肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『おくりびと』、観ました。

2008-10-29 21:03:36 | 映画(あ行)
Okuribito_2_1b
監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘、広末涼子、余貴美子、吉行和子、笹野高史、山崎努
※第32回モントリオール世界映画祭 グランプリ受賞

 『おくりびと』、映画館で観ました。
楽団の解散でチェロ演奏家の道をあきらめ、故郷・山形へ戻った大悟。「年齢問わず、
高給保証」という求人広告に魅かれ応募するが、それは何と遺体を棺に納める納棺の
仕事だった。慌てふためきながらも新人納棺師としての日々が始まった。妻には冠婚
葬祭関係の仕事とだけ話していたのだが…。
 久方ぶりの届いた明るいニュース――。どっかの映画祭で、何とか言う日本映画が
グランプリを受賞したという。その映画は『おくりびと』。何と言葉の響きが良い、
奥ゆかしいタイトルだこと。だけど、この、疑り深い性格ゆえ、その映画をしかと
この目でみるまでは、素直に喜ぶことの出来ない自分がいた。というのは、西洋人から
みる、東洋の日本文化に対する驚き――、更に、その“特異的な儀式への物珍しさ”に
惹かれたんじゃないのか、ってね。
 早速、率直な感想から先に言わせてもらうと、確かに上に挙げた要素で得をしている
部分も確かにある。が、一方で、確実に優れた作品でもあると思った。いや、むしろ、
今回の受賞は、死が人生の中における役割と、その交わり方について、民族間を越えた
ところで深く共感されたからではあるまいか。死をもって人生が果てるのではなく、
人の魂が“次のステージ”へと向かうために“死”を通過しなければならない、という
考え方――、つまり、生きと死いける者を分かつ、2つの世界が「死」という名の“門”で
繋がっている。だからこそ、旅立っていく故人の身体(からだ)を清め、この世に未練を
残さぬよう、まっさらな気持ちで“送って”あげる。この映画を観てるうち、死もまた
“人生の一部”であることを感じさせられた。
 また、物語の内容的にも申し分なく、事あるごとに主人公の人生に影を落とす父の
トラウマ、様々な別れと旅立ちの場面に遭遇することで、変化していく主人公の気持ちと
心の成長、献身的な妻の愛を裏切ってしまう際の心の葛藤‥‥、それぞれが物語の中で
丁寧に描かれていて、うまく消化されていると思う。惜しむらくは、ほぼ満点の脚本に
対して、映像の方がややTVドラマ的で安っぽく感じられたこと。そして、これまた老獪な
山崎努の深みと比べて、主演の若い2人の演技が、それに付いていってないように
感じられたこと。それでも、2008年の邦画を語る上で欠くことのできない映画であるのは
間違いなく、久しぶりに世界へ“日本の文化”と、“日本映画”をアピール出来た作品だと
思う。

 追伸――、実は、この映画を観る“ほんの数日前”、ボクの知人の女性が自殺をした。
首吊りだった。人づてに、その姿はとても言葉に形容しがたいほど無残なものだったと
聞いた。しかし、その数時間後、ボクが見た――、もう動かなくなった彼女は、生前の
頃のように美しく、そして、その安らかな寝顔が高貴で神聖なもののように感じられた。
ボクは生前の彼女を知る者として、どこか心で救われた想いと、これでやっと安心して
彼女を送り出せる――、そう思えた瞬間だった。この映画を観ながら、その時のことが
再び思い出され、“不思議な感覚”に見舞われた。ボクにとってこの映画は、単に優れて
いるというだけでなく、“運命的な出会い”を感じた一本になった。



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