主の隣で、支配されて
いることに気付かずにいる犬に、滑稽な“自分自身の姿”を見たからだ。また、オイラが
この映画で最も好きなのは、映画終盤、両親の離婚が決まり、父と別れるその当日、
少女がいきなり「ワン、ワン、ワン」といって父に突進するシーンでのこと…、そこには
「一緒に住みたいのに…、離れたくないのに…」という、不器用な少女の“苦しい感情
表現”が見えて思わず胸がアツくなった(涙)。結局、少女は、ヨーコの自由な生き方に
憧れを抱きつつも、未だ自分の人生の行き先が分からないまま大人になった…。
映画冒頭、現在の彼女が「今日履いていく靴(=進むべき方向)も見つかない」と言って
会社を休んだのは、少女期から今に至る“彼女の苦しみ”だったのだ。そんなとき、
弟から電話でヨーコの名前を聞かされる……、そういえば、かつてヨーコは言った
「毎日、自転車を漕いでいれば、足は自然と硬くなる」って。そして、ふと気が付けば、
今の自分の足はあの頃のヨーコと同じように硬くなっていた。知らず知らずのうちに、
自分が自分の力でその人生をしっかり歩んでいることに気付く彼女――。ラストシーン、
ヒロインは自分の前を通り過ぎるヨーコの面影を振り払い、その“進んできた方向”を
変えようとしない。すでに彼女は悟っていたんだろう‥‥。そうだ、無理に“別の人間”に
なる必要なんてありはしない、自分は自分でしかないんだと。







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