肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『それでもボクはやってない』、観ました。

2007-01-21 20:00:39 | 映画(さ行)
Soreboku
監督:周防正行
出演者:加瀬亮、瀬戸朝香、役所広司

 『それでもボクはやってない』、映画館で観ました。
フリーターの金子徹平は会社の面接へ向かう途中、痴漢に間違われ、そのまま
警察署に拘留されることに。罪を認めれば相手と示談の上、すぐに釈放されると
聞かされるが、自分の無実を主張し続け、ついには検察から起訴されてしまう…。 
 もしかしたら、この世の中で最もやっかいなものは、“人の勝手な思い込み”
かもしれない。身に覚えのないことで非難を受け、こちらの言い分にはまったく
耳を貸そうとしない。冷静に考えればすぐに分かる事なのに、それすらしようと
しないで、最初から結論ありきでこちらを悪だと決めつける。実は最近、ボクの
回りでも同じようなことがあったからね。分かるのサ、主人公の…、「それでも
ボクはやってない」という“痛切なる叫び”がね。だから、今こそボクも声を
大にして言いたい事がある、「そして“ボクも”やってないし、これっぽっちだって
悪くない」ってね。
 さて、周防正行監督11年ぶりの新作は、日本の司法制度にメスを入れた法廷劇。
シュールな笑いと、エンターテイメント性に富んだ2面性は、いつもの周防作品と
相も変わらず。ただ、『シコふんじゃった』とか…、『Shall We ダンス?』とか…、
これまでの周防作品に溢れていた明るいイメージと、胸躍るようなトキメキ感は
そこにはなく、本作では全体に陰気で重苦しい雰囲気が漂う。それは、この11年の
歳月の中で移りゆく”周防正行の変化”なのか、あるいは、加速度的に病んでいく
日本社会の歪み、その“時代の変化”なのか…、ボクにはそれが“後者”のように
思えて仕方ない。一方、本作、その内容についてはどうだろう…。ややもすると
(裁判について)説明過剰な部分もあるのだが、それによって映画全体のテンポが
損なわれることはない。印象としては、ストーリーでぐいぐい引っ張っていくと
というよりも、レポートの中でまとめ上げ、観客に“日本の裁判制度の実状”を
より知ってもらおうという感じ。その視点は、常にひょうひょうとしながらも、
不可思議な、この裁判制度への痛烈な皮肉が込められているのだ。
 ただ、ここでひとつ、見誤ってはいけないことがある。主人公の怒りの矛先は、
自分を犯人に思い込んだ少女にはない。もちろん、公平性を欠いた刑事や検察、
裁判官とも違う。それはこの国の裁判制度全体‥‥強いては、日本の社会構造に
向けられているってこと。“国家”という強大な権力によって、司法が成すべき
ことが成されない。個人の権利が踏みにじられる。そして、更に怖いのは、今尚、
それ(日本の司法)を清いものだと信じて疑わない“我らの勝手な思い込み”なのだ。

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