肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『消えた天使』、観ました。

2008-01-10 22:09:05 | 映画(か行)





監督:アンドリュー・ラウ
出演:リチャード・ギア、クレア・デインズ

 『消えた天使』、観ました。
長年性犯罪登録者の観察を続けてきた公共安全局のバベッジは、退任まで
残り僅かとなっていた。そんな彼の元に後任のアリスンがやってくる。バベッジは
アリスンを連れ、強姦を犯したエドモンド、夫がバラバラ殺人を犯し自らも3件の
罪に問われたビオラらの家を回り、さらに車で移動する中、2人の元に誘拐事件の
報が入る。バベッジはその犯人が登録者の中にいると確信するが…。
 それにしても、香港の巨匠アンドリュー・ラウは、その記念すべきハリウッド進出
第一弾にして、何と“デリケートな題材”を選んでしまったのか(笑)。性犯罪者の
登録制度とプライバシーの侵害について‥‥。いや、そもそも、この“デリケートな
題材”をアメリカ文化とは離れた場所にいた“アジア出身の監督”が扱うこと自体に
無理があり、(職人監督である)彼には不似合いな題材だったのではあるまいか。
勿論、この議論については、賛否両方の意見がそれぞれがもっともだと思うし、
きっと朝まで掛かったって答えなど見つからない。実際、我が家の夫婦間でも
議論は白熱し、一度は夫婦喧嘩になりかけたことさえあるもんね(笑)。この映画を
観る限り、アンドリュー・ラウ本人は“性犯罪者の登録制度”に否定的で、彼らには
「もっと別の重い罰則を」と考えていると推測できるが、では、この映画をもって
何を云わんとしているか、その本質たる部分が見えてこない。まず、他人の
プライバシーなどもろともしない主人公の人間不信と、性犯罪者への異常な
憎悪は一体どこからきているのか…。また、性犯罪者に更正の道は残されて
いるのか否か…、セキュリティネットのもたらす利点と弊害の関係について……。
結局、この映画ではそれらの事柄が“一本の線”に繋がらないまま、とりあえず(?)
メデタシメデタシの結末に巧く誤魔化されたようなカンジ。やはり、この問題を
扱う以上は覚悟を決めて、もっと真正面から向き合っていく“強い姿勢”が
必要だったと思うのだけど。
 ただ、ここで少し発想の転換をし、性犯罪者に対してどうこうは“単なる手段”に
過ぎず、ラウ監督が本当に描きたかったものは別にあったと仮定してみる。
例えば、事件にのめり込むあまり、主人公に行き過ぎた正義が悪へと変わる…、
更に、犯罪者へのリンチと暴力に走っていく様は、かの『インファナル・アフェア』
にも通じる“善悪における人間の二面性”へと繋がっていくものではあるまいか。
そして、とどの詰まりが、映画プロローグで語られる「怪物と戦う者は、その際、
自らも怪物にならぬよう気をつけろ」という諺めいたパラドックスに突き当たる。
だとすれば、むしろ、ここは《性犯罪の防止》と《(人間の持つ)善悪の二面性》を
関連付けて描くより、その後者だけに絞って描くというも一つの方法だったかも
しれないね。まぁ、今作では“映像”ひとつ取っても(スタイリッシュに)小細工が
過ぎるアンドリュー・ラウ …(笑)、アジアからワールドワイドな展開に思わず
力が入りすぎちゃったみたい。次は、もっと肩の力を抜いて、普段着の映画が
観たいもんだな(笑)。





楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



最新の画像もっと見る

コメントを投稿