監督:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール
『インセプション』、観ました。
コブは人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くにもぐり込んで
相手のアイデアを盗むことのできる優秀な人材だった。彼は、企業スパイの
世界でトップの腕前を誇っていたが、やがて国際指名手配犯となってしまう。
そんなある日、コブの元に“インセプション”と呼ばれるほぼ不可能に近い
仕事が舞い込む・・・・・・。
私事で恐縮だが、昔からオイラは手先が器用で(他はともかく)美術の
成績だけは優秀だった。彫刻、ポスター、何でも御座れ。風景画だって
お手のもの。けどね、ひとつだけ全くノーセンスなものがあったのだ。
“空想画”だ。イマジネーションが広がっていかないというか、早い話が
アタマがかたくて、枠や形式にとらわれ過ぎちゃうんでしょうな。そんな
オイラからすれば、この映画は自分と“真逆の人間”が造ったとしか思えない。
その、自由でかつ圧倒的なスケールの世界観も・・・、その、奇想天外で
予測不能なストーリー展開も・・・、あんぐり、大きな口を開けたまま、呆気に
とられ続けた2時間半だった。いやはや、こいつは全てにおいて“規定外”だ。
さて、監督はクリストファー・ノーラン。『インソムニア』や『ダークナイト』では、
“善と悪”をテーマに、その両者の垣根が解かれ、曖昧になり、やがて
逆転していく様子を描いた彼ですが、この『インセプション』では、現実の
世界と潜在意識が作り出した虚像とが交錯し、次第にボヤけ、思考が
混乱していく様を描いている。また、ストーリーの展開も、現在から
過去へ過去へと遡っていった『メメント』を進化した形で、本作では実在する
現実世界から潜在意識の奥へ奥へと深く潜っていく。そういった意味でも、
この『インセプション』は彼にとって一旦の区切りになる“集大成的な作品”
といえるのかもしれないね。
この映画の面白さは、複数の異なる世界を潜在意識をいうイメージで
結び付け、それらの世界を時間の進む速さこそ違えど、カットバックしながら
同時進行してみせていく点だ。その際、それぞれの世界で活躍するメンバーが
異なるため、そこに至る物語の過程で何人キャラクターを描けるか・・・が、
この映画の生命線となってくる。恐らく、映画序盤に主人公がひとりひとり
当たって仲間に引き入れていく展開は、黒澤明『七人の侍』を下敷きに
していると思われるが、そこがしっかり作りこまれているからこそ、複雑な
構成ながらも空中分解せず、クライマックスへとなだれ込むことできるのだ。
観ていて、随所に“和のテイスト”が散りばめられているのは、そういった
日本映画に対するオマージュの意味合いも多分に含まれていると思う。
それから、時間にして数分だが、個人的にとても印象に残ったワンシーンが
あったので挙げておく。大学生の「設計士」アリアドネが夢の世界を創造した
場面でのこと、主人公のコブと二人、その前後に置かれた“2枚の鏡”が
互いに反射をし合い、幾重にもなって“無限の世界”を作り出す。いつしか
実在の彼らさえ、その無限の世界に取り込まれ、実像と虚像の区別が
付かなくなった途端、アリアドネが自分の側の鏡を叩き壊して前方へと
進んでいく。過去の記憶(潜在意識)と現実との狭間で“自分の居所”が
分からなくなっていたコブを象徴すると同時に、その解決法を彼に示した
とても素晴らしい場面だと思った。
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